約 1,626,989 件
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/278.html
462 :6-632:2014/02/11(火) 21 47 50.16 ID BgeVLwt0 「司令官、こんなところまで良く来てくれたね」 帽子も、制服も変わった響は今までと変わらない柔らかな笑顔を俺に向けてくれた 「寒かっただろう?私が作ったボルシチだ。飲んでほしい」 以前俺の艦隊に居た時にもふるまってくれたボルシチ。 響の作るそれは世界中で一番美味しいと思う。 俺は、ロシアで行われるスポーツの祭典に日本海軍代表として招待され ロシアの地に足を踏み入れた さかのぼる事数か月前、俺の秘書艦であった響を大本営がロシアに譲渡してから数か月 毎月手紙のやり取りはしていたが、実際に声を聴くことはなかった 愛おしい、誰よりも愛おしい響の声を この訪露も話によれば響が色々水面下で根回しをして俺になるよう海軍に 話をつけていてくれていたようだ 「おいしいかい?」 響が尋ねてくる 「もちろん。世界一美味しいよ。響」 「スパスィーバ」 たわいない会話。あの日まで毎日毎日繰り返してた行為 今となっては懐かしく、変化のない毎日が大変貴重だったものだと実感させられる。 「司令官、今日は夜の会場警備があるから、これで・・・・」 そう言い響が部屋を出て行った。 響・・・。どんな血の滲む努力をしたんだ? 一介の来賓が泊まれるような部屋じゃない異様に豪華な客室。 そこに供された夕食はホテルのシェフご自慢の料理では無く全部、響の手作り 「・・・・。ごめんな。愛してたのに・・・。こんなダメな指揮官で」 ロシアの“ヴェールヌイ”となった今でも俺の事を“司令官”と呼んでくれるとは 今日のディナーの御礼に寒い中会場警備をする響にホットコーヒーでも持っていこう そう思い俺はホテルマンへ連絡し携行しやすいカップに入れたコーヒーを持って 競技会場へ向かうことにした 薄明りのの中、俺は寒さに耐え響を探した こんな寒い中で会場警備とは・・・。警察や陸軍がやればいいものの、 相当人が足りないらしい。 会場近くの茂みの中から声が聞こえる この声は、響と・・・。ロシアの士官か? この時ばかりは、ロシア語を勉強したことをひどく後悔した そしてこの場に来てしまったこと。 響を守り通せなかった自分を責めた。 俺が見た光景は、寒空の下。ロシア士官が響の乳首を執拗になめまわし、 手は股間を弄りっている。あたりには響の性器から溢れた蜜が出す水音と 響の喘ぎが聞こえてくる 「寒くはないのか?」 ロシア士官は響に尋ねる 「ああ、同志がこうして私を温めてくれてる。私は幸せだ」 本当に喜んでいる表情で、自らも腰を動かしロシア士官の指を性器で堪能しているようだ 「あのヤポンスキーにしてもらうよりもか?」 響は一瞬何かを考えるような間を置いたのち答えた 「あぁ、同士にされていた方が幸せだ」 そう答えると、響はロシア士官のペニスを口に含み、愛撫していく じゅるっ。じゅるっ 響は美味しそうにロシア士官のペニスをしゃぶる。 喉奥の限界までペニスを自ら突っ込み、まさに「喉でペニスを扱いている」状態である 言うなれば、ディープスロートだろうか。 ディープスロートからシックスナインに移行し ロシア士官も響の性器を舐めまわす。 響の甘い声が聞こえてくる。 「早く欲しい・・・。同志のおちんちん。早く入れて」 遂におねだりを始める響 「そうか、そうか。よし、ヴェールヌイ。挿入してやる」 響はうっとりとした目でペニスを待ちわびる。ロシア士官が意地悪そうに言う 「何ならヴェールヌイが呼んだジャップをここに呼び出して、見せつけてやろうか」 「さすがに、それは恥ずかしい」 響は俺をこの場に呼び出すことは拒否さえしたものの、早くペニスが欲しくてたまらないといった表情だ あっ・・。あ 遂にロシア士官のペニスが響に入っていく。 すごく恍惚とした表情でロシア士官が腰を振ると恥ずかしげもなく大きな声であえいでいる 「あぁ・・・幸せだ」 時折喘ぐ響の声に交じるセリフ 「ヴェールヌイ!ヴェールヌイ!」 響のセリフに合わせるように、“今の響の名前”をロシア士官も叫ぶ 「ヴェールヌイ!このままイクぞ!」 ロシア士官の腰がさらに早く動く 「え、そ・・・。それは」 響はちょっと困惑した声を出すものの、リズミカルな腰の動きに合わせ喘ぐ どんどんその声は大きくなり、ロシア士官が響の一番深いところまでペニスを入れると 腰を止めた。 「あっ・・・出てる同志のが・・・・。中に・・・・」 響は息を切らしながらつぶやいた 「幸せかヴェールヌイ」 ロシア士官が尋ねると響は余韻に浸ってか力なくうなずいだ それを見るとロシア士官は満足したようにペニスを響から引き抜いた。 繋がっていた部分。響の性器からはロシア士官の精液が大量にあふれている。 行為を終え早速体が冷えたのか、響は小刻みに震えている。 そんな響と目が合ってしまった 俺は無言でホテルへ帰った。 結局コーヒーを渡すどころか、あんなのを見てしまって・・・。 「くそっ!くそっ!!!!」 俺は何度もホテルのベッドにパンチと蹴りを入れた 数日後、スポーツの祭典は日本選手団の活躍もあり大盛況のうちに幕を下ろした 日本の選手の中には世界で最も栄誉のあるメダルを獲得した者もいて 同じ日本人として誇らしく思った。 帰国の日、響が空港まで見送りに来てくれた 「司令官、お疲れ様。暁や雷・電とか皆に私は大丈夫だと伝えて欲しい」 そういうと、今にも泣きだしそうな顔になる 俺は頭をそっと撫でた 「あぁ、約束するよ必ずお前が元気だと伝えるさ“ヴェールヌイ”」 響の表情が一瞬こわばる 「え?あ・・・。あぁ。司令官、すまない。こんな事まで甘えてしまって」 響は俺の乗った航空機が離陸するまで、見送ってくれた。 だが俺はモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。 別れを惜しむような表情を見せた響。 でも、ロシア士官との性行為に幸せを感じる響。 俺の気持ちは・・・。 それから数十年後たったある日、響の代わりに秘書艦に就任した電が血相を変えて執務室に飛び込んできた 「ロシアからお手紙なのです。」 “あの日”以来月に1回の響からの手紙も無くなり、数十年ぶりの手紙に俺も驚いた はやる気持ちを抑え開封すると、中からはロシア語で書かれた手紙が出てきた スポーツの祭典の為に「話すことはできるようになったが」いまいち文字は読めないので 吹雪を呼び代読してもらった 要約するとこうだ 響が沈んだ。最期は“ディカブリスト”と名乗りロシアで新人の艦娘の教官をしていたが 艦載機の訓練中。標的が無く自らの身を挺して後身の指導を行った そしてその艦載機のミサイルが命中。響は沈んだとの事 また“返却したいもの、ディカブリストから俺宛に渡したいもの”があるから ロシアに来てくれとの事だった。 俺はロシアへ渡った 「良く来てくれた」 ロシアに着いた俺はロシア軍の高級士官と謁見し、返却したいものを受け取った 響の服だった。それも俺の指揮下に居た頃の、第六駆逐隊の ロシアの高級士官の案内で響が沈んだ所へ立ち寄った そこで“響から俺に渡したいもの”を渡された。 その際、ロシア高級士官は 「申し訳ないが規律で検閲はさせて頂いた」 と述べた後脱帽したうえで敬礼し 「大変申し訳ない。私たちの監督が甘かったせいで貴君とヒビキを 傷つけてしまう結果になってしまい申し訳ない。」 そう俺に言ってきた 俺はその響からの手紙を読み始めた 大好きな司令官へ この手紙を読んでいるってことは多分私は沈んだんだね。 あの日以来、司令官に手紙を出そうと思ったけど、どうしても書けなかった。 私は、司令官の事を忘れたくてあんなことしてしまったんだ。 司令官がそばに居なくて辛くて、心細くて、寂しくて、心が張り裂けそうだった。 でも、あの行為をすればするほど、司令官への気持ちが抑えられなくなっていったんだ それでそれを振り払おうと、何度も何度も没頭してしまったんだ 言い訳かもしれないね。実際司令官は私の事“キタナイ”って思ったかもね 私だって司令官以外に汚されて、どんな顔で司令官に合えばいいかわからないんだ。 でも、でもね。絶対に、絶対に信じて欲しいことがあるんだ それはね 身体を許しても、幸せな気持ちになりたくて、何度幸せと叫んでも 心の中には司令官がいたんだよ。 心だけは絶対に許さなかった。 今更だけど、もう一度言わせて。あの時みたいに。 司令官。愛してる 響 「響・・・・。響っ」 俺は声にならない嗚咽を出してしまった 高級士官がそっと肩に手をのせてこういった 「ヒビキの最期の言葉は“すまない。司令官”だったそうだ。」 俺はひどく後悔した 響をロシアへ送ったこと あの後以来響にちょっと冷たくなってしまったこと そして、もっと素直に響と向き合っていればと +後書き 480 :6-632:2014/02/11(火) 23 30 25.66 ID BgeVLwt0 ちなみに、先の響の話で最期に「ヴェールヌイ」としなかったのは 現在のダイビングスポットでのヴェールヌイが眠る地点でダイバーが 「ヒビキ」と言っているのを元としました。 (ロシア語のサイトをBing変換すると「響」と明記されているので) つづき
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/634.html
如月ちゃんのSSを投下します 色々な二次創作の影響なども含めた独自設定が多数ありますがご了承ください 「あぁ~ん、如月が一番なの?まぁ当然といえば当然ね。いいのいいの、あまり褒めないで」 テストの順位が学年トップということに喜ぶ少女如月。 彼女はこの地区でも評判の天才美少女である。 「みてみて~、この輝く名前。あはっ、もっと近くで見てよ」 如月が学年トップの証である金文字で書かれた自分の名前を指差しながら言う。 だが俺はそれを複雑な感情で見つめるしかなかった。 彼女はなんて頭が良いんだろう。そんな気持ちが心を暗くする。 あまりにも輝いている彼女を見ると馬鹿な自分自身に情けない思いがしてくる。 別に俺は自分の頭が悪いということに劣等感を抱いているわけではない。 勉強以外にも多くの事をやりながら勉強でも優れた成績を残せる彼女の能力が羨ましかった。 休み時間はほとんどの場合心理学についての本を読んでいて、昼休みなどの長い休み時間だと球技をしたりするなど 落ち着いた物腰ながら時に意外と活発な才女であった。 色んな人達のお役に立ちたいらしく、休日はおろか平日もボランティア活動していることがあった。 勉強が出来るというだけで頭が良いという事にはならないだろうが、 色んな所で色んな活動して賞とかも貰いながら学業でも学年トップの成績を叩き出す…… 沢山の事を高いレベルで成し遂げられるのは間違いなく頭が良いと言わざるをえないだろう。 そんな輝く彼女を見ていると何だか胸の中がもやもやとしてきた。 別に彼女の事を嫌いだとか気に入らないとか、そういうわけではない。 どうでもいい存在なら軽く流せるものである。 むしろ好きでなければどんなに楽かと思うくらい昔から大好きだった。 大好きだったがゆえに彼女に引き付けられ、そしてその輝きを見せ付けられ、力なき自分の情けなさを付き刺される。 レベルが違いすぎて彼女に釣り合わず、いつか俺から離れてしまうのではないかと思ってしまい、 ある日図書館で一種に勉強していた時、彼女は問題を解けたのに俺は問題を解くことができず、 普通なら泣くなんてことは無いはずなのに 思い詰めていて精神的に追い詰められていたためか、思わず泣き出してしまった。 「ど…どうしたの………かしら……?」 俺が突如泣き出してしまった事には如月もさすがに驚きを隠せなかったようであった。 「お兄さん……答えが空欄…」 横から無表情な女の子が見るからに答えが埋まっていない俺のノートを覗き込んで言った。 覗き込んだ少女の名前は弥生。如月の一つ下の妹であり、姉に優るとも劣らぬ天才美少女だ。 美少女だけど無表情…それも怒っているように見える上に 自分から周りに溶け込もうとすることが少なかったため周りからはいつも気を遣われていた。 如月はそんな引っ込み思案にも見える妹を引っ張っていってくれる優しいお姉さんだった。 ちなみに俺もたまに弥生を引っ張っていくことがあった。 如月と自然に会うためという意図もあったし、俺自身かわいい女の子をほったらかしにしたくない的な思いもあった。 「問題が解けなくて悔しいのね……」 「…………」 俺は何も言えなかった。否定も出来なかった。 「だったら私が勉強を教えてあげるわね。わからないことがあったら遠慮なく聞いてもいいわ」 「本当に……?」 「本当よ」 「……ありがとう……」 こんな情けない俺に優しくしてくれる如月に俺の涙は益々止まらなかった。 でも、それ以来俺の心から暗さが消えていった。 きっと如月が俺の事を悪く思っていないって感じ取れたからかもしれない。 そして夏休みに入った。部活が休みだったある日、朝から図書館で如月と一緒に数学の宿題をしていた。 一緒に宿題と言っても如月は簡単に問題を解き、余った時間で心理学の本を読んで……なくて眠っていた。 如月にしては珍しい。しかし如月の寝顔って穏やかだなあ。いつも笑みを絶やしていなかったからこれは新鮮だ。 俺はいつまでも見ていたかったが宿題をやらねばならないからと涙を飲んで勉強に集中した。 俺は中々問題が解けなかったが、如月に情けない姿は見せられないと 諦めずにわからない問題は後回しにし、教科書を見ながら問題を解いていった。 「……あー、もうこれ以上わからん!」 「ん………あら、終わったのかしら?」 如月が目を覚まし、何事もなかったかのように俺のノートを見る。 「……………………結構出来てるわね」 「そうか?答え合わせしなきゃ合ってるかどうかは…」 そう言って俺は一緒に答え合わせをした。驚いた事に如月の言った通り、解いてある問題に関してはほぼ正解していた。 間違っていた問題も如月が解説してくれた。もっとも、如月の言っている事は天才にありがちそうな概念的なものであり、 理論的ではなかったからか俺には全ては理解できなかった。 「はぁ…やっぱりわからない所はどれだけ聞いてもわからん」 「ごめんなさい、お役に立てなくて……」 「いや…気にしないでくれ…俺の頭があまり良くないだけだから…」 「そんなこと無いと思うわ。このドリルの問題、あなたは結構正解していたじゃないの! あなたはやろうとしないから出来ないだけでやればデキル子なんですっ!!」 如月はこう見えても結構負けず嫌いな所がある。双子座は負けず嫌い精神とは程遠いはずなのに。 あ、ちなみに如月の名前の由来は戦前の軍艦如月からであり、軍艦如月の進水日、 つまり海に初めて出た日の6月5日に生まれたから如月と名付けたらしい。 一方俺もどっちかと言うと負けず嫌いではある。ただ誰に対してもというわけではなく、 特定の誰かに対してという面が相当強い。 俺の場合、表も裏も蠍座の男だからか蠍座特有の一点集中力が非常にマズい方向に働き、 よりによって大好きな女の子に対する負けず嫌いな心が生まれていた。 俺が好きな子を相手にした時ほど負けず嫌いになる理由は多分その子より劣っていたら その子から好かれないんじゃないかという思い込んでしまう一種の強迫観念なんじゃないかと最近思えてきた。 はっきり言って面倒臭い人間だ。他の人に対しては負けてもそこまで気にしない…… いや、気にしないというよりもどうでもよくなってしまうといった方が正しいのかもしれない。 好きな子に対しては前述のような理由や、注目してしまうことから優劣を深く考えてしまうのだろう。 もうちょっと気にしないようにすればいいのに…… 「そもそもそのやろうとする気とか、そういったものがあまり出にくい時点でやっぱり頭が良いなんて言えないんじゃ…」 頭ではわかっていても心では理解しきれていない所とか治した方がいいのに つい打ち負かしたくなり俺は続けようとするが… ぎゅるるるるっ…… 「…………」 「…………」 口論の最中急にお腹がなった。ふと気になって時計を見たらなんと既にお昼の時間は過ぎていた。 「……こんな時間まで集中できたなんてやっぱりあなたは頭は悪くないと思うわ。 それじゃ今日はこのくらいにして、お昼に行きましょ!」 空腹だったからか、俺は如月の言葉に言い返す気も起こらず、如月に誘われるまま昼食を食べに行った。 「しかし如月はどうしてそこまで数学が得意なんだ?羨ましいよ」 オーダーして料理が来るまでの間、俺は如月に率直に疑問を聞いた。 「それはね……砲弾を撃った時の速さと相手の速さを計算したり、 魚雷を撃った時の水の抵抗がどれ程なのかを計算して確実に相手に攻撃を当てるためよ」 「…………将来自衛隊か軍隊か何かに…」 「な~んちゃって」 「ったく、冗談はやめろよ。心理学について勉強してるってのも俺を上手くおちょくるためとか言うんじゃないだろうなあ」 「それは違うわ。だって心理学とか関係なくあなたはおちょくりやすいですし…」 「何だと!」 「…私が心理学を勉強しているのはね、相手が何を求めているか、何をすれば役に立つかってのがわかりたいからよ」 ふざけた話の後に真面目な話をするというのも心理学の応用なのだろうか? 俺は何を言おうか考えている内に頼んでいたメニューがテーブルに並べられた。 料理が出た以上手を付けないのはまずいだろう。俺達は料理を食べはじめた。 「ああ、やっぱこの季節の冷し中華はおいしいなあ」 「…………」 物凄い勢いで美味しそうに冷し中華を食べる俺の姿を見た如月は自分が食べる事も忘れて半ば呆然と俺を見ていた。 「いやあ、食った食った……」 「……とても嬉しそうだったわ……そんなに美味しかったのかしら?」 「ああ、夏はやっぱり冷し中華だよな」 自信満々に言い切った俺の姿に如月は気圧されながらも何だかとても嬉しそうだった。 「そう…よかった、お食事に誘って。さっきまでとっても暗い感じだったのにご飯を食べたら急に元気になっちゃって…… あなたの笑顔を見てるとこっちまで元気になっちゃうわ」 「そうか……如月、さっきは言い過ぎてごめんな」 俺はさっきの口論の事について謝った。 「別に気にしていないわ。あなただって色々と不安とかあったりしてあんなこと言ったんでしょうし…… それにお腹が空いていたのですから苛々とするのも不思議じゃないわ」 「だけど平常な時じゃなくて非常時に取る態度や行動こそがその人の本質に近いんじゃないかと思うと…」 「もう!あなたはいつも自分を責めすぎよ!そんな姿ばかりだとこっちまで落ち込んじゃうじゃない!」 「すまない……」 「…それにね、あなたは自分を過小評価し過ぎなのよ。失敗した時の事ばかり考えているし…… それも大事だけど、まずは何事もやり出す事から始めないと。 大丈夫よ、あなたはちゃ~んと集中力はあるんだから、 もっと集中できるようになるときっと結果は出るわ」 力説する如月に俺はもう余計な事は考えないようにしようと思った。 「ところで今度の土曜日はお暇かしら?」 「んー…特に予定はないな」 「じゃあ船に乗ってちょっと離島にでも行かない?」 「離島か…でも俺達だけで行くのも親達に心配を…」 「大丈夫よ、日帰りだから。朝は少し早いけどね」 「そうか……じゃ、行くよ」 「ふふっ、ありがと…」 「ん……弥生ちゃん?」 ふと振り返ると弥生ちゃんが立っていた。 「あ…気にしないで…」 「弥生、あなたも今度の土曜、離島にでも遊びに行かない?」 「いえ…お二人の邪魔を…」 「みんなで一緒に行った方が楽しいと思うよ」 「……わかりました。一緒に行きます…」 弥生ちゃんは少し申し訳なさそうに答えた。 そういえばこの子は昔から相手に気を遣うタイプなんだよな。 自分は気を遣われることを気にしているのに。 しかし弥生ちゃんが気を遣ったということは俺が如月を好きだと気付いているか、 あるいは如月が俺に対して何か思うところがあると思っているのか。 「決まりね。それじゃ、早速水着を買いに行きましょ!あなたも一緒に来て」 「ああ」 如月に誘われて二つ返事で了承した俺。荷物持ちか何かだろうと思いあまり考えなかった。 「見て見て~、この輝く肌。あはっ、もっと近くで見てよ。どうかしら?」 ピンクのビキニを試着した如月はそう言って胸を強調するようなポーズで感想を求めた。 「……うん…綺麗だと思う……」 何だか恥ずかしくてあまりまともに見られない俺だった。 「褒めてくれてありがとう。好きよ…」 「ッ!?」 「な~んちゃって」 「くっ、からかわないでくれ」 「でもよかった、喜んでもらえて。Bカップの水着でかわいい水着ってあまりなかったから」 俺を恥ずかしがらせたいのか、そういったことは結構包み隠さず言っちゃう如月だった。 「あれ?弥生ちゃんは?」 如月と一緒に着替えた弥生ちゃんはどうしたんだろう。 「あ、ほらほら、弥生も隠れてないで見せてよ」 如月はカーテンに隠れていた弥生ちゃんを誘い出した。 弥生ちゃんの水着は水色を基調としたセパレートの水着だった。 チャームポイントの細いお腹も強調されていてなんとも可愛らしい。 「可愛らしいね」 俺は素直な感想を言った。弥生ちゃんもとっても可愛い。 もし如月がいなかったら俺は弥生ちゃんを一番に好きになっていたかもしれない。 もっとも、如月がいなければ弥生とここまで親しい関係になれたかどうかはわからないが。 「ありが…とう……嬉しい…です……」 恥ずかしがりながらも感謝の気持ちを述べる弥生ちゃん。顔もいつもより少し赤みがかっているような気がした。 「それじゃこれで決まりね」 そう言って如月達は着替え直し始めた。 土曜日、朝早く俺達は船に乗って離島に向かった。 「風が気持ちいいわね…」 「そうだなー。弥生ちゃんもそう思…弥生ちゃん!?」 「…ん……あ……ごめんなさい……」 弥生ちゃんは立ったまま眠っていた。なんとも危なっかしい。 「仕方ないわ、こんなに朝早かったんですもの…ふぁ~…」 あくびをする如月。そういえば目がとろんとしていたなあ。 「あ……ごめんなさい……」 「いや、気にはしてないよ。そういえばこの前図書館で勉強していた時も眠っていたよな。 如月にしては珍しかったよ。如月はそういう所がしっかりしているからすごいことができるって思っていたからさ」 「突発的なことがあれば予定も狂っちゃうわ」 「そこら辺も含めて余裕あると思っていたけどな。まあいいや。それじゃコーヒーでも飲まないか」 「コーヒーは…ちょっと苦手……」 「それにコーヒーなんて飲んだらお花を摘みに行きたくなっちゃうわ」 俺はわかったようなわからんような、そんな顔をしながら話題を変えた。 「しかし平和だなあ。とても恐怖の大王が世界を滅ぼすとは思えないよ」 「恐怖の大王って…そんなの信じてるんだ」 「ノートルダムとかいう預言者が言っていただろ。1999年の7月に恐怖の大王が世界を滅ぼすとかさ」 「ノートルダム?」 「ああ、ラテン語でノストラダムスと言うんだ。二万年前のアトランティスの人間じゃないと思う」 「よくわからないわ……」 そりゃあ漫画の知識だからだ。それも如月が買うような漫画ではない。 如月が俺の家に来て勝手に読むとかで知ったりする可能性もあるけど。 ……ん?海の上に誰か立っている?いやそんなはずはない。きっと蜃気楼だ。そうに違いな… 「え…あれは……」 “それ”をみた如月は驚いた顔だった。そしてその一瞬の後 「危ないっ!」 珍しく声を張り上げた弥生ちゃんが俺達の前に立ち、直後爆発のようなものに吹き飛ばされる。 俺は吹き飛ばされた弥生ちゃんに駆け寄った。弥生ちゃんは痛そうに呻いていた。 よく見たら弥生ちゃんは弥生の通っている学校の制服を着ていた。 だがそれはボロボロな上に金属片みたいなものも散らばっている。 「みんな、逃げて!!」 如月が声をあげて叫ぶ。 「待てよ、一体何が…?」 俺は疑問を聞こうとして、ふと如月が見つめていた方向に目をやった。 そこには異様なまでに白い肌をした女の子… 頭に得体の知れない化け物みたいな帽子を被った女の子が立っていた。彼女も服がボロボロだ。 「まさかもうこんなに…狙いは私達?」 「一体何なんだよ、あれはっ!」 「みんな逃げて!!ここは私が何とかするわ!!」 いつも穏やかな物腰だった如月にはありえないような口調。それに圧倒され、 俺は弥生ちゃんを抱え、回りのみんなと一緒にその場から逃げ出した。 船内に入る直前、如月が心配で如月の方に目をやった。 如月の服はボロボロではあったが、俺達の学校の女子の制服に着替えられていた。 それに船の一部分のような形のものを背負っていた。 「うぅ……如月……」 「無理するな!」 「でも、如月一人じゃ…」 「本当に何なんだよあれは!」 「あれは…深海棲艦……」 「しんかいせいかん?」 「如月も大破してるから…助けに…行かないと…」 「じゃあ俺が助けに…」 「ダメ!……普通の人間じゃ、深海棲艦には何も……」 「新幹線だか何だか知らないけど、このまま黙っていられるか!」 俺はお約束みたいな言い間違いをしながら弥生ちゃんの制止も無視して如月のもとへ向かった。 先程のギャグ的な言い間違いなど言えるような状況と言えないほどそこは恐ろしい現場であった。 甲板は荒れ果て、如月は服がさっきより破ている状態で倒れていた。 これは映画の撮影かなんかじゃないかと思ったが先程避難勧告が出ていたことを考えたらそれはない。 ならば夢を見ているのか?それも違う。俺は昨日早く眠りについた上に今日はコーヒーを二杯も飲んでいた。 だからこれは今現実に起きている出来事なのだ。 倒れている如月に手に持った杖でトドメを刺さんと言わんばかりに化け物みたいな女は近付いていった。 このままでは如月が!そう思った俺は先程拾っていたデッキブラシを構えながら気付かれぬよう近付いた。 相手は如月に気を取られているのかこちらに気付いてないようだった。デッキブラシに力を込めながら背後から近付く俺。 化け物女が如月にトドメを刺そうと杖を掲げたその瞬間、俺は全力でスイングした。 化け物女は驚いた声をあげながらよろめいた。腕の力だけではなく、腰や全身を使ってスイングしたのだ。 どんな奴でも背後から気付かれぬ内に攻撃されて平静ではいられないものなんだな。 俺はとにかく叩き続けた。好きな女の子を酷い目にあわされて黙っているわけにはいかなかった。 だが攻撃もむなしく俺は化け物に逆に杖で殴り飛ばされた。 「うおぁっ!」 殴り飛ばされる直前辛うじて避けたものの完全には避け切れず攻撃が俺を掠めた。 だがそれでも相当なものだった。少し触れただけなのに衝撃波か何かによって弾き飛ばされた。 「ぐわあぁぁっ!!」 俺は何とか頭は打たなかったものの左手を床に打ち付けてしまった。激しい痛みが走った。 俺は恐怖した。人間ではこの化け物に勝てないと。 「くっそーっ!」 だが俺は自らを奮い立たすかのように声をあげて必死に抵抗した。落ちていた金属片を片っ端から投げつけた。 しかし野球やってるとはいえ狙いをつけて投げたわけじゃないから上手く当たらない。 もっとも、仮に当たったとしても大したダメージは与えられないだろうが…… 「くっそっ!!」 「………」 化け物は自らの無力さに叫ぶ俺にトドメを刺そうと杖を振り上げた。その瞬間だった。 ドゴォォォォン!! 化け物の背後で爆発が起きた…いや、化け物の背中が爆発した。 倒れる化け物。その背後には如月と同じ格好… だがボロボロの如月と違って綺麗な身なりのショートカットの少女が 小さな大砲のようなものを構えながら如月を庇うかのように立っていた。 「間に合った………」 「き……君は……?」 「あなたでは如月を守れない……幸せにできない…………」 「な、何を……」 「やはり私じゃなければ…この子を…」 ショートカットの少女はこちらの質問に答えようとせず、 僅かに蔑むかのような目で俺を見ながら意味のわからぬ独り言を呟いていた。 「そうだ、如月は!?」 「…………」 「大丈夫…少し傷があるけど… 艤装が大破して激しく見えるけど命に別状はないわ… 今は気を失っているだけ……」 「……それならいいけど………あいつらは一体何なんだよ!!それに君も!!!」 俺はあまりにも気になる疑問を率直にぶつけるしかないのだった。 「心配かけてごめんね。もう大丈夫よ。弥生も元気になったし」 あれから一週間。俺達の…いや、世界の状況は一変した。 深海棲艦という未知なる化け物が世界各地の海で暴れ回り、海路だけでなく空路すら断絶させられていた。 深海棲艦は既存の兵器等がまったく歯が立たない存在で、 その正体は第二次世界大戦の亡者達(人だけではなく艦等のモノも含む)が世界中の悪意と融合した存在と思われている。 そしてその深海棲艦に対抗できるのは、同じく第二次世界大戦の亡者の力を借りた艦娘という存在だけだった。 「はっきり言って今でも信じがたいけど……でもあれを見てしまった以上信じなきゃいけないだろうな。 それに世界中でも暴れているってのがメディアの報道でもわかるし。 けど実はあの時よりずっと前から深海棲艦ってのがいたんだな」 「ごめんなさい、隠していて……でもあの時は今ほど深海棲艦は出没してなかったの。 一般的には精々ネッシーを見たとかそういった程度の認識だったのよ」 「まったく……預言者ももうちょっと気を利かせて対策でも見つけてくれたらよかったのに……」 ノストラダムスの預言が見事的中した形で深海棲艦が現れたわけだ。 だがその預言があったために深海棲艦という存在が終末思想が蔓延っていた世界にすんなりと認められ、 それに対抗する艦娘という存在もあまり抵抗なく一緒に認められた…のだと思う。 ちなみにアンゴルモアとかいうのがいるかどうかは知りません。 「深海棲艦が確認されて、その後艦娘という唯一の対抗策が生まれたわ。 艦娘はその名の通り女性しかなれないもの。でも女性なら多かれ少なかれ誰でもなれる可能性はあるの。 私と弥生は10歳になった時に艦娘の素質があると教えられて艦娘になったのよ。 それからは人知れず訓練を重ね、秘密裏に深海棲艦と戦い続けていたのよ」 「そうか……………………」 俺は二の句が接げなかった。 彼女達の、ボランティアとかそんな話を超えた言わば使命の過酷さ、 そんな中でさえ学生としての本分を最高の形で成し遂げる力。 俺は恵まれた中でただ目的もなく毎日を過ごしている自分自身に怒りにも近い感情が湧き、 その感情を発散させるかのように飲みかけのはちみつレモンを一気に飲み干した。 「しっかし如月って本当に何でも出来るよなあ。そんなとんでもない敵と戦いながら、 勉強とか、その他色々なことだってちゃんと出来てるんだからさ」 如月は学年で一番頭が良いと言えるくらい頭脳明晰であり、多くの章を貰っていて、嫉妬したくなるくらい輝いている。 そんな彼女の名前を知らない者はいないと言いたくなるくらい有名だが、 彼女が名前を残そうとしているのは、彼女が悲劇の駆逐艦如月の魂を継ぐ者だからではないかと思えてきた。 駆逐艦如月は、かつて起こったあの忌ま忌ましい戦争で何の活躍も出来ぬまま沈んでいった。 知られていないというだけなら他にもたくさんの艦があるのだが、 他の艦は多少なりとも戦いでの活躍があるものの、駆逐艦如月にはそういった話は本当に何もない。 だからこそ、何の活躍も出来ず忘れ去られていった駆逐艦如月の無念が一人の少女に宿り、 今の時代にこの世界で名を残そうとしている…… 如月が有名になろうとしているかのごとく頑張っていたのはそんな理由があるのかもしれない ……俺はそう思っている。もちろん俺の勝手な想像だから実際のところはどうなのかわからないのだが…… 「まあ結構大変だったけどね」 ……あれ?いつもと態度が違うぞ。いつもなら当然だと言わんばかりに この年齢の女の子としてはある方な胸を張っているのに。 「私だって出来ないこととか、他の人に負けることだってあるわ」 負けず嫌いなのに弱音を吐くなんて… 「あなたは自分に自信が持てないみたいだけど、もっと自信を持って。だってあなたは強いんだもの」 「強い…って俺には戦う力なんてないよ。あの時だって全然役に立たなかったし…」 「違うわ。そうじゃないの……深海棲艦は強い。私だって戦っていてあまり無事ではない時もあるわ。 そんなのには普通の人間なんかじゃ手も足も出ないわ。でもあなたは勇敢に立ち向かった。 それは私を守りたかったからじゃないの?」 「…………」 「あはっ、あなたったらすぐに顔に出るんだから」 如月には敵いそうにないな。 「でも守りきれなかった……あの子にダメ出しされてしまうくらい……」 「あの子……睦月のことかしら?」 「ショートカットの女の子だったかな」 「そうよ睦月よ。その子がどうかしたの?」 「あの子、俺を見て守れないとかなんとか……」 「あの子はね、小さい頃に両親と妹を深海棲艦に殺されたの」 「なんだって!?」 「その頃は深海棲艦の存在は公じゃなかったけど、あの子を助けて引き取ったのが深海棲艦を研究し対抗していた人達なの。 彼らから話を聞いた睦月は深海棲艦への復讐の為に艦娘になったって聞いたわ。私が艦娘になった年齢よりも幼い年齢でね…… だからかしら。私の事を妹のように扱っていたわ。私が『如月』であの子が『睦月』である事と関係あるのかもね…」 睦月…って子はとにかく如月が大切な存在なんだな。 もしかしたら俺が想う以上に如月を大事に想っているのかもしれない…… 「あなたと同じくらい私の事を思っているのかもしれないわね」 俺の考えを見透かされたかのような……!?如月は俺の気持ちを知っているのか!? 「睦月は戦いの中でいつも私を守ってくれた。そしてあの時のあなたから睦月と同じくらい私への想いを感じたわ。 実はね、今までもあなたの気持ちには薄々気付いていたの。別に嫌じゃなかったし、結構楽しかったわ。 でもあの日あの時、命をかけて私を守ろうとした。 あの時からなんだか私の心がちょっとおかしくなっちゃったみたい。 もしかしたら恋しちゃったのかもしれないわね…… ……後悔はしたくないわ。だから聞いて。私と……………………セックス…………して…………」 ……………………は? 思わずそう言いたくなるくらい俺は耳を疑った。 「ソレって…つまり赤ちゃんを作るってことだろう?俺達がそんな…」 「それもそうだけど、でもそれ以外に愛を確かめ合うって意味もあるわね」 俺も男の子だ。そういったことに興味がないわけではない。というか凄く興味深々である。 そういうことは気持ちいい事って聞いたから一度はやってみたいと思ったことはある。だけど………… 「心配しなくても今日は大丈夫な日だから」 「大丈夫とかそうでないとか……そういう問題なのか?」 いざそんな場面になるとその気になれなかった。 嫌という意味ではなく、何故という意味もあったし、 もしもの時の事や未知の行為への不安などもあった。 「…………私達ね、あなたとお別れしなくちゃならないのよ……」 「…………え?」 如月が目を潤ませながら言った。 「深海棲艦が現れ、その存在が公になって艦娘達は横須賀の鎮守府へ行かなくちゃいけなくなったの。 だからあなたとはもう二度と会えなくなるかもしれない……」 「そんなこと…」 「私達艦娘は深海棲艦と戦う。戦うということは場合によっては死んじゃうかもしれないのよ。 だから今しかないの。あなたとの思い出を作ること、 そして、あなたの心の中に私を刻み付けることができるのは……」 如月は多分…いや間違いなく覚悟を決めていた…のかもしれない。 俺は涙を流していた如月を信じ、その想いを受け止め、そして………… 「ん………………」 如月の唇に自分の唇を重ねた。 それはとても暖かく、柔らかく、幸せなものだった。 初めてのキスはレモン味という話を聞いたことあるけど、 さっきまで飲んでいたはちみつレモンのせいか、本当にそんな味がした。 「そう…そこよ……」 俺は如月に導かれるままに彼女の股に…初めて見た女性のあそこにちんちんの先端を当てた。 皮をかぶせていたまま当てていたが、こうやってするものと言われて如月によって剥かれた。 「本当にいいのか……」 「い、いつでも…大丈夫…ですわ……」 俺にも余裕はなかったのだが如月も余裕がなさそうなのは言葉から感じ取れた。 「じゃあ…行くぞ…!」 俺はあえて興味本位の感情を強く出して迷いを捨て、如月から求めているんだと自分に心の中で言い聞かせ、 ちんちんに力を入れて進めようとした。 だが如月のそこは阻むかのように俺を受け入れようとしなかった。 如月は少し痛がっていたが、俺は余裕なんてなかったため力任せに何回も突いた。 如月の我慢混じりの小さな悲鳴が聞こえたが、気にせずに何回も繰り返した。 そのうちぬるぬるした感触とおしっこをしたくなるような感覚に似たものを感じるようになったがまだ入らなかった。 俺は一旦腰を止めた。如月が少しきょとんとした感じの顔になった気がしたが、 その間に俺は力を溜め、そして一気に突っ込んだ。 ブツッ!!!! 何かが破れるような感じと音がして、俺のちんちんは如月の中に入っていった。 「あっ!!ぅ……ぐっ……!!」 如月は大声をあげるもすぐさま我慢した。 我慢した時に力が入ったからなのかはわからないが 如月の中に入っていった俺のちんちんが強い力で締め付けられた。 その瞬間何かが解放されるような感覚がした。 びゅるっ…… 音にするならそんな風な、そういう感覚が次に来た。 おしっことは違う、なんだか気持ちいい感覚が続いた。これが射精というものだろうか。 知識としてはあった俺だったが、実際にそうなったことは記憶の限りでは今までなかったのだ。 俺が気持ち良さを味わいながらも考えている内にそれは終わった。 「はあ…はあ…」 「っ…………」 「………如月、大丈夫か!?」 全てが終わって冷静になった俺は目の前で複雑な表情をしていた如月の心配をした。 「大丈夫……ですわ………」 どう考えても大丈夫という気がしなかった。 「なにもかも…初めてですもの……初めては…痛いもの…だから………」 痛いもの…………俺はちんちんを入れた場所を見た。そこからは赤い血が流れていたからだ。 「如月っ!ごめん!」 俺は謝った。如月を傷つけてしまったと思ったからだ。 「気持ち……良かった……?」 如月は気にしていないかのように俺に質問を投げかけてきた。 正直言って今の如月を見ていると自分だけが気持ち良かったとは言い難かったが、 気持ち良くなかったと嘘をついてしまえば痛みに耐えてくれた如月を傷つけてしまう。 俺は正直に気持ち良かったと答えた。 「良かった…………」 如月は涙を流しながらも笑みを浮かべた。それは嬉し泣きをしているようにも見えた。 「それじゃすぐ抜く…」 「抜かないで!」 「っ……いや、でも如月が…」 「私は大丈夫よ…それにあなただってまだやり足りないみたいだし……おちんちん、まだ硬いわよ」 「……わかったよ……」 俺は如月に言われた通りちんちんを抜かなかった。 「……動かないの?」 「動く?」 俺は如月をぎゅっと抱きしめたまま動かなかった。 「そう…抜ききらない程度に抜いて、もう一度入れて、また抜ききらない程度に抜いて……それの繰り返しよ」 「そうだったのか……」 入れるだけのものだと思い、動くものとは知らなかった。 俺は如月を傷つけないようにちんちんをゆっくりと引いた。 擦れた感覚がとても気持ち良く、思わず突き入れてしまった。 「っ……!」 「あっ、ごっ、ごめん!!」 「…いいのよ……続けて………」 「ああ……」 如月に言われるがまま腰を動かした。如月を気遣うかのように最初はゆっくりと快感を我慢しながらだったが、 如月の声が我慢しきれなかった悲鳴のようなものではなくなってきて徐々に動きを激しくした。 そして俺は再びあの感覚に襲われた。 びゅるるっ!! 精液を再び如月の中に出していた。 今度は奥深くに出すように腰を強く押し付け、如月を強く抱きしめていた。 如月も俺の体を力いっぱいぎゅっとしていた。 「あなたの気持ち良かったっていう証がこんなにたくさん…ありがとう…… 私も好きよ…………大好き………………」 お互いに何回も何回も求め合った。 最後の方は俺は気づかいなどなしに自分の快楽の為だけに腰を振っていた。 だが如月は俺を受け入れてくれていた。その顔には笑みが浮かんでいた。 そして俺への好意の言葉はいつものような冗談めいたものではなく、 声にならないような、切ない涙声が俺の心を震わせた。 「ギリギリまで一緒にいたい……」 それは俺も同じだった。本当は如月を戦いに行かせたくない。 危険な目に会ってほしくない。変わらぬ日常をずっと一緒に過ごしていたい。 だけど、彼女が戦わなければ他のみんなの変わらぬ日常が壊されてしまう。 子供のような理屈なんかで彼女を止めることなんてできやしない。 だから、今この瞬間を大事にしたかった。 全てが終わった後も如月と繋がり合っているこの瞬間を…… 「今日のこと……一生忘れないわ…… だから……あなたに、今は一つだけお願いがあるの…………」 『今は』……最後に、ではないのはまた会える日を信じていたからだろう。 そして、その言葉は俺にとって一生忘れられない言葉だった………… ―如月のこと…忘れないでね…― 《終》 + 後書き 897 :名無しの紳士提督:2015/01/29(木) 20 16 34 ID UtuOToxs 以上です 精神的に微妙なときに書きかけていたものを形にしました 相手を提督以外で書くのは初めてですが 子供的な考えとかの表現が上手くできたかわかりません それでは これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/602.html
非エロ:提督×大鯨13-470「お・し・か・け 幼妻大鯨ちゃん」 提督×大鯨15-160「ド・キ・ド・キ 幼妻大鯨ちゃん」 505 名前:幼妻大鯨ちゃん[sage] 投稿日:2014/12/25(木) 19 39 31 ID XinNt83E [7/19] クリスマスプレゼントという事で、もう一つ投下します 幼妻大鯨ちゃんシリーズの続編です 今回は非エロな上にローカルなネタ多数で 気象状況などで現実にそぐわないものもあります また、この話はフィクションで、 実在の団体や地名、イベント等とは一切関係ございません NGワードは『幼妻大鯨ちゃん』でお願いします クリスマスは恋人と二人きりで過ごす日だと思われているが、 本当はイエス・キリストがこの世に生まれた日を祝う降臨祭、 ある意味でキリスト教徒による壮大な誕生会みたいなものである。 しかしそういった事とはあまり関係が無い日本人でも… いや、日本人だからこそ何かに託けてイベントをするのだろう。 バレンタインもハロウィンも、日本ではどれも商業的なものに利用されている節が見受けられる。 しかしクリスマス……厳密には12月25日は日本人にとって海外とは違う特別なことがあった。 それは大正天皇祭、つまり1926年12月25日に崩御した大正天皇を偲ぶ日であり、 戦前では昭和天皇の先帝祭として祝日として法に定められていた。 戦後は法改正により先帝祭が休日ではなくなったが、 12月25日が祝日であった戦前の間にクリスマスが日本に広まったと言われている。 当時どのような事になっていたのかは俺には知るよしも無いが、 恐らくは祝日であった為に大人達も働くことなく休む人達もいて、 その人達は家族で過ごしたに違いない。 それは海外におけるクリスマスの過ごし方である『家族一緒にいる』 という事を知ってか知らずかなぞっていた可能性もあるのかもしれない。 しかし今は昭和も終わり平成の時代になり大正天皇が先帝ではなくなった今は12月25日は普通の日であった。 もっとも、先帝祭での休日というものも戦後無くなってから久しいが。 しかしいくら今は普通の日であるとはいえ、クリスマスという特別な日である以上みんなそれを意識するものである。 「提督、そろそろ始まりますよ」 「わかってるさ大鯨」 クリスマスイブの日の朝、俺達はホールの入口から舞台を見ていた。 「パンパカパーン!みんなお待ちかねの艦隊のアイドルの那珂ちゃん登場だよー!」 「メリークリスマス!那珂ちゃんからのクリスマスプレゼントだよーっ!キャハァッ!」 愛宕の紹介で現れたのはトップアイドルであり、川内型軽巡洋艦三番艦那珂の艦娘、通称那珂ちゃんである。 ちなみに那珂ちゃんの本名も『なか』であり、 かつて名古屋美人の代表と言われた女義太夫の豊竹呂昇の本名から来ているらしい。 小さい頃は自分の名前にコンプレックスがあったらしいが、それが今では那珂の艦娘であるのは運命的なものを感じる。 彼女は元々人気アイドルだったのだが、艦娘になってからもアイドル活動を続けていた。 彼女がアイドル活動を続けられる理由は彼女が戦闘要員としてではなく主に輸送部隊の護衛が仕事であるからだろう。 那珂ちゃんの仕事は輸送任務で船団を守り、輸送先でコンサートを開くというのが基本的なスタイルである。 那珂ちゃんが輸送任務をする時は彼女の都合にあわせて指示されるのだが そうなっているのは那珂ちゃんが人を笑顔にする力を持っているからだろう。 那珂ちゃんが笑えばみんなが笑顔になる。歌を聴けばみんなが元気になれる。 それは彼女の天性のものであり、俺達には彼女程のそういった力を持っていなかった。 彼女のその力は深海棲艦に大切なものを奪われ希望をなくした人々にもう一度希望を与えてくれるものだった。 もちろん、深海棲艦関係なく独り身である者達も例外ではないだろう。 「お疲れ様です」 「責任者としての義務を果たしただけとはいえただコンサートを見ていただけさ。 それに今回と、今度の新春特別コンサートは那珂ちゃんの所属事務所が担当だから俺は最終確認したくらいさ」 大淀が鳥海の声真似をして俺を労った。 年末年始のイベント事は那珂ちゃん関係ばかりだから那珂ちゃんの事務所に任せている。 あそこは大きな会社だからタレントが所属しているだけではなく、 様々なイベントのプランニング等も行っているらしい。 おかげで俺達の負担は少なくて済むわけだが。 「帰ってきて早々ですが、本日の深海棲艦出没情報の報告を致します」 「わかった。大鯨、君はお昼を作っておいてくれ。今日は味噌焼きうどんを頼む」 「わかりました」 返事をした大鯨は調理場へ走り出した。彼女は秘書艦だが食事時の前に会議を開く場合はあまり出席させていない。 彼女の料理の腕はかなりのものであり、 よほどのことがなければ会議によって料理の腕を振るう機会を損なわせるわけにはいかない。 「報告します。各地の深海棲艦の数に変化はありません。南西諸島防衛線も……韓国の済州島付近も……」 「ふむ…………ご苦労だったな、ありがとう」 電が途中言葉が詰まり気味になりながらも報告した。 「今年は大丈夫…ですよね……?」 「わからんな。いつもと変わらないのなら、奴らもいないということだろうが」 不安になる電だが無理もない。去年のクリスマス、南西諸島防衛線―通称1-4地点―に潜水艦が現れた。 いつもはいないはずの潜水艦だったが、それだけで恐怖ということはない。 問題は1-4地点に潜水艦が現れたと同時に謎の勢力『霧の艦』が現れたことだ。 彼女達は艦娘と同じく旧日本海軍の艦船の力を持っていたが、 艦娘とは違い彼女達は艦船そのものであり、その力も当時のそれを遥かに凌駕するものだった。 俺は偶然にも霧の艦への対抗勢力と接触し、力を借りることによりなんとか撃退した。 霧の艦が姿を消してから1-4地点から潜水艦も消えた。 だが完全に撃退したわけではないため、再び現れる可能性もある。 だから俺達は深海棲艦の出没情報をしっかりと確認し、そこから そして済州島だが、あそこは深海棲艦が元々ほとんど出没せず、出没してもそれは弱いものであった。 ならば何故わざわざ調べるのかと思うだろう。 それは渾作戦で春雨に似た深海棲艦の存在を確認したからである。 渾作戦。それは太平洋戦争中の作戦の名前でもあった。 ちなみに漣にメールで送ったところ予想通り大根を大量に買ってきたがそんなことは今はどうでもいい。 今回の渾作戦では春雨に似た深海棲艦の姫である駆逐棲姫、通称悪雨(わるさめ)が強敵として立ちはだかった。 太平洋戦争の渾作戦において沈んだ艦は春雨だけであり、他に沈んだ艦は日本以外を含めても一隻もなかった。 何故深海棲艦が艦娘と似た姿で現れたのか、それはわからない。 しかしそれ以来俺の頭の中には一つの不安があった。 それは、深雪の姿をした深海棲艦が韓国の済州島近海にいずれ現れるのではないかという事だった。 深雪は今いる艦娘の中で唯一力の元となった艦が戦争を経験する事なく沈んでいた。 戦う為に産まれた存在が戦う事なくその生涯を終えてしまう。それは艦として無念であろう事は容易に想像できる。 だからいずれ済州島近海に駆逐艦深雪の無念が 深海棲艦の姫―さしずめ闇雪(やみゆき)といったところか―となるかもしれない。 現れてから慌てて対応するのではなく、今のうちにやるだけのことはやっておきたかった。 「何も変化ないのなら心配する必要ない…とは言えないが今夜の任務についてもそろそろ…」 「ああ、本日行われる名古屋港花火大会で我々が警護を任されたからな」 「そうだ。AL/MW作戦の折の本土襲撃以降観覧クルーズどころか花火大会そのものが中止となりかけたからな」 「だから私達が護衛をすることによって、皆さんの楽しみだった花火大会を開催にこぎつけたわけですね」 「気合い入ってるな電、その通りだ。伊良湖沖近海の警戒、観覧船の警護が我々の仕事だ。 メンバーの選出は前もって伝えておいた。選出された者達は午後の任務はなし、 十分な睡眠を取るなどして休養してくれ」 「了解!」 「大淀、明石。俺と大鯨も休息を取るから午後からの仕事は君達に任せた」 「ええ、お任せください!」 こうして俺達は夜に備えて休息を取った。ちなみに川内は夜に備えて朝からずっと寝ていたのは言うまでもない。 ヒューン…………ドン!ドドン!ドーン!ドドドドーン!! 鳴り響く爆発音。これは戦闘をしているのではなく、花火の音である。 「わー…きれい…」 「すごいや!」 「兄ちゃんたち、ありがとー!」 子供達が俺に対してお礼をする。 「俺は別に何も…」 「提督、貴方のお陰ですよ。貴方が花火大会の開催に尽力してくれたから、こうして今花火を見られるんですから」 「そうだよ。僕達だけじゃ花火大会の開催にこぎつけるなんて無理だったんだから。 いくら僕達艦娘に力があったって勝手な真似は出来ないからね」 「お姉ちゃん、このおにぎりおいしいよー」 「ふふっ、僕の作った桑名名物しぐれ肉巻きおにぎりで喜んでもらえて嬉しいよ」 「でもこっちのおっぱい大きいねーちゃんの料理の方がおいしー!」 「まあ……………………でも、私の料理をそんなに褒めてくれるなんて……」 大鯨の顔が赤いのは子供に変な事を言われた恥ずかしさからなのか、それとも料理を褒められた嬉しさからなのか。 「キミィ、あんまニヤニヤしてたらアカンよ」 特別な衣裳を着た龍驤が俺をからかう。龍驤は俺がニヤニヤした理由をどう考えたのだろうか。 子供達が大鯨の胸を大きいと無邪気に言った事か、もしくは俺が大鯨の赤らめた顔を見たことか。 「すまない、空母の君を夜の任務に出して」 「ええんや、ウチだってみんなと楽しくやってたかったんや。水上で任務やってる仲間にはちょっち悪いんやけどね。 それにもし何かあった時にはウチら船上組が子供達の盾にならなアカンしな。 ウチの仕事がこれしかできんでもみんなの笑顔に繋がるなら、それで十分や」 船での花火の観覧を決行させるのは少し骨が折れたが、こうして子供達を笑顔にする事も艦娘達の仕事だろう。 名古屋港に通じる伊良湖沖では他の艦娘達が深海棲艦の侵入を阻止しようと警戒中で、 船の周りでは深海棲艦が万が一襲来した時の為に主に駆逐艦達が警護、 船上では周りの艦娘が沈んでしまった時の最後の砦としての他に 子供達の相手や料理を振る舞う為などいざという時の為に主に空母艦娘が備えている。 伊良湖沖では現在深海棲艦との激戦が繰り広げられているが、深海棲艦の侵入を許す程ではない。 彼女達もみんなの笑顔の為に戦っているんだ。 彼女達伊良湖沖出撃組が子供達と合うことはないだろうが、帰ってきたら子供達が喜んでいた事を伝えよう。 「提督、次は特大花火ですよ。大鯨さんと一緒にちゃんと見てくださいね。あなたは大鯨さんの主人なのですから」 特別な衣裳を着た漣が俺に呼び掛ける。彼女は昔は俺の事をご主人様と呼んでいたが 俺が婚約したと聞いてからは色々と気を遣ってかご主人様とは呼ばなくなった。 漣の予告通り大きな花火が空に上がった。それを俺は愛する人と共に見ていたのだった。 花火大会も無事終わり俺達は鎮守府に戻った。 そして全ての仕事を終えた俺は大切な人と一緒にクリスマスの特別な行事を行い、 それを終えて俺達は眠りに…… 「寝るな。少し貴様に話がある」 つこうとしたら那智達に起こされたのだった。 「怒ってなんてないですよ…司令官と大鯨さんが初夜以降一度もそういった事をしない事に、弥生達も、大鯨さんも…」 「でもそれはあまり上手くいかなくて相手を傷付けてしまったと思い、 これ以上傷付けてしまう事が怖いからっていう事はみんなわかっているのです」 何でいきなりこんな事を言われるのか。気心の知れた間柄でなければ少しは怒っていたかもしれない。 「あの…少しは否定するそぶりくらい見せてください…私が大鯨ちゃんから話を聞いて、 こっちが勝手に不安になって、誰にも話さないでとは言われていないからとはいえみんなに相談しちゃったとはいえ…」 情報の出所が変な所でなくて良かった。内容に特に間違いはないから俺は否定しない。 「それが言いたい為だけにみんなを集めたわけじゃないんだろう」 「その通りだ。夫婦が納得した上での事なら口出しは無用と思っていたからな。 それよりも貴様に少し聞きたいことがある」 「何だ?」 「貴様は結婚してから休みを取った事はあったか?」 「休みか…………渾作戦以来一日も休んでなかったな」 「そうだ。渾作戦の期間中に休みがないのは仕方がない。だがそれ以降今日まで一日も休まなかったではないか」 「俺にも信じられんよ。まさか一日の休みもなしにここまで働けたなんてな」 「なら二人の時間は仕事が終わった夜の数少ない時間以外にあったか?」 「二人の時間…………プライベートな時間だとそれ以外なかったけど、 二人きりではないとはいえいつも仕事でほとんど一緒にいるし、昨日の花火大会はもとより、 カレーラーメンコンテストの特別審査員やった時も一緒だったな。 あとさっき駆逐艦のみんなに彼女と一緒にプレゼント配ったりしていた」 「こんな時にあなたは……」 「…………君に聞きたいことがある。君は何の為にここにいる?」 「お前達が呼び出した…って、そういう意味じゃないよな。 俺が提督をやっている理由、それは地上の愛と正義の為だ」 「真っ直ぐで迷いがないな。それでこそ君だよ。では大鯨と結婚した理由は何だ?」 「そりゃあ、俺が彼女の事がどうしようもなく好きで、ずっと一緒にいた……ッ……!」 最後まで言い切ろうとして途中である事に気付き、言葉が詰まる。 「ただ大鯨ちゃんと一緒にいたいだけなら結婚なんてする必要はありませんわよね。 あなたは大鯨と結婚したわけじゃないはずよ。あの子が提督と結婚したわけじゃないみたいに……」 そうだ。如月の言う通りだ。ただ一緒にいるだけなら結婚する必要なんてない。 ただ一緒にいるだけならば提督と艦娘大鯨という上下関係だけでも十分である。 俺は彼女と生涯を共にしたかった。俺が提督ではなく俺である時もずっと一緒にいたかった。 だから彼女と結婚したんじゃなかったのか。 だけど俺は結婚して以来休みがなかった事も重なって一度も夫らしいことをしてこられなかった。 むしろ結婚前の同棲状態だった時の方が彼女に色々と気を遣っていた分だけ彼女に何かをしてやれていた気がする。 そしてその時が今まででは一番二人にとって一番幸せだった時なのかもしれない。 結婚したのもこの幸せがずっと続いてほしいと思ったからだ。 だのに俺は仕事ばかりで、それすらも言い訳にして、でもそれでも彼女とは一緒にいられて………… 俺は愛する人がいつも傍にいてくれる事に甘えすぎていたのかもしれない。 「貴様はあまりにも働きすぎた。クリスマスくらいはゆっくりするんだ。 あと大鯨も最近は働き詰めだったから休ませないといけないな」 それは二人の時間を作れという事を遠回しに言っているのだろう。だが… 「仕事はどうするんだよ」 「私達に頼ってもいいのよ」 ビスマルクが自信満々に即答する。なんとなく頼りになりそうな気がしてくる。しるこサンドを食べながらでなければ。 「一日や二日くらいなら、私達だけでも何とかなるのです!」 「そうよ、私達に頼ってもいいんだからね!」 「幸せそうな貴方達を怨むほど私達を狭量と思わないでね!」 「…………わたったよ、みんなを信じる」 俺はどうするべきか迷いながらも彼女達の力を信じ、全てを任せた。 「フッ…君の健闘を祈るよ……」 そう言った那智の顔は普段目にすることがないような笑みを浮かべていた。 「当たって…当たってぇー!」 雪玉が飛んできたがそんなに速くなかったから難無く避けられた。 大鯨は潜水母艦だ。故に攻撃能力に乏しく、その艦娘である彼女にも戦闘のセンスは今のところ感じられない。 「負けるかっ!とぉありゃあっ!!」 俺はスナップを効かせた球を投げた。 「きゃーーっ!!」 脚に雪玉を受けた彼女はよろけて倒れた。 訓練された艦娘だけあって受け身こそ取れたものの雪の上に尻餅をつく形になってしまった 「ああっ!?だ、大丈夫か!?」 「うぅ……大丈夫…です……」 俺は急いで駆け寄り、手を引っ張って起こした。 雪のおかげで怪我はないようだ。それにしてもお尻の跡が大きい。 「すまない、少し強すぎたか…」 「いえ…でも凄い球でしたね」 「中学時代に野球をやっていたからな。試合にはあまり出られなかったけどね。 この近くの野球場でやった試合に出た思い出が懐かしい」 「この九力公園…って色々なものがあるんですね」 「いや、違う。『力』という字じゃない。ここは九華公園で『華』という字がカタカナのカになってるだけだ。 一部の看板で華の字がカタカナなのは小学生が書いたからなのかもしれん。そこら辺のことはわからないが…… この公園は元々桑名城跡に作られたんだ。桑名城は扇城という別名があり、中国には九華扇というものがある。 扇城という別名と、九華がくはな、『くわな』と読めることが名前の由来なんだ」 「物知りですね」 「それほどでもないさ。それより久しぶりに体を動かしたから少し疲れたよ。近くに休憩所があったはずだ」 俺は彼女の手を引っ張り、休憩所へ向かった。 「あぁ…久々に体を動かしてちょっと疲れました。でも楽しかったです。 桑名名物の安永餅も運動した後に食べると美味しいです…」 「そういえば最近君に出撃どころか演習もさせてなかったな」 俺達は中京圏の中心から少し離れた所にある公園に来ていた。 もう少し名古屋に近い所にテーマパークがあったが、混雑しているだろうと思い、そこは避けたのだ。 公園には雪が残っていたので雪合戦をしたが、思いのほか楽しかった。 「ここは名古屋に比べたら規模は小さいかもしれないけど 田舎で育った俺にとって小さい頃はこの街が一番身近な都会だったさ。 夏とか、クリスマスとか、そういった時くらいしか来ることが出来なかったけど、 でもだからこそワクワクしたんだろうな。純粋だった子供の頃…その沢山の日が懐かしいよ」 「そのどの一つにも私がいないのにですか?」 「ッ……」 俺は返された言葉に少し驚いた。彼女も歌の歌詞を引用して喋ったりすることもあるのだろうか。 「他にもあるよ。君と出会った日とか、君と一緒に暮らした日々とか……どれもこれも懐かしい沢山の日だよ! 去年のクリスマスや正月と同じくらい記憶に残っているよ」 「去年の…クリスマス……」 「あ……そうか、去年の年末年始の事は君にはあまり詳しく言ってなかったな」 「今まで私から聞こうとはしませんでしたからね。仕方ありませんよ」 「じゃあ、ざっとだけど説明するよ」 俺は彼女に霧の艦隊との激しい戦いの事を話した。 ブルネイ勤務だった俺がイオナという霧の艦の少女と出会い、彼女の力を借りて日本に戻り、 霧の艦隊との戦いで新たに加わった霧の艦達と、高い練度の艦娘達との混合艦隊を組み、 霧の艦隊の『今回の』リーダーのコンゴウを撃退し日本を救ったという事を説明した。 「凄かったのですね……」 「ああ……でも一部の霧の艦達も共に戦ってくれた。そんな彼女達もまたイオナと同様心強い味方だった。 新たな深海棲艦が現れ、戦いも激しくなろうとしている今、彼女達がいてくれたらと思うと……」 「きっと彼女達にまた会えますよ。いつかきっと出会う僕らを乗せて地球が回っていますから……なんてね。 あなたの熱い思いが彼女達の心に残っているのなら、 潜水母艦の艦娘である私は潜水艦のイオナさんに眼差しを」 「……君も色々と物知りなんだな」 「そこまでではありませんよ。小さい頃のクリスマスの夜にテレビでやっていた映画の主題歌で思い出深いだけですし」 「俺もだ。その年のクリスマスは特に思い出深い。当時見ていたロボットアニメのプラモデルのメッキ版を買い、 すぐ壊してしまって接着剤でくっつけた事とか、色々あったからよく覚えているよ。 小さかったあの頃は本当にクリスマスが楽しみだった……」 「そうですね、私もそうでした……」 俺は昔を懐かしみながら言った。彼女もきっと昔を懐かしんでいるのだろう。 「それにしても平和ですね。まるで深海棲艦の事なんて忘れちゃいそう…」 「そう………だな………………」 「ん?どうしたんですか?」 彼女か俺に問い掛ける。俺は今までの事を思い出していた。 雪合戦で天使のようにはしゃぐ彼女の笑顔、街行く人々の活気、子供達の希望に満ち溢れた声…… 提督として人々を護っていた立場から離れて、色々なものを見てきて気付いた事がたくさんあった。 「いや…地上がこんなに平和なのは電や如月達が頑張っているからってのもあるかもしれないって思ったんだ。 俺が提督として戦っている時、きっと人々の気持ちは今の俺達の気持ちと一緒なのかもしれないって。 今までの事を思い返して俺は人々の幸せの為にちゃんと戦えていた。 だけど……君には何もしてやれなかったって気付いたんだ。 今まで提督として護るべき人々の為に頑張っていたけど、 俺が一番大事にしなきゃならない人には何もしてやれなかったって……」 昨日那智達に言われた事が心の中に残っていた。 地上の人々と最愛の人、その二つの間で俺の心はほんの僅かだが揺れ動いていた。 「ふふっ、心配しないでください。大丈夫ですよ。 初めて結ばれたあの時、私は誓いました。ずっとあなたの傍にいます…ってね」 「いいのか…」 「いいんです、あなたの力と安らぎになりたいから…… あなたがあなたしか出来ないことをしているのならいくらでも耐えられますし、どれだけでも支えていられます」 「……ありがとう…………」 俺の心は決まった。地上の人々と最愛の人、両方の為に戦う事を決意した。 「あ、でもあんまりほったらかしにしていたら、私は如月ちゃんとらぶらぶになっちゃうかもしれませんよ」 「君の心が離れるのは辛いな……」 彼女と如月は根底に『誰かの役に立ちたい』という想いが強くあるからなのか凄く仲が良い。 微妙に冗談に聞こえなくもないから困るのは俺の性格ゆえか。 「何事も一人で抱え込んじゃうといつか壊れちゃいますよ。 だからもっと私やみんなを信じてください。大丈夫、あなたは一人じゃありませんから」 彼女が支えてくれるなら何でも出来る気がする。青臭いけど、俺はそう心から思った。 「わあ、とても綺麗ですね」 俺達はなばなの里に来ていた。ウインターイルミネーションで有名な場所である。 「クリスマスだから…でしょうか。とても幻想的に感じます」 「クリスマスだからだろうな。これが明日以降ともなればまた違った感じ方をするだろうな」 「そう考えるとクリスマスって何か不思議な力があるのかもしれませんね。子供達もみんな喜びますし」 「ああ、みんな喜んでいたな。プレゼントに頭を悩ませた甲斐があったよ」 「それもそうですけど、昨日の花火大会で私が作った料理を子供達に喜んで食べてもらって、 それがとても幸せそうで……私、本当に嬉しかったんです。 そしてあなたが昔言ってくれた言葉が本当だったんだって思ったんです」 『大鯨は将来きっと…料理で人を幸せに出来るだろうな』 俺はかつて彼女に言った言葉を思い出し、彼女が俺の何気ない言葉を覚えてくれていたことを喜んだ。 気恥ずかしさから本当の気持ちを少しオブラートに包んだものだったけど、 オブラートに包んだ言葉、そして包み隠さない本当の気持ち……いいお嫁さんになれる…… 彼女はそのどちらも出来る人だ。俺はいい提督といい夫のどちらにもなれるのかはわからない。 「だから私、自分が出来るもう一つの事が見つかった気がして……」 「もう一つの事?」 「私、お料理で人を幸せにしたいんです。小さなお店でもいいから、この戦いが終わったら…」 「鳳翔の店で今…じゃなくてもいいから働けばいいじゃないか」 俺は危ないフラグを強引に叩き壊した。 「彼女だって、人を幸せにしているんだ。二人が力を合わせれば更に多くの人を幸せに出来るだろうし、 もっと多くの人が力を合わせればもっともっと多くの人を幸せに出来るはずだ」 「………お気遣い感謝します……」 彼女も俺の言葉の割り込みの意図に気付いたようだ。 こうしてみると彼女は俺色に染められつつあるのかもしれない。いや、もしかしたら漣色かもしれないけど。 「ま、描くビジョンを現実にする魔法があるのかどうかはわからないけど、 明日を信じ続けていれば砂漠だって楽園に変わるはずだ」 「そう信じたいですね」 「ところでさっき言おうとしていた夢って一体何なんだ?」 「ナ・イ・ショ 内緒です」 「そうか……じゃあ君の夢が何なのか知りたければ頑張らなきゃいけないな」 「私も夢を叶えたいですからね。一緒に精一杯頑張りましょう!」 「ああ!」 彼女の夢は何となくだけどわかる気がする。 いつか深海棲艦がこの地上から消えてなくなり平和が戻ったら 彼女はみんなに手料理をふるってみんなを笑顔にし、そして彼女も笑顔になるだろう。 平和になった後の事を漠然としか考えていなかった俺だったが、 彼女の夢を知った俺はその夢の手助けをし、絶える事のない笑顔の彼女とずっと生きていきたいと思った。 ―終―
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/147.html
前回の続き -第2章- 雷ちゃんのはじめての『初めて』- 翌日、電ちゃんは朝から遠征に出ていた。 僕はお昼頃に帰還する電ちゃんを迎えに、港でまっているのだった。 お昼近くになり、電ちゃんが帰還する時間が近づいてきた。 僕は一緒に食堂まで電ちゃんを送ってあげることにした。 電ちゃんは、僕の少し後ろをトテトテと歩いていた。その足音が、突然とまる。 振り返ると、ちょっと離れた位置に立ち止まった電ちゃんが。何か言いたそうな顔をしていた。 「どうしたの、電ちゃん?」 電ちゃんは、顔を赤くして俯くばかりだった。 やがて、顔を上げた電ちゃんがトテトテと数歩、僕に近づいてくる。 電ちゃんと僕との間は、ひっつかんばかりの距離しかない。 「えと、あのね、あのね……」 電ちゃんは、僕と目を合わせるため、ほとんど真上を見上げるように首を上げ、何か言いにくそうにしていた。 けど、その瞳は完全に『お願いモード』であった。 「何か頼みたいことがあるなら言ってごらん・電ちゃんのためならできる限りやるよ」 僕はそう言いながら、電ちゃんの目線まで腰を落とした。 電ちゃんが恥ずかしそうに僕に耳打ちする。 「えと、えと、おねえちゃんにもしてあげて欲しいのです……」 「え?」 僕は思わず大声を出しそうになった。 同じ小隊の那珂ちゃんや皐月ちゃんが振り向き、 「司令官とお話?それじゃ先に行ってるねー!」と行って食堂に向かって歩いていく。 「す、するって、何を!?」 「あのね、せ、せっくすぅ……」 電ちゃんは顔を真っ赤にしながら僕に話してくる。 「そ、そんなこと、簡単に言われても……」 「えと、えと、おねえちゃんもおにいちゃんのこと、きっと好きだと思うのです。 だから、電だけおにいちゃんにしてもらってるのって、不公平だと思うし、電もおねえちゃんと顔を合わせづらいのです」 電ちゃんはそこまで囁くとピョコンと跳ねて僕から遠のいた。 「そろそろ行かないと皆を待たせちゃうから。それじゃ、お願いするのです、おにいちゃん」 電ちゃんはそう言い残すと、呆然とする僕をよそに、トテトテと小走りで去って行った。 ううむ、どうしたものか。 『してあげて』なんて言われても、どうやって切っ掛けをつくればいいんだろう? まさか、無理矢理押し倒すわけにもいかないし・・・。 などと考えている内に執務室に着いた。 執務室のドアノブに手を掛けた時、中からくぐもった声が聞こえてきた。 僕の留守中に誰だろう・・・? 僕は用心して音を立てないように少し扉を開き、中の様子を伺ってみる。 「………っ!」 僕はまたもや声を出しかけた。 そこで、見たものは……。 「……あぁ……お兄ちゃん……私、カラダがすごく……あつくなってきちゃった」 僕の机の前の部分に寄りかかっている雷ちゃんが、 足を女の子座りにして頬を真っ赤に上気させながら、自分の胸元に両手を置いていた。 雷ちゃんの胸には、汗に濡れた体操服がペタリと張り付いている。 雷ちゃんは掃除のときはいつもこの格好なのだ。 雷ちゃん曰く、動きやすいし、汚れても大丈夫だかららしい。 雷ちゃんは自分の胸を、濡れた体操服の上からモニモニと揉みしだき始めた。 「……ぁ、はっ……お兄ちゃん……胸、感じちゃう……」 あろうことか、雷ちゃんは掃除が終わった後、オナニーに耽っていたのだ。 しかも、僕のことを呼びながら……。 「ほら……もぅ……乳首だって、こんなにとがっちゃって……」 汗で透けた体操服の上からでもはっきりと解るほど、雷ちゃんの乳首はしこりきっていた。 服の上からでも摘めそうなほど、勃起させている。 ほどなく、雷ちゃんは体操服の裾をたくし上げ、つるんとした発育途上の胸を露出させた。 雷ちゃんの白い肌はすっかり昂奮して桜色に染まっていた。 薄い乳房の上にちょこんとくっついた、イチゴ色をした二つの小さな蕾が何とも愛くるしい。 「……お兄ちゃん……私、胸、こんなにかたくなっちゃってる……」 直接自分の胸を揉みしだきながら、うっとりと雷ちゃんが呟いた。 「……あっ……は……ぁん……んっ……お兄ちゃん……私、こんなに感じちゃってるのっ……」 薄く張った乳房を掌で包んで揉み込んだり、乳首を弄ったりして、雷ちゃんはどんどん自分を昂ぶらせている。 「……ふぁ、あん……あはぁ……ぁん……あふ…ぅん」 胸をひとしきり愛撫すると、雷ちゃんは徐々に、両手を下腹部へと伸ばしていった。 スパッツの上から指がワレメに触れたとたん、雷ちゃんはビクッと身体を震わせながら、足を立てて左右に広げた。 雷ちゃんのスパッツに包まれたお饅頭が、僕の目の前の位置にきた。 「……にゃ、お兄ちゃん……ん、んん……ふぅん……ぅん」 雷ちゃんは両手の指をスパッツの上から強く股間に押し付け、キュッキュッと激しく擦りつけていた。 スパッツは微妙に湿気を帯び、雷ちゃんの股間にピッチリ貼りついて、秘唇の形を薄く浮き上がらせている。 その浮き上がったワレメの線に沿って、雷ちゃんは自分の指を滑らせていった。 「……ぁふ、だって私……んっ……くぅ……もぅ……たまんないっ!」 雷ちゃんはスパッツを膝上まで一気にずり下げた。 今度はショーツ越しに、ワレメに指を這わせていく。 雷ちゃんのジョーツは、いやらしいオツユで、もうベトベトになっていた。 「……お兄ちゃんが帰る前に……掃除しないと……」 雷ちゃんはオツユで濡れた絨毯を気にしているようだ、こんな時でも雷ちゃんらしいな、と僕は少し思った。 クチュヌチャと水音を立てながら、雷ちゃんは布地越しに自分花弁を捏ね回す。 秘裂からますます淫液が湧き出してきて、 純白にクマさんのプリントが入ったショーツに更に大きなシミを広げていった。 「……ふぅん……っん、くふ……ぅん……あふっ……」 雷ちゃんは毟り取るように、ショーツをも膝上まで降ろしていった。 雷ちゃんの無毛の秘所が曝け出される。ワレメから零れた愛蜜が、ずり降ろされたショーツの方へネットリ糸を引く。 雷ちゃんは、ワレメの萌しにある肉の莢を自分の指で剥き出しにして、生の木の芽を捏ね始めた。 「……あん……くふぅ……ん、んんっ!」 もう少し近くで見たい・・。 そう思った僕は、思わず身体を乗り出してしまった。 ・・・ゴツンッ! 薄めに開いてた扉に、頭をぶつけてしまう。 「ひにゃうっ!?」 雷ちゃんは、咄嗟に姿勢を直し、慌てて体操服の上を降ろし胸を隠した。 しかし、スパッツとショーツがずり下げられたままなので、三角地帯が丸見えだ。 まだ、恥毛のはえてないツルツルのデルタに刻まれたシンプルな亀裂も見えている。 「お、お兄ちゃん、どこから見てたの?」 僕は、返事に窮した。 「……お兄ちゃんとはいえ……恥ずかしすぎるわ……」 雷ちゃんは顔をこれでもかと言うほどに真っ赤にして、目に一杯涙を溜めながら俯いてしまっている。 僕は、呆然と突っ立ったままでいるしかなかった。 ところが、雷ちゃんが僕の身体の一部に気づいたとたん、表情が変わった。 その一点をじっと見つめている。そこは、つまり・・僕の股間だった。 「……お兄ちゃん、私のオナニー見てコーフンしたの?」 「……」 「したのね、お兄ちゃん?」 返答するまでもなく、僕のズボンは、もっこりテントを張っていた。 雷ちゃんのオナニーを覗いていたのがバレてうろたえたため、少し縮まったとはいえ、まだ八分勃ちにはなっている。 「だったら、私が……」 雷ちゃんは突っ立ったままの僕ににじり寄ってきた。 好奇心半分、母性半分と言ったとこだろうか。 立っている僕の正面に膝立ちする格好で、雷ちゃんは僕を見上げてくる。 雷ちゃんは、僕のベルトのバックルに両手を伸ばしてきた。 カチャカチャと慣れない手つきで、バックルを外していく。 僕は咄嗟に扉を閉め、後ろ手に鍵を掛けた。 バックルが外れると、雷ちゃんは躊躇いながらも、チャックを引き下げてきた。 チャックが開ききると、緩んだズボンが重力に引かれてストンと床に落ちる。 僕の下半身は、トランクスだけになった。 トランクスがこんもりと盛り上がり、巨大なピラミッドを形成している。 「お兄ちゃんの、こんなに大きくなっている……。 ね、お兄ちゃん……さわっても、いいわよね?」 「あ、うん。雷ちゃんの好きにしていいよ」 雷ちゃんがどんな風に弄ってくれるのかな……って想像するだけで、もうドキドキものだった。 「さわるわね、お兄ちゃん」 雷ちゃんの細くてしなやかな指が、トランクスの上から僕の隆起に触れた。 雷ちゃんに触られたとたん、八分勃ちだった僕の肉茎は、 トランクスを引き裂きかねないほどの勢いでムックリと勃起する。 「……すごーい、指が触れただけなのに、こんなに大きくなるなんて……何だか不思議……。 ね、お兄ちゃん、これもう、脱がしちゃっていいよね?」 雷ちゃんは、僕のトランクスを一気に引き降ろした。 張りつめて膨張した肉茎が、雷ちゃんの目の前にババンッと跳ねるように飛び出す。 「きゃうんっ」 小さな悲鳴を上げ、天井に向かって威風堂々そそり勃つ僕の怒張を、雷ちゃんは食い入るように見つめている。 充血して赤黒く照り光る亀頭、血管の浮き出た茎の表面、剛毛にけぶる肉袋。 見た目には結構グロテスクだが、女の子はどう感じるのだろうか。 「なんだか……とってもかわいいわ、お兄ちゃん」 「かわいい?」 「だって、お兄ちゃんのだもの。太くて長くて……すごく愛おしいって感じがするの」 雷ちゃんのローズピンクの舌が、いきなりカリ首の敏感な部分に触れてきた。 「あふ、お兄ちゃんの……ん……れろれろ……」 「ちょ、ちょっと、雷ちゃん……」 「男の人って、こうされると気持ちいいんでしょ?」 「うん…そうだけど。どこで覚えたんだい?」 「お兄ちゃんの机の中にあった本に書いてあったの」 僕は、ばれていたのかという衝撃を受けながら、ジト目で見てくる雷ちゃんに目をやる。 僕が返答に困ってると、再び雷ちゃんが僕の肉茎を咥えこんできた。 たちまち、僕の身体に快感が電流のように突き抜け、怒張がビクッと震える。 「やぁん。ちょっと舐めただけなのに、お兄ちゃんのコレ、ビクンビクンするぅ……」 「雷ちゃんがいきなり、僕の一番感じるところを舐めたからだよ」 「え?今舐めたところが、お兄ちゃんのいちばん気持ちいいところなの? それじゃあ、そこをペロペロって舐めればいい?」 「ううん、感じるところはそこだけじゃないからね、雷ちゃん。 やっぱりオチンチンとか袋とか、全体をまんべんなく気持ちよくして欲しいな」 「じゃあ……こんな感じかしら?」 カリ首に触れていた雷ちゃんの舌先が、裏筋に沿ってツツツッと根元の方へ降りていった。 雷ちゃんの唇が僕の肉竿にペトッと貼りついて、フルート奏者のように表面を吸引してくる。 まだ、ぎこちなさの残るフェラチオだったが、それが一層、僕の昂奮に拍車を掛けた。 ・・ちゅむん……んっぷ……きゅむん、ちゅぱ……ちゅく……ぷはっ! ・・くちゅ……くちょ……くちゅ、くちゅ……ちゅっぷ! 肉茎がしゃぶられる音に混じって、違う音が聞こえてきた。 見ると、雷ちゃんが僕のモノを咥えながら、自分で自分を慰めている。 僕の快楽波動が下腹部に集まってきた。限界が近い。このままでは、雷ちゃんの口の中に発射してしまいそうだ。 その時、ふと、目を閉じて肉茎をしゃぶっていた雷ちゃんの瞼が開いた。上目遣いに僕を見つめてくる。 僕と雷ちゃんの視線が絡み合った。僕は、そのまま視線を雷ちゃんの下腹部へ落とす。 フェラチオしながら自慰をしていたことを知られた雷ちゃんは、 少しばつが悪そうな表情をして、一旦僕の肉茎から口を離した。 「お兄ちゃん……セックスしましょう」 電ちゃんから『おねえちゃんもお兄ちゃんのこと好きだから』と聞いていたとはいえ、 あからさまにそう言われて、僕はどぎまぎするばかりだった。 「で、でもね、こういうことは……」 「だって、お兄ちゃん、昨日は電と……」 見られていたのか・・。 雷ちゃんの瞳から、ボロボロッと涙が零れた。 いつもはしっかり屋さんなのに、意外と泣き虫なんだ・・。 僕は雷ちゃんを抱き上げ、ベッドに横たわらせた。 膝まで下げられたスパッツとショーツを脱がしてあげ、優しく覆いかぶさる。 雷ちゃんの髪の毛を撫でて上げ、僕はくちづけた。唇同士が触れ合う程度のごく軽いくちづけだ。 雷ちゃんは、嬉しそうにはにかんだ。 僕は、雷ちゃんの体操服の上を捲り上げた。 膨らみ始めたばかりの胸の薄い脂肪を集めるようにして揉み上げる。 そして、ツンと尖ったイチゴの蕾を口に含んだ。 「あん、あぁぁぁーっ!」 蕾を舌先で転がしたり、軽く噛んだりする度に、雷ちゃんは甘い声を上げた。 僕は片手で一方の胸を責めながら、もう一方の胸を口で責める。 雷ちゃんは、今まで自分で慰めていて我慢の限界に達していたのか、 僕の太股を雷ちゃん自身の両の太股で挟み込んできた。 僕は太股に、ヌチャっとしたものを感じた。それは、雷ちゃんの股間からしとどに溢れる淫蜜だった。 雷ちゃんは、僕の太股に股間を押し付け、前後に動かし始めた。 枕を股に挟んで、オナニーをする女の子も結構いるって聞いたことあるけど、雷ちゃんもそうなんだろうか・・? 僕はそんなことを考えながらも、雷ちゃんの胸への責めを激しくしていった。 責めが激しくなればなるほど、雷ちゃんの股間を揺さぶるスピードが上がっていく。 「あぁぁぁーっ!いいぃぃぃぃぃーっ!」 雷ちゃんは一層高い声を上げるとともに、僕の太股をギュッと締め付けた。 その数瞬後に、ガクッと力が抜ける。どうやら、軽くイッタようだ。 僕は、雷ちゃんの体操服の上を脱がそうとした。 雷ちゃんは、ばんざいの体制を取って、脱がすのに協力してくれる。これで、雷ちゃんは丸裸になった。 雷ちゃんは、まだ呼吸を荒げている。僕は雷ちゃんの幼い身体をじっくり見つめた。 すると、雷ちゃんがこう言った。 「私だけ、裸なんてずるいわ。早くお兄ちゃんも服を脱いで……」 僕は、雷ちゃんに言われた通り、纏っている物を全部脱いだ。これで、二人を覆い隠すものは何も無い。 裸の僕は、裸のままの雷ちゃんの隣に横たわった。 雷ちゃんの呼吸が整ってきた。僕は、雷ちゃんに覆いかぶさるようにし、くちづけた。 今度は、貪るようなくちづけだ。僕は、舌を差込み、雷ちゃんの舌に絡ませようとする。 最初は、どうしていいのか解らなかったようだが、その内、雷ちゃんのほうからも、おずおずと舌を絡ませてきた。 僕は、雷ちゃんの口腔粘膜を蹂躙しながら、足を大きく開かせた。 自分のペニスの先走り液を肉竿全体に馴染ませ、先端を雷ちゃんの秘孔に宛がう。 雷ちゃんの秘蜜をペニスの先端に馴染ませるようにした後、僕はゆっくりと腰を進めた。 「痛いかい?」 「う、ううん。そんなに……」 そう言いながらも、雷ちゃんの額には汗が滲んでいた。 僕は、そのままグイグイ腰を推し進めた。メリメリッと肉が裂けるような感触がする。 ブチブチッと粘膜が破れる音が聞こえたような気がした。 「かっ……は……いったーい!」 僕は腰を進めるに連れ、雷ちゃんがベッドをずり上がっていった。 ずり上がれないように、雷ちゃんの両肩を抑えて腰を一気に最奥まで打ち込む。 「いたいっ!いたいっ!いたいっ!いたいっ!いたいっ!いたいよぉーっ!」 いつもはしっかり屋さんの雷ちゃんが、我を忘れて泣き叫ぶ。 雷ちゃんはそれでもずり上がろうとし、ベッドの柵に頭が当たってしまった。もうこれ以上、逃げられない。 「いたいよぉーっ!ぬいてっ!ぬいてっ!ぬいてっ!ぬいてよぉーっ!お兄ちゃーんっ!」 雷ちゃんは本当にパニック状態だった。僕は、繋がった状態のままじっとしていた。 そのまま、雷ちゃんの髪を撫でながら、おでこやほっぺや鼻先に軽いキスを続けていく。 やがて、痛みがやわらいだのか、雷ちゃんが普段の落ち着きを取り戻してきた。 「ごめんね、雷ちゃん。嫌ならこのまま抜くけど?」 「ううん、私こそ、ごめんなさい。お兄ちゃん、動いていいよ……」 雷ちゃんに促されて、僕はストロークを始めた。でも、動くたびに雷ちゃんは顔を歪める。 しかし、幸いなことに今までの昂ぶりと、雷ちゃんの窮屈な処女壷の締め付けが手伝って、 僕の射精衝動は数回も動かない内に、限界を越えた。 「い、いくよ、雷ちゃん」 「き、きて、きてっ、お兄ちゃんっ!」 僕の灼熱の白濁液が、雷ちゃんの処女壷に迸った。 雷ちゃんの身体を綺麗にしてあげてから、僕達は食堂に向かった。 ふと、外を見てみると、辺りはもう夕暮れ時だった。 その夜は、何事も無かったように、夕食を食べ、三人で暫く話をした後に床に着いた。 電ちゃんの時はある程度快感を与えられたけど、雷ちゃんの時は痛がらせただけだったなぁ。 雷ちゃんに嫌われてなきゃいいんだけど・・。 そんなことを思っている内に、僕は眠りに落ちた。 「……わよっいなず……」 「はい……なの……」 「「と・・・・っ!」なのですっ!」 ・・バフッ!バフッ! 「ゴフッ!」 翌朝、いきなりのダブル・フライング・ボディ・アタックで僕は叩き起こされた。 雷ちゃんと電ちゃんだった。 「お兄ちゃん、もう朝よっ!起きなさーいっ!」 「おねぼうさんはメッ!なのです!」 僕は痛いけど朝から幸せ一杯だ、と思いながら食堂に向かうのだった。 ー2章End・
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/598.html
326 名前:クズ ◆MUB36kYJUE[] 投稿日:2014/12/03(水) 14 01 52 ID NtMtd7kw [1/26] 以前元カノ祥鳳が今カノ大鳳から提督を略奪する話を書いた者です。 加賀とあきつ丸で修羅場する話を書いたので投下します。 長編未完(あともう一話だけ続く予定) 軽いSM表現 提督がクズ の要素を含むので苦手な方はスルーをお願いします 1 難航するミッドウェーの攻略に海軍兵学校時代の友人Kの助言がもたらされたのは、作戦開始より二週間が過ぎた頃であった。慣れ ぬ二正面作戦、入渠の管理や戦略立てなど忙殺の極みにあった当時、提督のやつれた表情はMI攻略にあたった艦娘たちを一種の無力 感に苛ませるものであった。二重に増した気遣わしさを抱える彼に、振るわぬ戦果の報告をしなければならないという口惜しさ。また すこぶる順調な様子のアリューシャン攻略組を目にしたときの自身らの惨めさ。こと一航戦の二人は作戦開始以前にはトラウマの払拭 を目指さんと意気込んでいたために、余計に屈辱を感じているらしかった。 不幸なことには、この鎮守府の提督は普段より内心の底知れぬ雰囲気を纏っていたこと。即ち幻滅されやしないかと彼女らが不安に思 ったとして、言葉で否定したところでその杞憂を完全に払拭させることができなかったということがある。優しげな微笑も、いたわる 視線も、信頼という対人関係上の保険の心理を持っている故にむしろ辛く思われるのだった。それは薬指に契りの証を持つ加賀につい ても、例外ではなかった。 この負のスパイラルに気が付きながら、しかしどう打開もできず、ただ心労を抱え込むしかなかったその時分。先述の呉の友人より 以下の電報が舞い込んだ。 『アキツマルキカンニスベシコウロゲンテイサレル』 つと差し伸べられた救いの手。あまりに都合の良すぎる情報にまず猜疑を抱いた提督は、だが従来の戦略に手詰まりを感じているのも 事実だった。すがりつく事のできそうなものならば藁であろうが糸であろうが手繰る気になっていた彼は、ものの試しといった心緒に 彼女を執務室へと出頭させた。 果たして連合艦隊旗艦に任命されたあきつ丸の反応は、端から見ているだけでも気の毒に思われるものであった。それを伝えたとき には、ふとしたら失禁するのではないかというほど体躯を震わせる。烈風の装備を命じただけで卒倒せんばかりに唇をわなつかせ、い よいよ出撃前最後の号令を下す段ともなれば不健康な顔色を更に蒼白に染めていた。口数も少なく、自身の足先を見つめているばかり である。 執務室に整然と並んだ艦娘。数多の戦地を渡り歩いたという貫禄の漂う中に、やはり彼女の姿は異質だった。提督は瞳のせわしなく 動く彼女へ仔細にはにかんで見せ、それから労わる声音に話しかけた。 「まぁ眉唾ものの情報だからそんなに気張らなくてもいい。ただ艦戦飛ばして艦爆を落とさせないようにするだけだ。簡単だろ?」 「はい! 必ずやこのあきつ丸、期待に応えて見せるのであります!」 異常なほど燦爛とした眼に答える彼女であったが、その会話自体、微妙に噛み合っていないということにも気が付かない様子。苦笑 しつついつもの様に「無理はしてくれるなよ」と釘を刺せば、皆一斉に敬礼して、それぞれ部屋を後にする。 最後まで居残ったのは加賀であった。彼女は可憐に朱色を帯びているはずの下唇を真白くなるまでぎゅっと噛み締め、拳を震わし立 ち尽くしていた。何かを言いたげな視線を寄こすも一向に口を開こうとはせず、その睨むような目つきには混濁した感情の渦が見える ようである。 提督が知覚した心理の機微は、そのほとんどが正鵠を射たものである。陸軍の揚陸艦に旗艦の座を盗られるという屈辱と、それを是 とした提督への幻滅。かといって文句を言うには自身の立場も磐石でなく、一層それが口惜しく思われるのだろう。 彼に抱いた幻滅の情は、また彼女自身にもその刃先の向けられているものであった。苦戦はすれども、今までこのような形に役職を 解かれたことはない。 言うも言わぬも辛く、ただ目線で訴えかけるしかないのである。そういった悲哀を目の当たりにし、提督は心緒の梢に厭に生々しく 劣情を感じた。それは唾を嚥下した音が彼女に聞こえはしなかったかと、気を廻らすほどのものであった。 「あきつ丸は実戦慣れしていない。きちんと守ってやってくれな」 逡巡の後にそう口走ったのは、何も艦娘の間に軋轢の生じぬよう気を回したとか、そういった殊勝な心がけによるものではなかった。 むしろ彼女の無言の訴えを無視することによって、より悲壮を煽ろうというのだった。果たして加賀は目を見開くと、瞳を潤まし視線 を逸らす。ゆるゆると持ち上げられた左手が着物の襟をぎゅっと握り、その間呼吸も止まっていたらしい。大仰に一息いれてから、 「わかりました」 短く言った。平静を無理に装った為に、幾らか低すぎる声音となった。 ここまで健気な反応をされては、提督も吊り上がる頬を押さえ込む事ができなかった。思わず口元を手で覆ってしまい、調息にも労 をとった。その仕草を認めた加賀は途端に恨めしげな視線を寄こし、呻くように呪詛を吐く。 「そういう底意地の悪いところは嫌いだわ」 荒い語気、突き放すような言い方に滾る怒りの一端が見える。想像以上に怒らせてしまったらしいことを自覚し、提督は慌てて 「すまない」 微笑し答えた。 加賀は依然としてムスッと顔を背けるばかりである。近づき体躯を抱き寄せ、指で軽く髪を梳いた。 サイドテールの結ばれた根元が、頤の先に触れた。服飾越しの体温はいつもより熱く、どこかそこに切ない愛おしさが感ぜられた。 身をよじる様な僅かな抵抗にあいながらも無視して抱擁を続けていれば、しばらくの後むしろ自ずから背に手を回す加賀である。安 堵の吐息が鎖骨の下あたりを焼くように撫ぜ、提督はそのこそばゆさに背筋を鳥肌立たせた。 「結果が出せなくたって解体はしないから、安心しろ」 またからかう声音に言えば、肩甲骨の窪みあたりを叩かれる。遅れて鼻を啜ったらしい水音も耳朶にできて、途端に湧き出す嗜虐の 愉悦を享楽せずにはいられない。 「泣いてるのか?」 「泣いてません」 「見せてみろ」 肩を押し一尺ほど距離を開けて見ると、加賀は慌てて顔を反らす。顎に指を這わせ無理やりにこちらを向けさせてみれば、鋭く睨み つける眼の端から雫の滑り落ちるのが見えた。 含羞の屈辱に歪んだその表情が、彼の心を激しく打つ。滾る悦の奔流が、暗い欲望を掻き立たせた。彼女の精神的な弱点を嬲り遂に は落涙させるにまで至ったという征服感が、痛めつけようと思えばまだ幾らでも責め苛ませることのできるという優越感が、兎角気持 ちよくてならなかったのだ。 自身の欲情をぶつけるようにして、提督は彼女に口付けた。 突然の事に目を白黒させる加賀は、ぬたつく舌の無遠慮に侵入してくるのをただただ驚懼の心地に感じていた。疵だらけにされた心 を容赦なく締め上げてくるような、暴力的なキスである。 辛く切ない感覚に、彼女は彼の腕の中で身悶えた。割られた唇の間から漏れ出す声は、悲鳴なのか嬌声なのかもわからない悲痛さ。 だがそれでも未だ両手が背に這わされたままであるのは、つまり彼女も悦を感じているわけなのである。夜伽のたびに自身の性的趣向 をありありと剥き出しにされ、辱められる。その指教が彼女をすっかり被虐性愛の快味に順応させたのだった。 現に、貪婪にもその先を欲しているのであろう。脚は艶かしく摺り寄せられ、背の窪みを指が這い回った。意識的にしろ無意識的に しろ、少なくとも身体の方は濫りがましい欲求を滾らせているという、その証左に他ならない仕草である。 出撃号令を下してから経過してしまった時間については、もうすっかり意識の埒外に追いやられていることだった。故に執務室の戸 の開けられた音に、両者まず何故という疑問を浮かべたほどである。 「提督殿! 加賀殿が中々下に降りてこないのです、が……」 勢いよく戸を開けたあきつ丸の、頬のみるみる朱色に染まってゆくのを視界の端に捉えて、しかし提督は接吻を止めはしなかった。 無論加賀の方は水揚げされた魚の如くに激しく胸の内で暴れるが、体勢が体勢である故、顔を背ける事さえかなわない様子。執務室に はその後たっぷり十秒ほども、水音とくぐもった嬌声とが鳴り続けた。 口を離すと粘性の橋がつぅと伸び、自重で崩れてゆくのは淫らである。 「ん? あぁ、あきつ丸か。すまん、ちょっとこちらも取り込んでいてね」 唇を拭いわざとらしい声音に言いのけると、次の瞬間頬には視界の一瞬暗くなるほどの衝撃と痛みが馳騁していた。平手の一発くらい は覚悟の上、それで羞恥に苛まれる彼女を見ることができるのだから彼にとっては安い買い物なのである。 加賀はビンタを喰らわせた後、一目散に執務室を去っていった。部屋には悦の充溢した提督と羞恥と驚愕に目を見開くあきつ丸だけ が取り残され、まるで時の止まったかのような沈黙が何十秒と足元を流れ去った。 「と、時と場所とを考えていただきたい!」 帽子を深く被りなおしようやく言い叫んだ彼女は、焦ったような早足に加賀を追う。提督はとうとう堪えきれなくなると、ふとした ら床に転げまわりそうなほどに身もだえして、笑い続けるのだった。 2 午前の雑務は滞りなく消化され、ふと眺めた窓越しの海に彼女らの身を案じた時分。机上に散乱した書類を纏めつつ臨時秘書の那智 と会話をしていると、内線のけたたましいベルが鳴った。途切れた話の奇妙な間の中電飾の光る盤面を見れば、どうやら無線室からの 連絡らしかった。 「どうかしたか」 受話器を取り倦怠の滲んだ声音に言うと、その言葉の後尾に被る勢いをもって焦燥の声が飛び込んでくる。 今日当番の無線技師妖精は、普段は寡黙に草の茎を口にくわえているような輩なのであった。故にその早口から事態の切迫している らしいことだけは把握できて、彼は途端に背筋を張った。 「緊急暗号通信です!」 「誰から」 「呼出符号、ライチョウ」 「……すぐ向かう。しばし待て」 仔細顔に勢いよく立ち上がった提督を見て、那智は怪訝な表情をとった。 「どうした、司令」 「すまんがこの部屋の留守を頼む。なるべく早く戻るよ」 「……了解した」 発せられる雰囲気に気圧されて何も状況を聞き出せず、小走りに戸の向こうに消える彼を見送るしかない。長い付き合い、これだけ 語気の逼迫した彼というのを今までに目にした事は無かった。那智は一人心内に漫然とした不安を横たえらせ、心細く床を蹴った。 広い室内にぽつねんと佇立して、自身の心拍の上がった理由を胸の内に探ってみれば、そういえば今第一艦隊のいないということを 思い出す。だからこそ自身が秘書をしていたわけであるのだが、そういった状況の認識が遅れてやってくるほどに、焦燥が思惟を苛ん でいた。果たしてこのえも言われぬ不安感は、杞憂と一蹴するには真に迫るものがある。そして提督とて胸に抱く感情は同じ。 無線室に入りまず彼の目に付いたのは、肩を振るわせながら瞳を眼窩の内に右往左往させる妖精の立ち姿であった。彼は提督の姿を 視界に入れるなり幾ばくかの安堵を顔色に滲ませ、一枚の感熱紙を差し出した。 紙面の文字を追う提督は自身の予感が的中していたことを悟ると、嘆息をつく暇もなくその妖精に指示を出す。 「繋げるか」 「はい」 「やってくれ」 「……繋ぎました。どうぞ」 訓練では飽きるほどに繰り返した手順である。だがいざそれを実践する機会を目の前にすると、自身の知識に猜疑を持つような心地 となるのだった。一息の間の後、提督は意を決して口を開いた。 「ライチョウ。こちらオシノヤドリギ。無線チェック。オクレ」 「オシノヤドリギ。こちらライチョウ。感明よし。オクレ」 「オシノヤドリギからライチョウ。暗号通信を受領した。状況の説明を求む。オクレ」 「ライチョウからオシノヤドリギ。警邏任務中、貴施設へ進行中の敵艦隊を認む。艦隊規模、およそ三十。空母棲姫、戦艦棲姫を確 認。現在地北緯三十一度四十五分十二秒東経百二十八度四十六分五十八秒。女島より南東におよそ五十キロ。敵艦は定速十六ノットで 北東に航行中。およそ六時間後に貴施設へ到達。当機は監視を継続。どうぞ」 「オシノヤドリギからライチョウ。把握した。何か進展あり次第連絡されたし。オワリ」 無線のぶちりと途切れる不快音を耳朶にしながら、提督は愕然とした顔つきにヘッドセットを置いた。慢心と言えばそうである。よ りにもよって主力のいない今、まさかこの鎮守府自体を襲撃されるとは思ってもみなかったのだった。 反省など後々存分にやればいい。彼は心内に自身をそう戒めると、今やるべき事を脳内に次々列挙していった。 「何かまた通信があったら呼んでくれ」 一瞥も向けずに言い放ち、返事を聞くより先に部屋を出る。 一級、二級の艦船がいないとなれば、真正面から殴りあった所で勝てるわけもない。兎角増援を頼むことにし、そうなれば人脈のあ る自身の立場は有利だった。 執務室の戸を開けると、腕組みし苛立たしげに指を反復させていた那智が、食って掛かるようにして口を開いた。 「敵か!」 「うん。三十隻くらいだって。規模が大きすぎるから、ちょっと協力を請わなくちゃならんね」 机を回り込むのも億劫に思えて、提督は向かい側から電話の受話器を取った。打った番号は呉鎮守府、それも私用のプライベートナ ンバー、友人Kのみを呼び出す秘密のものである。 「もしもし」 随分長いコールの後、ざらつき低い熊のような声質の応答がある。 「Kか? 俺だ」 「知っている。何だ」 「手短に言うがな、うちの鎮守府に敵が迫ってるんだがこちとらALとMIに主力を投入したばかりなんだ。いちいち上を通すのも 面倒だ。この俺に免じて協力してくれ」 「……状況はわかったが、残念ながら無理な相談だな」 事情を聞き返すこともなく一蹴されるという展開は、彼にとって思ってもみなかったものであった。 「貴様、理由を言えよ」 意識せず上ったこの言葉には、大いに怒気が含まれてあって、彼は言った側から自省の心地となってしまう。一語謝るより先に、そ の心中を察したらしい。すまなさそうな調子に早口の弁解があった。 「どうやらお前は知らないらしいが、今関東の沖合で深海棲艦が大挙して進行中だ。奴さん珍しく揚陸艇まで引っさげて九十九里と 相模から首都を狙う腹づもりでね。当然もうこっちにも収集の命令がかかっているわけさ」 「このご時勢にダウンフォールか。奴らなりのMIの報復ってことなんだろうな。……だがなんで俺にはそれが知らされていないん だ」 「俺も佐世保に収集が掛かっていないってことは聞いてて疑問に思ってたんだが……お前の話を聞いて納得したよ。そっちに向かっ てる深海棲艦には揚陸艇は含まれてないんだろ?」 「ああ」 「陽動だよ。こっちの敵は上陸を目的としているが、そっちの敵はせいぜいお宅のハウスを壊しに行っている程度なのさ」 「つまり、加勢は見込めんか」 「そう気を落とすな。勝手なこと言うようだが、お前ならやれるさ。気張れよ」 「……あぁ。……悪いな」 受話器を置き、それからしばらく顔をあげることもできなかった。まずなにより、何もかも後回しに状況さえ知らせてくれない大本 営、その怠慢っぷりに腹が立った。いや、いちいち知らせる時間さえも惜しい状況なのやもしれないが、だとしても薄情に過ぎるでは ないか。胸の内に呟く呪詛は、そのまま腹底に不愉快として沈殿してゆくようだった。 机を蹴っ飛ばしたい衝動に駆られるも艦娘のいる手前流石に自重すべきで、また外面に気を遣う自身のそういった心理の動きが忌々 しさを増大させた。 提督の中に高まって行く内圧を察したか、那智は気遣わしげに声をかけた。 「断られたか」 「あぁ。陽動だからって」 「案ずるな。たかだかその程度の艦隊、私たちの敵ではない。出撃させろ」 自身はまだしも、他の艦娘には荷が勝ちすぎるということを那智は自覚していたのだった。しかし、かと言って何もしないわけには いかない。今は無き帝国での経験が記憶に継がれてある以上、たとい練度の低い艦とてそういった割り切りはできるはずだ。 彼女のこの言外の意を、提督は鮮明に知覚していた。蠢いていた怒りは砂地へ水が立ち消えになるように無くなり、後には慟哭した いほどの寂寞が心の根にわだかまった。現世において玉砕の決心をさせてしまったという不甲斐なさ。それが胸をきつく締め付け、彼 女への反抗心にとって変わってゆく。 「貴様、いつまでもそう俯いてもいられないだろう。それとも白旗でも掲げてみるか?」 「名案だけど、敵が国際法を知らないってのは問題だな。……まだ出撃はしない。全艦娘は戦闘準備を整え、待機」 「おい!」 叱咤の声に怯みもせず、彼は那智を見据えた。 「まだ手はある」 非戦闘艦、妖精のいなくなった鎮守府というのは存外に寂しいものであった。工廠に煩わしい工作機械の音も途絶え、食堂に給仕妖 精の喧騒も無くなり、日の傾きかけている時分とはいえ廓寥の心内甚だ愁いに染まりすぎている。 本棟屋上に座しているは、明石、那智、提督の三人。内、明石は自身の工具をもってして、手元に電気コードの束を弄っていた。 「できました」 げっそりと精気の抜けた声に宣言した明石は、両腕を上げ、その勢いのままコンクリの床に仰臥した。屋上の淵に沿うように全部で 五つ、探照灯が並んでおり、それらは一様に首をもたげて地平線を睨みつけていた。 「ありがとう。もう避難してもいいぞ」 「嫌味ったらしい言い方ですね!」 頬を膨らませる彼女には微笑をもってして応えた。腕時計を確認すると時刻は一六○○を回ったところ。予定を少々押してはいるが、 かといって焦燥に気分を害するほど追いつめられているわけでもなし。焦眉の急と言ってもいいほどの状況にありながら、この鷹揚と した空気の流れていることは不思議に思えた。 「車で送るよ。……先に号令かけなきゃだから、ちょっと正門で待ってて」 差し出された手にしがみつき上体を引き上げ、明石は一つ首肯した。 普段なら最終的な出撃の命令は執務室にて行われるが、今回は総力戦。主力を除いたとて、とても艦娘全員をあの部屋に押し込むこ となどできるわけもなく、一同はひとまず食堂に集められていたのだった。 那智と提督がその部屋に入ると、姦しい雑談の声は一瞬にして鎮まった。まるで同時にスイッチを切ったかのような、奇妙な連帯感 が滑稽に思えた提督だったが、艦娘たちには笑顔を作る余裕も無いらしく皆一様、黙して視線を向けてくるばかりである。 その瞳に怯えの色を湛えている者も少なくはない。遠征が主で戦闘任務は数えるほどしかこなしていない駆逐、軽巡。あるいは今回 が初めての実戦であるという者さえいるのだろう。何れは経験する事といえ戦闘処女の初めてが自身らの基地の防衛となれば、なるほ どその重圧、忖度することさえ億劫になる。 「出撃の時間だ」 この宣言は変に間が開いたために、浮ついた印象のある言葉となった。提督がそのことを一人心内に恥入っている間にも、艦娘達は 一斉に立ち上がり凛々しく敬礼して見せた。 姿勢に気後れも憂いも怯懦もない。外面には一縷の弱みも見せないという純真の立ち振る舞いが、提督の心を鬱々しくさせた。 何か言えよと那智に視線で促される。喉の中に明るい声音を作ってから、彼は口を開いた。 「情報によると敵に揚陸艇は含まれていないとのことだった。つまり敵方の目的は上陸になく、この鎮守府の破壊にあるということ だ。……出撃を命ずる立場にありながらこんなこと言うのもどうかとは思うんだがな。建物なんてのは壊されたらまた直せばいいだけ の話なんだ。いい加減タイル張りのトイレなんて不気味だし、執務室は熱がこもって馬鹿みたいに熱いし、そのせいで冷房代もかさむ し。まぁリフォームの良い機会を貰ったと考えれば、敵にやられたところで腹も立たん。 だが君たちは違う。替わりはいない。沈まれちゃ困るし悲しい。だからこっちのことは気にせず、無理だけはしてくれるな。怒らな いから危なくなったらさっさと逃げろ。兎角、自身らの身命を第一に考えるように。 では、各員に最大の成果を期待します」 答礼すると、艦娘は一斉に駆けていった。 中々に良いことを言ったんじゃないかと手前味噌に自身の言を振り返っていると、那智に眇められた眼を向けられる。わざとらしく 小首を傾げて見せれば、大仰な嘆息の後わき腹をずいと小突かれた。 「なんだ貴様、さっきのあれは」 「何って言われてもさ、何ってなんだよ」 「もっと戦意を鼓舞するようなことを言えなかったのかという話だ」 「がらじゃないし。明石送ってくるよ」 ポケットから車のキーを取り出し見せびらかすように掲げ、提督は踵を返すのだった。 武闘派の彼女からすれば小言を言いたくなるというのも分かるし、故にこれは不毛な議論となるのだった。価値観の相違に解決の手 段などあり得ない。 無能な自身が、果たして何を言えるというのか。もう幾度目かも分からない自嘲の呟きは、口の中に停滞した。 「貴様も、そのまま避難していればどうだ」 戸を抜けようかというタイミングに、遅れてそう投げかけられた。身を案じての言葉なのか弱腰な事への皮肉なのか、仔細に過ぎて 判断に迷う声音である。 「それこそ士気に関わるだろうよ」 振り返らずに返事をしたのは、その答えを知りたくなかったからだった。 鎮守府の敷地の外れ、普段は誰も寄りつかない工廠の裏側。ただ白線によって区切られただけに見えるその駐車場には、まるで自生 しているかのごとく二台のプリウスが止められてあった。ネイビー色に染められた車体は、即ちこれが海軍の所有するものであると無言 の内に物語る。 中に入りエンジンをかける。尻から伝わる振動やハンドルカバーの滑らかさ、各ペダルの抵抗。随分久しい感触に一抹の不安を抱い た提督は、しかし遅れて認知された事柄によって途端胸を撫で下ろした。佐世保の街に避難勧告が発令され、もう随分経ったのだ。今、 道路を走る乗用車などありはしないし、故に幾ら未熟な運転をしようがそうそう事故も起きないはずだ。 正門へ向かうと、警備室の壁に背を預けた明石の姿が視界に入った。近くに止めると、彼女は後ろを回り込み助手席の戸を開けた。 「待ったかな。ごめん」 視線を計器盤脇の時計に流しつつ言うと、 「ほんとですよ! 人使いが荒いんだから……」 むくれた表情に返答される。 提督の失敗だったのは、そこで会話を押し広げる事もできず無言のまま車を発進させたことだった。それは別段彼女の発言に気分を 害されたというわけでもなく、ただ言葉から連想された思考の萌芽が口を噤ませるほどの勢いを持って脳内を馳騁したのだった。 不安げな目つきに顔色を伺う彼女に気付き、提督はようやく遅れて口を開いた。 「なんだか提督職に就く奴ってのは、あくどい卑劣漢なんじゃないかと思うんだ」 この突拍子もないように思える発言に、しかし明石は自身の良心が苛まれる、じくじくとした疼痛を覚えていた。先の言葉が提督の 心緒に波紋を広げたらしい事。例えば陶器を割ってしまうだとか大事な用事のある日に寝坊をしてしまうだとか。後にはどうすること もできない類の不安と焦燥に、胸の内を焼かれる心地だった。 その彼女の心的状況を察せられぬまま、尚も彼は続けた。 「今日、思い知った。結局現代の人類ってのは艦娘に頼らないことには自身の身すら守れないんだな。……君達は信頼という頚木に 繋がれた荷馬車の馬だ。俺は君らとの仲間意識を築いて、それを盾にしてこの卑劣なシステムを運営しているんだ」 咄嗟にそんなことないですよと口走ろうとして、しかしそういった慰めの軽薄さ。先ほどまでの自身の放った言葉を前にしては余り に都合がよすぎるようで、彼女は閉口した。 単に自身の発言を取り消したり、或いは謝ったりするのも露骨に過ぎる。もどかしさと悔悟に苛まれたままなんとか言葉を捜し探し、 沈黙の痛く感じられる段になってようやく捻出かなったのは、随分つまらない文言だった。 「でも今日は、私は探照灯を散々弄れたので、まぁ満足していますけど……」 依然、提督は仔細顔を崩さなかった。 明石を避難所へと送り届けた後には急いで復路を駆け抜けて、その後はずっと探照灯の元に座り込むのであった。 宵の地平を双眼鏡越しに眺め続ける。時間の経つほどに腹底の緊張は膨らんでいった。 脇に侍らせた妖精幾匹かも提督と同様、眼前の海面を注意深く見渡すが、どこかその様子には場慣れた余裕が感じられた。つまり戦 場に赴いたことのある者と無い者との、埋めようのない溝である。たとい同じ姿勢を取ろうとも、その発せられる雰囲気には歴然たる 差があった。 妖精の向けてくる気をかけた視線が口惜しかった。自身の発する違和感は、褥を共する処女の不格好さと似たようなものなのであろ う。尊大な自尊心を備えてない提督とて、この状況には堪えるのである。羞恥が胸を苛み、どうしようもなく心を痛ませた。 どこか茫漠と感ぜられた自身の無能さが、今確信という土壌を持ってして胸の奥底に根を下ろす。甚だ傷つけられたのは、発見の報 告さえ妖精に先を越されたという事だった。 「煙です!」 しじまを裂いた声は声量自体それほど大きなものではなかったが、状況と彼の心の内に湧いていた危機感によって大仰に耳朶にされ た。言われよく地平を眺めてみれば、夜空の紺に溶け消えかかってはいるが確かに薄暗い陰のような煙が立ち上っているらしい。 「全員、位置につけ」 静かに命ずると、妖精たちは二匹ずつそれぞれの探照灯の元に向かっていった。提督もまた立ち膝の姿勢をやめ、その場に佇立する。 大したこともない役割だと自身を無理やりに宥めてみれば、今朝方あきつ丸に言った言葉が意識の表層に思い出された。偉そうな、 上から目線の労わり。途端顔から火のでそうなほどの羞恥にかられ、彼は歯噛みし眉を顰めるのだった。 次第次第に露わになってゆく戦況は、大方予想通りのものであった。後進しながら迎撃する第一戦隊、那智を旗艦に構成された部隊 であるが、艤装に手傷を負っていない者は誰一人いないほどの消耗ぶり。反面敵方に目立った損害はなく、一方的と形容してもいいほ どの状況である。 尚も提督に焦りがないのは、即ちこれも作戦の内であったからだ。 戦闘の行われている海域から幾ばくか離れた水面の稜線。そこから放たれた信号弾の輝きが、夜空を毒々しい緑色に染めた。敵の後 方にようやく姿を現した艦娘たちは、練度の低い者を寄せ集めた第二戦隊。経験と訓練がものを言う夜戦において、素のままでは到底 役立たない即席の部隊である。 無論事情も何も知らない敵にとっては、驚異として勘定に入れなくてはならないほどの頭数である。混乱に足並み乱した彼奴等を見 届け、すかさず提督は命じるのであった。 「投光!」 くぐもったモーターの音が、遠い砲撃の喧噪をかき消してゆく。夜空へ伸びた丸太のような光線は、しばし視線を泳がせた後にかっ ちりと敵に照準を合わせた。 今や挟撃の準備は整った。練度不足とは言え艦娘は艦娘。これだけの状況を整えてやれば、第二戦隊の面々でも充分に火砲を当てる ことができるはずだ。 白光が火薬の朱と煙の黒に染められてゆくのを視界に入れ、提督は今まで呼吸の忘れていたように安堵の嘆息をついたのだった。 そもそも入り江に大した援護もなく突撃する時点で、もう愚策もいいところなのである。割り当てられた敵の頭の無さに感謝しつつ、 されど容赦をするに足る理由はない。 彼奴等はさながら、定置網に掛かった魚であった。もう逃げ道は失われ、遅かれ早かれ膾にされる運命である。 無論、この作戦にも弱点はある。それは探照灯という装備の共通する、避けようのない弱み。即ち敵に本棟の正確な位置を知らせて いる挙句、しかも艦船と違い動きようもないのであった。 「よし、全員撤退!」 双眼鏡から目を離し辺りを見渡すと、命令を下すより先に妖精は我先に避難を開始していた。彼らはふよふよと高度を上げ夜空の向 こうへと姿を消したが、それは提督にとって思ってもみなかった展開であった。 つまり、一緒にこの建物の中を降りていって外に出るという行程を踏むものだと、端から思い込んでいたわけなのである。冷静に考 えてみれば、こうして宙を漂うことができる者たちに階段なぞ必要であるはずもない。独り屋上に取り残され、途端胸の内に心細さの 風が吹き、焦燥に命じられるまま彼は出口へと走って向かった。 屋上の片隅にぽんと置かれた、立方体の建屋。本棟内部へ降りてゆくための階段とその他配電管理の機械室等を内包するペントハウ スであるが、それは三十メートルほど向こうの対岸に鎮座していた。ものの数秒に走り抜けられる距離であるのに、ひたすら遠くもど かしい心象だった。 兎角、逃げねばならない。少しでも遠く安全な場所へと、強迫観念に囚われていた最中、一つ燦爛とした何かが視界の端に捉えられた。 一瞬の内に膨張したそれがつと消失した瞬間、鼓膜を裂くかのような空気の擦過音と共に、足先には猛烈な振動が伝わった。 察知は須臾の内だった。死に際に放たれた敵戦艦決死の砲弾が、那辺かは分からないにしろこの本棟を直撃した。 作戦立案は無能としても、その武まで手練ていない訳は無い。初手から目標に当てる技量の持ち主である。誤差の修正された次の砲 火は、洒落にならないものとなるだろう。追い詰められ、自身の死期を悟った精神状態ならば尚更である。 提督は危殆なる状況に、膝を震わすほどであった。 脳天を吹き飛ばされた戦艦棲姫は水面に仰臥した後、腰からゆっくりと沈んでいった。最後、助けを請うかのように伸ばされていた 腕が遂に指先まで没したのを見届け、那智はようやく安堵の吐息をつくことができた。 張りつめていた緊張が一気に緩び、血管の一筋一筋に血の流れが生々しく感じられるような心地だった。急な目眩に膝を付き、眉間 を挟むようにして揉んでいると、駆け寄ってきた駆逐艦の身を案ずる声が耳朶にされる。顔を上げ視線に大丈夫と返信したその時、思 考の敷居の下にてくすぶっていた懸案が、わっと湧きだしてきたのであった。即ち本棟の損害の具合と、提督の安否についてである。 戦艦棲姫はその身に数多の傷を負いながらも、尋常でない意志を持ってして執拗に攻撃を続けた。砲撃は五回、三連装砲から放たれ た弾の一発も当たらなかった回は無く、今や探照灯の光線はその全てが消え果てている。 急ぎ本棟に帰還すれば、彼我の距離の縮まるにつれその被害の大きさが認知され始めた。まるでカルデラの如くに穿たれた穴から、基 礎のコンクリや鉄筋がまみえる。それらは引きちぎられた血管のようにグロテスクな様相を呈しており、しかも壁の至る所にあるもの だから凄惨に過ぎる印象だった。 焦燥に促されるまま、那智は岸壁を登った。 見るも無惨に吹き飛ばされた正面玄関は、最早以前どのような趣であったか厘毛のほども思い出せない有様である。散らかされた積 み木のように瓦礫の散乱する中、その片隅に彼はいた。 ちょうど腰の高さに切り取られたコンクリ片の上、全身を灰褐色に染めた提督は憮然とした顔に座っていた。一先ず生存を確認でき た安堵と、砲撃に巻き込まれたらしことの分かった不安が、ない交ぜになって胸を締め付けた。 「おい、貴様! 無事か」 走り寄りつつ声をかけると、片手を上げて首肯する。那智は提督のその仕草に一縷の違和感を覚えたのであった。 那智とて並大抵でない艦娘である。敵の状態を見極める目は非凡の域にあり、故に彼が無意識に庇った左腕の、その仔細な動きを察 知することは容易かった。 「見せてみろ」 すぐ側に寄った後、開口一番そう言った。引っ込められるより先に左手を救い取れば、痛みに眉を顰める彼である。 「転んで挫いただけだよ」 慌てた声音に弁解があった。だがそれは彼女の屈辱をより一層煽るだけの言葉であった。 ただでさえ戦闘以前から機嫌は悪かった。加えてこの結果、幾ら作戦の内に折り込み済みとは言え、眼前の光景には勘弁ならいもの があった。本棟は大破し司令も手傷を負い、とても防衛を成功させたとは言えない状況で、しかも後者に関しては本人に隠蔽する意思が あったらしいのだ。 「折れている。歯を食いしばれ」 返事を聞くより先に、外観よりずれていることの分かる手首を叩くようにして矯正する。途端、彼は不細工な呻き声をあげ、膝を付い て地面にへばった。 「医者の来るまで添え木しておけ。……気を遣うなら端から怪我なんてするんじゃない! 馬鹿!」 胸の中にわだかまる苛々がそのまま舌に乗った。治療を名目に彼をいたぶり、正論を武装してなじっても、気の晴れることはなかっ た。自身の不甲斐なさは怒りに置換され、罪悪感を覚える余裕さえなく、那智は悔し涙を見られないように早々に踵を返した。 提督はそういった心理の機微悉くを認知できた訳ではなく、だから心の準備を整える間さえ与えてくれなかった彼女に対しては、一 抹の怒りを覚えるのだった。 ようやく痛みの波が穏やかになりだした頃合、舌打ちしつつ顔を上げると艶やかな生足が視界に入った。 「あらぁ、提督。良い格好ですねぇ」 所々破けたアンミラ服を纏い色白の肌を煤に汚した龍田は、恍惚顔にそう言った。 「……沈んだ奴はいないんだろうな」 上体を起こしつつ問うと、頬に掌を当てながら嫌味たらしく、 「ええ。派手な囮のおかげでねぇ。……これ使います?」 彼女が差し出したのは、添え木代わりにということなのであろう。折れた槍の柄の残骸であった。丁度一尺ほどの長さがあり、確か に都合は良さそうである。 頷くと彼女は自身の服、切れ目の入っていた袖口を大きく破り、更に縦二つに裂いていった。露出した華奢なかいなが、月光にまざ まざと照らされる。 何よりもまず白さが際立った。透明なアクリル板を重ねてゆくと表面は次第に白濁してゆくが、彼女の肌の色味はそれを連想させる ものであった。骨ばった肘や滑らかな二の腕、肩口の僅かな膨らみ。腕のちょっとした造形が厭に艶かしく映えて、提督は意識の埒外に 生唾を飲み込んでいた。 「眼福だぜ」 童貞でもあるまいに晒された腕ごときに欲情したことが恥ずかしく、誤魔化すように言ちた。龍田は左手を取ると、 「壊死する前に落とした方がいいかしら」 一瞥くれることもなくすかさず吐き出し、ふふふと含み笑いを零すのである。警告は無論冗談の類であると分かってはいたが、それ でも尚心臓の縮み上がるほどの語気があった。居た堪れず、沈黙するより他にはなく、結局それから彼女が去るまで何一つ気散じな会話 のなされることはなかった。 およそ無聊を感じることができたのは何時ぶりのことであろうか。仕事場を綺麗に吹き飛ばされたことによって、彼はまったく何も やることがなくなってしまったのだった。艦娘たちは皆一様に入渠施設へ押しかけており、まさか男の出る幕もない。通りを歩くものも おらず、気を紛らす話し相手もいなかった。 ただただ座って海面を眺めるしかなかった。じわじわと血の巡る度に左手は疼き、その痛みによって思惟の世界へ旅立つ事も許されな い。極めて表面的な意識の中、提督は久しい退屈という感覚にどっぷりと身を浸したのだった。 それから一時間ほどの後、海波の合間から遂に第一艦隊の艦影が見えた。 流石に座ったまま出迎えるのも失礼に思われ、提督は億劫ながらも重い腰を上げた。岸壁の淵に立って手を振れば、ますます速度を 上げる彼女達である。言いたい事聞きたい事が山ほどあるのだろう。もうその立ち振る舞いから、逸る気持ちが肌にぴりぴりと察知さ れた。 旗艦であるから当然なのだが、まず岸に上がったのはあきつ丸であった。潤む眼を拭いながら走り寄った彼女は、その勢いのまま提 督の胸に飛び込んだ。それはロマンチックな邂逅という訳でもなく、ただ感情の爆発がそのまま彼個人に向けられたというだけの仕草 であった。腕は背に回されず、鎖骨の下辺りに握りこぶしが置かれるだけ。唇をわなつかせたまま、ようやく嗚咽交じりに発せられた 言葉は、しかし支離滅裂に過ぎていた。 「せっかく、活躍できたのであります! 自分、は。……あの、せっかくいい報告ができると、思ったのに! 何か、一体なにがあ ったのでありますか! 自分。あの、提督殿、はお怪我は、されて……あぁ! 自分は!」 そこから先、もう慟哭と差異の無い文言がが吐き出されるばかりであった。帽子の上から頭を撫でてやれば嗚咽はますます無様に大 きくなってゆき、もう提督も苦笑を漏らすより他に仕様がない。人目も憚らず彼女は彼の軍服に涙を染み込ませ続け、時折昂ぶってい る心緒を示すように胸をどんと叩いていた。 ぽつりぽつりとこの惨状の経緯を話しつつ、ようやく彼女とて気恥ずかしさを覚えるほどには心に静謐を取り戻した頃合。 「なぁ、あきつ丸」 そう呼びかけてみると、彼女は上目遣いに無垢な瞳を向けてきた。即ち今の状況がいかに危殆なるものか、自覚はないということだ った。提督は暗澹たる気持ちに嘆息を吐きつつ、加賀を伺い見ながら言った。 「いい加減、勘弁してはもらえないか。裸でくっつくのは」 小首を傾げた彼女は数瞬の後、自身の格好と彼の近さ。それから背後より投げかけられる嫉妬の怒気。それら全てを同時に知覚する のだった。唯でさえ白い顔をますます青く染め上げて、慌てて振り返り、加賀に弁解を始める。 生じてしまった亀裂に関しては、今更もうどうすることもできないのである。彼はその前途に失望するばかりであった。 3 激戦の翌朝、なによりもまず急がれたのはプレハブ小屋の建設であった。本棟の修理が終わるまで、まさかずっと業務を滞らせるわ けにもいかなかった。大本営からの査察があったのは明け方四時。それから六時間の後には、具体的な作業が始まり、簡易なユニット ハウスの建てられたのは更に二十四時間後のことであった。 提督といえば左手首の治療もそこそこに、先ず査察団の接待に追われ、彼らの帰った後には作業員の説明を拝聴し、ようやく荷が下 りたのは宵も更けに更けた時分であった。 近場にビジネスホテルの部屋を取ることができたのは幸運だった。佐世保の市民は避難指示のあった翌日というに甲斐甲斐しく働き に出ているらしい。普段通りに活気づく街の光景を目の当たりにすると、心の中に不遇を嘆いていた自身というものがなにやら矮小に 思われて、提督は独り徹夜明けの緩やかな思惟の中、恥入った。 部屋に入り、まず何よりも先にシャワーを浴びた。医者から禁止されていることではあったが、髪の毛のぱさぱさとした手触り、外 に露出していた肌の何か異様なほどの滑り具合。いい加減そういった自身の状況には勘弁ならなかったのである。 左手首の固定具にはビニール袋を被せ、輪ゴムを何重にも巻いておいた。 体を滑る湯は、たちどころ灰褐色に濁ってゆく。粘度も増したか、しばらくのうちに排水口も詰まり、時々シャワーを止めないこと には水たまりのできる有様だった。 思わず「やった、泥石鹸だぜ」と言ちた。独り後から面白くなってしまい提督はしばらく哄笑したが、そんな愉快もそう長くは続か なかった。一通り煤を洗い流した後体を拭いていると、烈々たる違和感がビニールの内より沸き上がってきたのである。 心臓の鼓動と連動して、骨からじくじく痛みだした。ベッドに飛び込めば、徹夜明けから労働した体である。眠気もあるし倦怠もあ るのに、その疼痛が現実に意識を引き留め続けた。 幸い時間はあった。結局痛みの引くまで寝付くことはできなかったが、それでも十二分以上の睡眠を貪ることはできた。 霧散しかけた意識の中で、彼は加賀の姿を幻視した。思えば帰還してより今まで一言も口を聞いておらず、しかもあきつ丸のことも あった。一抹の不安が胸の内に走るも体を起こさせるまでには至らず、結局そういった心緒もたちまち霞んでいってしまったのだった。 鎮守府に帰還したのは朝方六時。門戸を抜け、まずビニールシートを絆創膏のように被せられた、痛々しい本棟の姿が視界に入った。 それから小脇、スチール壁を四枚囲い袈裟掛けに上から支えのパイプを這わした、直方体の建屋が見える。例のユニットハウスなのだ ろうが、外観はもう結構なもので、すぐにでも執務を始められそうな雰囲気を放っていた。 「あの、お疲れさまです。ちょっといいです?」 近くを通った作業服の男に声を掛けると、気だるげに小首を傾げられた。 「これって、もう完成ですか」 「まだガスと電気と水の工事が残ってるよ」 「……電気は分かるにしても、水とガスですか」 「風呂トイレ付きだからねぇ。まぁまだしばらくできないが。……そうさな、午前中には終わるだろう」 「ありがとうございます」 踵を返しつつ、提督は感心の嘆息を漏らした。たったの一日で随分なものが建つようである。 また何をするでもない時間が生まれ、ひとまずは食堂に向かうこととした。朝食には少し早い時刻だが、自身の部屋というものの無 い現状、落ち着いて座ることのできる場所さえ限られていた。 食堂は本棟と廊下によって接続された建物であるが、艦娘宿舎との距離の兼ね合いによって奥まった箇所に鎮座していたために、砲 撃の被害を受けることはなかった。本棟の周りには鉄骨やぐらさえ組み立てられ始めている様子。中を通る抜けることはできないらし く、建物を大きく迂回するしかなさそうだった。 裏手に回ると艦娘宿舎からの渡り廊下、その柵壁に肘を置く人影が見えた。漆黒の服飾と、迷彩白粉を剥いでも尚血色悪い肌。あき つ丸は憂いの顔つきに、ずっと遠くを眺めるばかりである。 「おはよう」 十歩の距離にまで近づき声をかけると、彼女は大仰に背を震わした。それから見開いた眼にしばらく提督を見つめた後、苦々しく眉 を顰めたのであった。 「ごめん。何か邪魔したか」 「いえ! そんなことは、ないのでありますが……」 歯切れ悪く視線を反らしたあきつ丸は、痛む心中を堪えるように、握った掌を胸に置いた。思えば提督の帰還する時刻は知れていた。 このような所でたそがれていれば鉢合わせになるのも当然であるのに、そういった危機感をすっかり欠いてしまっていたのは失態だっ た。 どんな顔をして会えば良いか、思案していた矢先の邂逅だったのだ。彼女は焦燥と悔悟を混ぜ合わせた感情に、目も回る心地である。 「どうかしたか?」 それとなく尋常でない精神状態なのを閲歴したか、気遣う視線を向けられた。今のあきつ丸にとって、彼のそういった優しさという ものは良心を苛む鋭利な鋏であって、大きく広げられたその刃を前にしては、とうとう勘弁ならなくなるのであった。 懺悔するかの如くに頭を垂れ、彼女は重い口を開いた。 「提督殿に、謝らなくてはならないことが……」 「何?」 「あの、昨日加賀殿が、随分荒れていたようなのでありまして……。責任は、あの、不埒な真似をしてしまった自分にあるのではと ……」 「荒れてたって?」 「慟哭の声とか、何か物を投げつけたらしいような音が部屋からしていたのであります。その、なんとお詫びすればいいのか……」 最初要領を得なかった提督は、幾ばくか思惟の廻らした後、ようやく状況の概略を掴めたのであった。 加賀の荒れていたその要因は複合的なものであるはずだ。例えば先日の作戦の無力感や、鎮守府を襲撃されたというその精神的ショッ ク。無論、あきつ丸が中破の半裸で抱きついた事への嫉妬もあろうが、のみではない。嫉妬のみによって荒れたのだという謬見によっ て、彼女は許しを請うているわけだった。その認識のちぐはぐさのせいで、彼女が何を言わんとしているのか、その知覚が遅れたので ある。 微笑ましく、健気なように見えた。この程度のことでわざわざ首を差し出しに来るのはいじらしかった。煽られた嗜虐の心根と愛お しさ、それから唐突に思い出された自身の役職への侮蔑の念が複雑に絡み合い、提督の心情は甚だ混沌と濁ってゆく。 意識の埒外に腕が動いていた。彼は彼女の髪を軽く指で梳いた後、その体躯を引き寄せ胸に抱く。 「な、何をするでありますか!」 強気な声音に咎められるも、さして抵抗がないのは不思議だった。温い体温を感じつつ、提督は思いついた言葉をそのまま舌に乗せて いった。心の篭っていない言葉だが、しかし自身でも本心が何処にあるか、それさえ分からないのである。 「お詫びにこうさせててよ」 「意味がわからないのであります! こんなの誰かに見られたら……」 「また加賀が怒る?」 「そうでありますよ! 離してください!」 自身の言葉に心情が追いついたのか、彼女その段になってようやく体を捩り出し、手を間に差し入れて距離を取ろうとし始めた。背 に回していた腕を一気に解いてみれば、彼女は勢い余って数歩後ずさる。その頬には朱が差して、目には怒りの色が滲む。 「妻帯者なのでありますから! こういうことは自重していただきたい!」 意図せず、彼女の罪悪感を払拭できたのは僥倖だった。逃げるように食堂へと向かった彼女の背を見つめ、提督は独り様々思惟を廻 らしている。 朝食に加賀の現れることはなかった。 宿舎の空母寮に足を踏み入れ、一航戦の相部屋をノックしてみれば、顔を出したのは赤城であった。彼女が逡巡に視線を右往左往さ せているのを見て、提督も大方の事情は察せた。 「無理はするなよとだけ、伝えてくれる?」 微笑を作って言えば、安堵に目を伏せ頷く赤城だった。おずおずすまなそうな顔つきに戸を閉められ、提督はどこか心緒の片隅に寂 寞の風が凪ぐのを感じた。三行半を突きつけられた時の気持ちというのは、きっとこれと似たようなものなのであろう。そう、胸の内 に独り言ちる。 臨時の秘書に馴染みの那智を起用せず、あえてあきつ丸を指名したのは、つまり当て付けであった。貴様がずっとふてくされている ならばこちらもそれなりの手に出るぞという、伝える意思の無い脅迫だった。 信頼の契り、ケッコンという終端の価値が揺らいでいるのだ。提督職への絶望が、或いはただ守られるだけの存在である人類種とい うものへの失望が、指輪と頚木の境目を分からなくさせた。果たして加賀と結ばれたままでいることが、加賀自身の幸福に繋がってい るのか。愛情を植えつけられた娘が戦地に向かうという異常を、今の提督は容認しかねるのだった。 あきつ丸を連れ完成したユニットハウスを見物してみると、感動と落胆、その両極端の感情が一斉に迫ってくるようだった。たった の一日でここまでの物ができるのかと感心しつつ、やはり簡易な構造の口惜しさもある。 まず玄関を上がると、突然すぐ目の前に執務室が広がっていた。間仕切りも靴箱もなし。ただ部屋自体の大きさは本棟の物と遜色ない。 部屋奥の壁は片隅を半間の大きさにくり貫かれており、その先にはベッドと箪笥を置いてあるだけの小さな寝室があった。 トイレ付きシャワー室は後から連結されたような格好になっており、一度外に出ないことには中に入れない。湯冷めしない時節であ るのは、不幸中の幸いだった。 「プライベートルームと仕事場の間に仕切りがないってのは、なんか厭だね。ぞっとしない」 一通り見てまわった後、執務机に腰を降ろし、まず提督はそう言った。あきつ丸も首肯したがそれは何となしに首を動かしたのでは なく、本心からまったく同意しての仕草であった。 どこか危機感がある。朝方の彼との抱擁を意識せずにはいられないのであった。無論信用はしているし、間違いの起こることはない だろうと思われたが、それでも秘書艦に呼ばれた時よりずっと不安は尾を引いていた。 こういった感情の厄介なのは、俯瞰しているもう一人の自身が、その心緒を自意識過剰だと糾弾することであった。本能的な防衛の 感と義侠的な建前とが、胸の内に激しく衝突する。 何もないまま時が過ぎてゆけば、どちらがより勢を増すかは自明である。結局執務の終わるまで、軽いスキンシップさえないのであ った。 意外な心地に受け止めていたあきつ丸は、ふとしたらその感情も寂寞であるとか名残惜しさにも置換されそうで、独り頬を熱くした。 提督には相手がいる。何か特別な情を抱く事さえ憚られるべきであるし、ましてや背徳に悦を覚えるなど不品行も甚だしい。燈りかけ た官能の熱に厭悪と恐怖を覚えた彼女は、頭を振って湧き出てきた妄想を掃ったのである。 宵もどっぷりと更けてしまい、最早夜半と言ってもいい時分。書類の背をとんと叩き、提督は立ち上がった。 「それじゃあ、おやすみ。俺、シャワー浴びるから」 「あの、戸締りは?」 「べつにいいよ。めんどくさい」 それから着替えとタオルと輪ゴム、ビニール袋を持った彼は、颯爽と執務室を飛び出してゆく。 ぽつねんと部屋の中央に取り残された彼女は、しばしの逡巡に身を固くしていた。施錠しないというのはやはり些か無用心に思われ、 だが、まさかシャワーの終わるまで待っているのもいらぬ誤解を与えかねない。 本人が良いと言うのだから、もう関知せずとも責められる謂れはない。一分ほどの思考の後、そう結論付けた彼女は、壁に掛かる鍵 束から視線を外した。出口に体を向け帰路の一歩を踏み出し、だがその時、目の前に佇立していた人影が彼女を驚懼の面持ちとさせた のである。 玄関の敷居を跨ぐ加賀は、あきつ丸を見るなり眼を眇めた。 シャワーを終えて部屋に戻ると、執務机の椅子に腰掛ける幽鬼の如き加賀があった。普段サイドテールに纏められている髪も、今は ただ無造作に下ろされているだけ。うなだれたまま視線さえ寄越さず、膝の上の両手を見つめている。もしかしたら左手の薬指を凝視 していたのやもしれないが、本人以外には知りえないことであった。 何と声を掛けるべきか提督は判断しかねていた。別段喧嘩をしていた訳でもないのに、言いしれぬ気まずさが胸を締め付けるばかり。 下手な慰めは、寧ろ相手を辛くさせるだけである。無力感、自身の無能さへの屈辱というものは、提督とて経験した事だ。故に頭に 浮かぶ文言悉く口走ってはならないものだと裁定できたし、また何を言い掛ければ楽にできるのかも分かり得ないことだった。そして また、自身のそういった甲斐性の無さに失望してしまうのである。 どれほどか経ち、先に沈黙を破ったのは加賀だった。 「何も、何をすることもできなかったわ。私」 自嘲を吐く女性に向かってその言を否定するのは、こと気の置けない間柄であるならば、必ずしも正解の一手にはなり得ない。内心望 んでいる言葉を導く為の回りくどい布石であると、そう判断するのは早計に思えた。提督には、まさかあの加賀が矜恃を投げうち、浅 ましく女々しい手段に出るとも考えられなかったのである。 「どういう意味?」 彼は探り探り、問うた。 「ミッドウェーを攻略できたのは、あの陸の娘のおかげ。私たちだけでもっと早く攻略を済ませられたなら、鎮守府が壊されること もなかった。あなただって、怪我をしないでいられたわ」 唐突な懺悔にはあざとさを感じた。もしの話をする無意味さを、解していない彼女ではないはずだった。真意を測りかね、苛々が腹 底に沈殿してゆく。だがその後すぐ、ゆったりと向けられた彼女の視線によって、提督の疑問はたちまち氷解に至る。 彼女の瞳は怯懦を片隅に控える一方で、切望に燦爛としているのでもある。それを見、彼は彼女の今までの葛藤全てを閲歴したよう な心地となった。自身に求められている慰めが如何様なものか、ようやく知覚できたわけである。 それが勝手な思い込みでないことを証明するため、彼は加賀の側にまで近づくと頤をぐいと無理やり上向かせてみた。果たして示さ れた反応は従順なものである。視線を逸らし、唇をほんの僅か開いていた。諦観を装った渇欲が、表情の端々に滲み出た。 荒々しく唇を押し当てると、歓喜の悲鳴が耳朶にされる。自身の予測のまったく正しいことが分かり、提督は独り安堵と憂鬱を覚え ていた。つまり加賀の望んでいた慰めの実態は、辱めることによる懲罰であったわけである。 寧ろ自身が謗られるべきであるのに、罰を与えるのは躊躇われた。だがつまり同時にそれは、懇願を無碍にできる立場にもないとい うことなのである。唯でさえ役に立たない役職にあるのだから、彼女を慰藉する役目くらい全うせねばなるまい。キスに没頭しつつ、 提督はそう腹を据えざるを得なかった。 呼吸の暇も付かせぬほどに、彼女の口を嬲り続けた。舌根の吸われる度漏らされる声は、苦しげに切なく震えていた。 唇の端から漏れた唾液が顎の線を滑るまでになって、ようやく彼は体を離す。見れば酸欠と悦楽に表情を蕩けさせ、肩で息をする彼 女であった。 「脱げよ」 見下ろし、乱雑に言い放つ。加賀は狼狽に視線を滑らせながら、か細く赦しを請うた。 「こんな、場所では……。せめてベッドに」 「無理ならいいよ。別に」 一歩距離を開けると泣きそうに眉を歪ませ、彼女は提督の裾を摘んだ。 「わかり、ました」 手を引き立ち上がらせ、肩を押して突き放す。ぞんざいな扱いをする度、提督は罪悪感に苛まれ、己の行為の正当性を猜疑せざるを 得なくなった。加賀は口答えせず衣服に手を掛け始めており、意の合致している事は明白なのだが、恥辱に唇を噛む彼女の姿を見ると 心が締め付けられてならなかった。 髪を下ろした加賀は幾分か、普段より幼げな印象となる。馴染みの服の、全て床に落ちた今では年頃の女学生と見紛うばかりであっ た。鎖骨の凹を、はらりと毛先が叩く。 時々躊躇いの視線を寄こす彼女には、黙し嘲りの目を向けてやった。度に体躯をびくつかせ、おずおずと脱衣を再開するのは健気だ った。 普段より夜伽では被虐の立場になる加賀は、無意識的に羞恥を鍵として情欲を滾らせるようになっていた。明るい中ストリップをする のは初めての経験である。故に胸底の切なくなるほどの興奮が享楽され、提督の心情とは裏腹、辱めに悦びを見出していた。 ついに裸体を晒した彼女への、提督の指示は冷淡である。 「自分でやれ」 幾ら自身から求めた事といえ、その言葉は酷薄に過ぎる印象だった。加賀は抗議の声を上げようとするも、彼の仕草、その意図を察 した途端に寧ろより劣情を充溢させる。 提督は左手を差し出し、 「動かせないからな。仕方ないだろ?」 そう言いのけたのだ。 それはこの被虐の感の根源であった。自身の罪を視覚的に象徴する、服従の頚木だった。 裸である事の心細さがこの諦観の悦楽と合わさって、具体的な贖罪という目的が意識の表層に顕れた。目尻より零れた涙は悲観のそ れではなく、寧ろ昂ぶる悦のものであった。 「……はい」 震えた声音に、加賀は言う。 既にそこは濡れそぼり、指が動かされる度水音の跳ねるほどであった。左手の人差し指を噛みなんとか声を堪えようとするも、荒い 息遣いに混じって喉の震えは外へと漏れ出す。 「んっ……ぅぁ……」 我慢しきれずに漏れ出してしまう嬌声への羞恥が、何よりも胸を苛んだ。無論、自慰を見られているだけでも相当に辛いのであるが、 自分のものと思えない声を耳朶にした時の恥ずかしさというのは殊更、屈辱なのである。 生きたまま膾にされるような心地だった。快楽が体全体を突き抜ける度、その無意識の震えが自身の淫らさの証に思え、嫌気を覚え るのもまたしかし、悦楽と認知されるのである。同時に先の自嘲の心緒は性的なそれへと置換され、痛められれば痛められるほど癒さ れてゆくのだった。 落涙は止め処なかった。嗚咽交じりの喘ぎ声は、よほど無様に思われた。手折られ、踏み躙られた心の疼きが、もう性的な快味に直 結している。 終端はものの数分の内に到来した。 「も、もう駄目っ……です。んっ、ぁぁあッ!」 一際大きく体をびくつかせ、加賀はその場に頽れる。荒い息をつき、しじまに自身の喘ぎの響いた事へ羞恥を感じる余裕もないよう だった。 絶頂の余韻に、もう数刻前の自責も立ち消えになる。快楽に侵され蕩けきった微笑には、一片も昏い所は無かった。 放心していた加賀は、床の冷たい心地よさに意識を向けるばかりであった。だから何時の間にやら提督が背後に立っていたこと、そ の気配を察するのもあまりに遅く、今更危殆なる感覚を得たとてどうしようもないのであった。 背を突かれ、腰に手が這わされる。 「待って! まだ、待ってください提督!」 柄にもなく叫ぶようにして言うも、四つん這いの体勢にされては碌な抵抗もできなかった。加賀は容赦なく自身に進入してくる彼の 感触に、背筋も凍るような、莫大に過ぎる悦楽を無理やりに享受させられたのであった。 「い、いやぁッ! 待って……ていと、くっ……んぅ! ぁあっ、ひぐっ……ぅ」 振り乱した髪が背筋の窪みをさらさら滑り、肩口を落ちた房、その根元からはうなじの生毛が垣間見えた。肘の頽れる度、軽く尻臀を 平手に叩くと益々嬌声は大きくなった。 湿潤な感触が、彼女の興奮を生々しく伝播させる。眩暈にも似た快楽の中で、しかし提督は頭の芯に冷たい思惟を残していた。 彼女は慰められたのであろう。自責の念を性の悦びに塗り潰し、幾らかは救われたのであろう。だが一層、自身は胸の内に悔悟を沈 ませるばかりであった。不満とまではいかない僅かな苛立ちが、この陵辱の行為に転化されていった。 最初は彼女のためを思っての演技であった。今はもう、自身が虚偽の仮面を付けているのかどうかさえ分からないような有様だった。 暴力性に促されるまま提督は加賀を犯し続け、煮えた思考も何も情動の灰色に染まりきると、征服の証を吐き出しつくす。加賀の、 何度目かの絶頂の嬌声を聞きながら、提督は湧き出す自己嫌悪に眉を顰めた。 空母寮にまで加賀を送るその中途、つと気が付いたことがあった。傍らに彼女を連れた状況には詳細を確認できないその事実。否、 まだ予測としか言えないほどのか弱き事柄だが、提督の心はたちまち厭悪に揺れ動いた。 酷使してしまった加賀の体を労わる、その表面的な優しさは維持したまま、しかし思惟はすっかりその事だけに占有されてしまった のだった。別れのキスの最中さえ、考えに耽っていたほどである。加賀の背が戸の向こうに消え果るのを見届け、提督は憮然と踵を返 した。 寮の出入り口近く、厠の脇に彼は立った。 夜半の静けさの中に身を浸せば、たちまち予測の正しかったことが分かった。今このトイレの中、尋常の目的外に身を潜ませる者が ある。 おそるおそるといった風にひょっこり身を出したそれは、提督に気が付くこともなく自身の部屋への帰路を歩みだした。 「おい」 最低限の声量に呼びかけると彼女は大仰に背を震わせ、勢い良く面を向けた。色白の肌に、漆黒の服飾。この寮には似つかわしくな い小柄の体躯から、既に彼女が誰であるのかは察していた。そしてそれは、まったくぞっとしない予測を正しいものと裏付ける、何よ りの証左でもあったのだ。あきつ丸は眼を大きく見開いたまま、ただ硬直するばかりであった。 苛立ちを隠しもせず、歩み寄る。途端身を竦ませる彼女の細い腕を乱雑に掴み、提督は寮の出口へと向かった。 「い、痛いであります! 提督殿!」 流石に気を使ったのか、彼女が抗議の声を上げたのは外に出た後だった。無論懇願を聞き入れることは無く、彼は彼女の体躯を適当 な壁に押さえつけた。右手を顔の脇に置いて眇めた眼に見下ろせば、狼狽と恐怖の表情は益々その色を濃くしていく。 「お前、何時から見ていた」 あきつ丸の口から、短く小さい悲鳴が漏れた。 提督は嘆息を吐くと、彼女を侮蔑の視線に見据えた。この娘への憎々しさが、体中を遮二無二渦巻くようであった。よりにもよって あんな無様を、自身のこともそうであったが何より加賀にとっても堪えられない屈辱であ る筈だ。 慰めの為の睦みを第三者に見られるという含羞の怒りに、提督は苦々しく歯噛みする。 「あ、あの……提督殿」 「答えろ」 「ち、違うんであります。見る気はなかったのであります! ただ、あの……加賀殿と提督殿のことが、気になって……それで、隠 れていたら、あの」 「最初からずっとか」 「ぅ、その……申し訳、ありません」 壁を殴りたい気分であった。流石にそれを自重するだけの理性は残っていたが、代わりに意識の埒外から呪詛が零れだしていた。 「見損なったよ」 顔を見ることさえ勘弁ならず、提督は踵を返した。 ずっと、鎮守府を壊され時よりずっと引き摺っている惨めさがかつて無いほどにまで膨れ上がり、もう頭を破裂させそうなほどだっ た。自身は汚辱の極みにある人間なのだと、卑劣で無能なクズだと自嘲するたび、怒りの念が際限なく腹の内側をのたうつのだ。壊さ れた本棟や、加賀の切望に揺れた瞳、そしてあきつ丸の怯懦の表情がチカチカと目の前に燦爛とした。 振れた情緒の嵐の中で、彼はただ帰路の事だけを考えようとしたが 「提督殿!」 背後より迫る彼女の呼びかけが、無慈悲にもそれを妨げた。 無視しようと足を速めるより先、行く先に回りこむ彼女であった。 「提督殿! 待って欲しいのであります!」 「帰れ」 「あ、あの何とお詫びすればいいのか、分からないのでありますが……。その本当に悪気は無かったのであります! ただ自分は、 無用な事とは分かっていたのでありますが、しかし心配でもありまして……」 「帰れ! いいから帰れよ!」 荒らげた声が静寂を裂き、だが数瞬の後にはまた蕭々たるしじまに立ち戻る。たかだかこの程度のことで、年端もいかない娘に怒鳴 り散らす自身。それを俯瞰した気になって、益々提督は惨めさに胸を締め付けられた。 「ゆ、許してほしいので、あります……っ」 とうとう嗚咽を漏らし始めたあきつ丸は、彼の腕に縋りつくと落涙もそのままに懇願するのだった。 「なんでもするのであります。許してくださるならなんでもしますからぁ……っ。ぅぁ……ごめんな、さい。提督殿、どうか……」 「なんでもするのか」 「はいぃ……します! しますから、どうか……」 強引に唇を重ねたとき、だが確かに提督の心の梢には慰安の風が凪いだのだった。逃げる舌を掬い取り嬲り啜る度に、その狼狽の声、 反射的に捩られた体、反応全てに愛おしさを覚えるのだ。 十秒二十秒と経ち、彼女の方からもおずおずと舌が差し出されるに至った。互いに真意など読めはしない。だが共有された悦楽は確 かに二人を結び付け、また不貞の背徳を意識するような段ともなれば、もう行為に歯止めは利かなかった。 〈続く〉 → 提督×加賀・あきつ丸15-472 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/104.html
477:名無しさん@ピンキー:sage :2013/11/02(土) 01 48 42.33 ID gc3NdWel 漣「いやぁ~潮っぱいは最高ですな~」モミモミ 朧「同じ物を食べてるのに…」フニフニ 曙「どうやったらこんなになるのよ」ツンツン 潮「もう…やめてください…あん…」 唐突にこんなイメージがうかんだが俺は悪くねぇ! 478:名無しさん@ピンキー:sage :2013/11/02(土) 02 02 19.21 ID 1k2zVTOw 提督「どうした、神通? 調子が悪そうだな」 神通「はい……少し、おなかが……痛みます」 提督「生まれそうなのか!?」 神通「」 559:提督の誕生日:sage :2013/11/03(日) 23 40 12.66 ID AkQ8hJti 「HAPPY BIRTHDAY、提督ゥ!!」 今日は俺の誕生日。それもかわいい艦娘達と出会って初めての誕生日である。 「ありがとう」と俺は返した。 「提督のために私たちがPremiumなPresentを用意したネ!」 彼女達は何を用意してくれたのだろう。そう思っていると 「あ…あの……こっちの夜の戦いは初めてで……で、でも、精一杯頑張ります!」 服の上からでもわかる豊かなおっぱいをさらけ出し、いつもとは雰囲気が違う愛宕。 「お…わた、わたし達、提督の為なら…」 いつもの男口調とは違い、たどたどしくも女口調で喋る天龍。 「私、司令官の為なら初めての痛みなんて大丈夫なのです!」 スカートをたくし上げてパンツだけを横にずらしながら秘所をさらけ出し、 いつものように一生懸命さを出して何かを頑張ろうとする電。 「提督ゥ!私たちがVirginをPresentするヨ!好きなコ、Selectしてイイヨ!」 どうやら彼女達は俺に処女を捧げようとしているみたいだ。戸惑っていると 「おっそーい!もっと早く決断してよ!」と島風が不満顔で文句を言う。 「すまない、誕生日プレゼントだからって君達の純潔を貰えない」と速攻で返す。 「ちょっと待てよ!俺達艦娘達の好意を無駄にするのか!?」 「い、いや、俺はどっちかというと初体験をこういう風にしてヤるのに少し抵抗が…」 「司令官…ひょっとして童貞ですか?」 「ああ」 割って入ってきた雷の言葉に対して恥じることなく即答した。 「提督ってかわいい女の子に目がないのに妙なところで意気地無しなのです」 「すまない。だけど君達の気持ちは受けとったよ。いつかきっと……」 「まあ誰とするかは決断を後回しにしてもいいけど、戦いではちゃんと即決してよね」 「ゴメン、君達を失望させたみたいで」 「失望なんてしていませんよ。むしろ提督の意外な一面を知れてよかったです」 彼女達は恥ずかしい思いをしただろうに健気に笑顔を見せていた。 いつか彼女達や、ここにいない艦娘達から誰かを選ばなきゃならない日が来る。いや、選ばないという選択肢もあるだろう。 いずれにせよ、後悔しないように選択し、生きていきたい。 今日はそういった考え方を艦娘達から間接的に教わった気がした。 きっとこれが今年の誕生日プレゼントなのかもしれない。ありがとう…みんな…… 656 :名無しさん@ピンキー :sage :2013/11/06(水) 22 50 05.79 ID bYbSAtDw 「榛名、疲れた。茶を飲もう」 「ええ、榛名で良いならお相手しましょう」 「榛名、メシを一緒に食わんか」 「ええ、榛名で良いならお相手しましょう」 「榛名、将棋の相手はできるか」 「ええ! 榛名で良いならお相手しましょう!」 「榛名、七並べかババ抜きはどうだ」 「ええ……? あの、榛名で良いならお相手しますけど、その……」 「……ふたりだけ、か? 言うな、侘しくなる」 「(遊戯としてそれは成立するのかしら……?)」 「(貧乏艦隊はつらい……)」 四十路くらいの枯れた、やや甲斐性なしバツイチ頓珍漢提督と おおまじめーに秘書艦やってる榛名を妄想した 灯火管制の下で質素なメシを食ってせんべい布団でイタす二人が見たかった ちょっとワードパッド立ち上げてくるわ
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/140.html
前編はこちら 『クズ提督の矜持 後編』 1 夜の闇に消え入る白銀は見るだけでも寒々しく、今いる部屋が暖炉で暖められていてもその視界の印象までをも払拭させてはくれなかった。 窓越しに見える雪の軌跡は幾重にも重なって、最早吹雪だと形容できそうなほどに轟々と風が吹いている。 それは不気味に窓を揺らし、しかしその音が唯一の物音だった。 外の様子を見るのをやめ、カーテンを手元に引っ張る。窓の隠された執務室にはただ一人、提督だけが居残っていた。 いつもは仕事終わりまで一緒にいるはずの秘書加賀は、つい先ほど申し訳なさそうに部屋へ戻っていった。 後に残された仕事が机に詰まれた書類へのサインだけである以上、秘書の手を借りる必要がまったく無くなったのだ。 それでも一緒にいたいという彼女を制し、提督は早く寝るよう指示を出した。 今夜が冷えそうな事ぐらいは誰の目にも明らかで、風邪などひかれては明日の仕事に響くのだ。 天気を見るに、明日は鎮守府総出で雪かきに追われるはずだった。 肉体労働に気乗りしない提督はため息をつき、しかし万年筆の滑るスピードをどんどんと速めていく。 きちんと睡眠をとらないと、日ごろの運動不足によりこり固まった体には重たい作業になるはずだ。 起床時刻まであと何時間かを数えながら、彼は作業を続けていった。 もうすぐ全てが片付き終わるという頃合に、扉が二回ノックされた。今の時間には珍しいそれに、だが彼はすぐさま入れと言う。 もはやそのスピードは反射の域に達していて、誰が訪ねてきたのかとか、そういった疑問は声を出した後から沸いてきた。 扉が開かれると、そこにいたのは帰ったはずの加賀だった。小脇には段ボール箱が抱えられ、寒そうに肩をすぼませている。 提督はそれを見、すぐさま駆け寄って部屋に導きいれた。 「どうしたんだ?」 差し出されたダンボールを受け取り、しかしとりあえずそれは机のすぐ脇に置いておく。 加賀の衣服は随分冷たくなっており、指の先は真っ赤だった。背中を押して暖炉の火のすぐ側まで誘導する。 「提督宛の荷物よ。昼に届くはずたったものが悪天候でここまでずれ込んだらしいわ。 廊下に出ていたのがちょうど私しかいなかったので、受け取っておきました」 「ご苦労様。でも別に玄関に置いておいてもらってもよかったのに。わざわざこんな……」 寝具から毛布を一枚引っ張り出し、加賀の背中にかけてやる。彼女は蓑虫のように、それに丸まり包まった。 頭を撫で、提督はダンボールの元に向かっていった。差出人の住所欄には実家の所在が書かれており、 封を開けると一通の手紙と、何やらアルバムのような大型本が入っていた。 「誰から?」 「実家からの、いらないおせっかいだな」 背中からの声に答えながら手紙を開くと、そこには見知った癖字の羅列が紙一杯に散乱していた。 元気にしているか、仕事は順調か。前半の内容は非常にありがたく微笑ましい気持ちにもなれるのだが、 段々と文面には余計で無用な事が散見され始める。 最後まで読み終えたそれを綺麗に畳み、机の上へ放っておく。提督は続けて視線を箱の中の本へと向けた。 底にずっぽりと埋まったそれはかなり重そうであったが、何とか指を引っ掛けて持ち上げてやる。 本とダンボールとの隙間は絶無であったために、無駄に難儀をしてしまったのだった。 救出した本を一旦膝の上において、それからゆっくりと表紙を捲った。 紙質はこれでもかというほどに良く、厚くてつるつるとしている。 ページは送られど送られど、どこにもでかでかと女の晴れ着姿の写真があった。 「随分可愛らしい女の子たちね」 いつの間にやら後ろに立っていた加賀が、怪訝そうな目つきでそう言った。 冷え切った声音の恐ろしさに思わず身震いするが、しかしこれは別段やましいものでもない。 「お見合いの写真だよ」 振り返りそう言った提督は、次の瞬間肩をがっしりとつかまれていた。顔をあげると加賀の必死な形相が、視界一杯に広がる。 そこの段になって、ようやく言葉が足りていないことに彼は気が付いたのだった。 慌てて口を開いたが、それより先に張り詰められた声が部屋に響いた。 「お見合い!? あなた結婚するの!?」 捨て去られる直前の子犬のような表情に、提督は一瞬呆然としてしまった。 彼女の瞳が潤みだすとようやく我に帰る事が出来、不謹慎ながらそのあまりの必死さに噴出してしまうのだった。 態度に文句を重ねようとした加賀を遮り、すぐに補足を入れてやる。 「実家が勝手に送りつけるのさ。俺にそんな願望あるわけ無いだろ」 一瞬の間の後、言葉の処理が追いつくや口からはほうと息が吐かれた。 力が抜けたのかぺたんと地面に腰が落とされ、提督はそんな彼女の頭を丁寧に撫でる。 恨めしそうな視線を受け止めながら、提督は加賀の発露した依存性に内心酷く驚いていた。 自身のしている普段の行動は、決して褒められたものではないという自覚はあったが、 それでもこうしてその影響を見せ付けられると複雑な思いを抱いてしまう。 彼女の持つ独占欲を自分勝手に押さえつけ、その結果の変化であるのだから当然受け入れる覚悟はあった。 もとより、この鎮守府から離れるつもりなど一片もないのだから、何か気を新たにする必要も無い。 「こういう写真は良いように見える角度から撮ってあるんだ」 視線を合わせ、微笑み言う。首を傾げる加賀を他所に、提督は言葉を続けた。 「俺には、加賀の方が可愛く思える」 余りにもな台詞を吐いたものだと、言った後から後悔の念が沸いてくる。 しかし、相手の顔を見れば、そんな羞恥も消え去るのであった。 加賀はそれを聞いた途端、茹蛸のように顔を赤くし視線を背けていた。 「馬鹿」 小声呟かれる言葉にどうしようもない愛おしさを感じる。 それが成就し得ないものだと分かっていても、感情は流れを留めてくれない。 それを意識しないようにするのには慣れていて、それは自衛のために必要なことだった。 引いたボーダーを守るためには、好意から目を背けるしかなかったのだ。 そしてそれを達成する具体的な方法も、いままでの経験から発見できていた。 提督は加賀の背中に腕を回した。抱き寄せ体を密着させると、彼女の匂いがにわかに香る。 嗅ぎなれた、しかし飽きることのないいい匂いであった。 「今晩は、ここに泊まっていくかい?」 加賀がわざわざ寒い思いをしてここに戻ってきた、その理由を知った上での発言だった。 つまり質問ではなく願望の発露なのであって、しかも答えを知った上での卑怯な問いかけなのだ。 果たして、彼女はこくんと頷き上気した顔を上げた。潤んだ瞳が瞼に隠れ、提督はそっと唇を重ねる。 恋愛感情を隠すのにセックスを用いるという背反した行動は、しかし提督には効果があった。 我慢を押し通すほど強い意思が保てないために、こうして発散をする。 屑なことをしていると自己嫌悪に苛まれ、しかしそういった罪悪感さえ快楽なのだった。 お互いに慣れた深いキスは、そうして重ねてきた罪を証明していた。 毛布が肩口からずり落ちて、床にくしゃっとまとまった。提督はそれを広げると、その上に加賀を押し倒す。 寝具に移動するのかと思っていた彼女は、目を白黒させながら覆いかぶさる提督に抗議の声を上げた。 「せ、せめてベッドに……。お願い」 「暖炉の近くの方が暖かい」 「そうじゃなくて……恥ずかしいわよ」 寝巻き浴衣の襟を広げようとする手を、加賀は必死に押さえ込む。 その抵抗は彼にとってはむしろ逆効果で、ますます興奮を促すのであった。 彼は顔を寄せたかと思うと、加賀の耳にキスをした。突然の刺激に悲鳴が上がり、しかし追撃の手は緩めない。 丹念に舐め上げ嬲っていくとますます声は大きくなり、ついに彼女は片方の手を口へとあてがったのだった。 すかさず寝巻きははだけられた。下着は無く彼女の白い滑らかな肌は、暖炉の火と蛍光灯の明かりの元に晒される。 柔らかな乳房はそれ自身の重さで平たく潰れ、その様子は酷く濃艶だった。加賀は顔を背け、慌てて腕で胸を隠す。 ショーツは穿かれていたので、提督はそれにも手をかけた。 全裸にさせてしまおうという魂胆はすかさず彼女にも看破され、思った以上の抵抗がなされた。 しかし片腕での反撃がそう長く持つわけは無く、しばらくのもつれ合いの末ついに決着はついたのだった。 生まれたままの姿にさせ、提督はそれを俯瞰して見たくて上体を起こした。 加賀は体を横にくねらせながら、右手で顔を、左手で胸から陰部までを隠していた。 その扇情的な姿は加虐心を煽り、思わず口元には笑みが浮かんでしまう。 まずは、顔の隠された手を退かすことにした。手首を掴み引っ張って、顔のすぐ横に押さえつける。 彼女を見ると頬は赤く瞳は潤み、しかし目つきは怒りのそれであった。 凄まれるように睨まれて、申し訳ない気持ちが沸きもするが欠片も引く気にはならなかった。 体を隠す腕も退かしてしまおうと、提督は自身のポジションを少し下へとずらした。 手首を掴み持ち上げようとするが、これでもかと力が入っており簡単には動かない。 まるで石になったかのように、突っ張った腕は強固だった。 俄然強い意志を持った瞳を見、彼は作戦を変えることにした。拘束していた方の腕を解き、馬乗りになったまま見下ろす。 優越感が覗き見える加賀の表情は、しかし次の言葉を聞いた瞬間に崩された。 「ここでやめるか?」 それは予想だにしていなかった言葉だった。彼女の口からは息が漏れ、目は驚きに見開かれる。 提督は腰を上げ、愛おしい重量は消え去った。 「な、なんで……」 「俺だって、嫌がることはしたくない。抵抗しているのを無理やりだなんて気が進まないよ」 張り付いた笑顔から、その言葉が真っ赤な嘘であることは容易に分かった。 しかし提督はついに立ち上がると、一歩二歩と後ろに下がってしまう。 彼の体温の残滓はひどく切なく、加賀の心中には多大な不安感をもたらした。 「待って!」 我慢できるわけもなく、叫ぶように彼女は言った。提督は何も言わずにただ眺めているだけだ。 それは指示なく、自分から全てやれという命令だった。 加賀はおずおずと腕をどかした。寝そべった彼女の裸体は、ついに全てが露出されたのである。 羞恥に堪らず目を伏せて、しかしいつまで経っても期待した体温は感じられない。 提督は依然として、その綺麗な肌を立って眺めるだけであった。 沸騰した頭では何が駄目なのか、彼が何を期待しているのかも分からず、ただ不安だけが増大していく。 見下ろされるだけの寂しさは、ついに彼女の限界を超えて涙を競り上がらせる。 「お願い……来て」 涙声による懇願に思わず足が動きそうになったのを、提督は何とか押さえ込んだ。 本当はこの先まで一人でと思っていたが、流石にそこまで察せられるわけはなかったようだ。 彼は加賀に近づき、すぐ横にしゃがみこんだ。 「自慰をするんだ」 潤んだ瞳が、ゆっくりと提督の顔に向いた。頭を撫で口調は優しく、しかし命令は鬼畜なものである。 彼女は首を横に振るが、当然それは受け入れられない。 「なら、終わりにするか?」 加賀の喉が動いたのが、いやに艶美だと感じられた。許してと口から漏れ出した声は、完全に無視をされる。 彼女はぎゅっと目をつぶり、目尻に溜まっていた涙が頬を伝い落ちていった。 葛藤に決着がついたのか、彼女は一回深く呼吸をすると、意を決して陰部に自身の指を持っていく。 陰唇がなぞられると、肩がぴくんと跳ね上がった。 声が上がらないよう必死に口を噤む表情は、それはそれで官能的ではあったのだが、提督はもっと淫らによがる彼女を見たかった。 普段取り乱さない彼女の痴態は、恐ろしく魅力的だろうと思ったのである。 何とか命令という形は取らず自発的にそうなるようにさせたいと、そう考えを廻らすとある一つのアイデアが浮かび出た。 それは特に何か大掛かりなことをするわけではなかった。 ただたまに彼女が我慢できず小さく嬌声を漏らすと、そのたびそれを褒めるかのように口付けをしてやるだけであった。 或いは、胸の膨らみをなぞってやったり、そういった焦らされている状態をほんの少しだけ緩和してやる。 四、五回もそういう刺激を与えてやれば、効果は目に見える形で現れ始める。 知らず知らずのうちに彼女はより大きく声を上げ始め、快楽を貪ることへの抵抗がみるみる減っていったようだった。 「随分大胆になったな」 そう言って羞恥を煽ることも忘れない。言わないでと喘ぎ声交じりに言葉が漏れ出して、その表情たるや艶麗の極みであった。 言動と行動は最早一致せず、悔しさの溢れる顔はしかし、多大な興奮の元蕩けきっていた。 限界は意外なほど早く訪れた。駄目駄目と連呼しつつも指は激しさを増していって、そんな状態で我慢などできるわけもなかった。 加賀は一瞬体を強張らせたかと思うと、次の瞬間にはびくびくと小刻みに体を震わした。 大きな声が部屋に響く。外の暴風の騒音がなければ、廊下にまで鳴り渡ったのかもしれないほどの声量だった。 しかし肩で息をする彼女に、もうそんなことを意識する余裕はなかったのだ。 「提督ぅ……」 弛緩した顔がゆったりと彼の方を向く。あられもない甘えたような声音は、初めて聞いたものであった。 思わず背筋がぞくり鳥肌立つのが、いやに生々しく感じられた。 提督は無遠慮に彼女に覆いかぶさった。ようやく得られた、望んでいた温かみ。 その歓喜を感じつつ、しかしだからこそ満足はできなかった。更なる快楽を、深い悦を求めて彼女の肉壷は愛液を滴らせた。 ・ ・ 一体何回まぐわったのか。最早記憶には無かった。 翌日寝具の中で目覚めた提督は、自分がぽつねんと一人で横になっていることに気が付いた。 ベッドの右手側、やけに開いたスペースにはまだ体温の残滓があり、そしてそこには彼女の匂いが、かすかにまだ残っている気もした。 だが執務室に人影は無く、随分と物寂しい印象を抱く。 実はこの部屋に艦娘を泊めるのは、鎮守府内の規定で禁止させられていた。真面目な彼女のことである。 恐らくはそれが露見しないうちに、一人で部屋に帰っていったということらしかった。 時計を見ると、起床時刻まではまだ大分余裕がある。 しかし二度寝をしようと瞼を閉じても、温もりへの侘しさが睡眠を猛烈に邪魔したのであった。 彼はひたすら彼女の残り香を嗅ぎつつ、何故か溢れだしてくる涙を枕にこすり付けていた。 2 朝食時、提督は今日の任務について艦娘全員に指令をだした。 即ち、遠征を含む全ての出撃の中止及び鎮守府を総動員しての雪かきのことについてである。 記録的な大雪によって、普段見えている事が当然と思われていたアスファルトは全て白に覆われていた。 提督は窓越しにしかそれを確認しなかったが、恐らくは屋根にもずっしりと積もったはずである。 雪なんか滅多に降らないこの地方では、その光景はかなり異様なものであった。 慣れない作業になるから気を付けるようにと、最後忠告する前に既に駆逐艦のほとんどは姦しい歓声を上げていた。 まるで小学校の体育が例外的に雪合戦になったかのような、提督にはそんな光景に思えたのだ。 彼女達は普段より大分早く皿を片付けると、駆け足で外に飛び出していった。 駆逐艦他、幼い艦娘は地面を、はしゃぐこともない大人達は屋根を担当した。 提督はと言うと一番危なっかしい場所あたり、具体的には港の岸壁を見守りながら、時折手開きになると付近を除雪していた。 それは一見楽な仕事にも思えるが、実際はかなり神経を使うものであった。 かき集められた雪が排水溝を詰まらせると、もう後は海に捨てるしかないのである。 大はしゃぎな彼女達に注意をしても馬耳東風なのは当然であるから、 艦娘が海に近づくたび落っこちやしないかと心拍を上げ続ける羽目になるのだ。 後半になってくると提督は実質的に、最後集められた雪を海に投入する係りになったのであった。 天気に恵まれ、雪質は柔らかかった。作業は滞りなく進み、明四ツ過ぎには全体の六割ほどの雪を掻きだし終えていた。 そのあたりになってくると、提督は眩暈にも似た気持ち悪さを腹の底に感じるようになっていた。 月月火水木金金、休みなく働いていた彼にとってこの肉体労働はたしかに酷であったのだ。 デスクワークを飽きるほどに続けた後の外仕事というギャップは、何やら頭に負担を強いるらしく、 それでも駆逐艦に危険を冒させるわけにはいかないために頭痛は我慢するしかない。 作業のほとんどが終わった頃合、執務室の暖炉を恋しく思う提督に突如声がかかった。 「提督! こっち向いて!」 おそらくそれは雷のものであった。声のした方向には背中を向けて、彼は目下の海に雪を廃棄している。 声音にはいたずら心が多分に入っていた訳であったが、しかしそういった危機感が完全に消失するほど、 今の提督は何も考える事ができないでいた。 ゆったり振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた第六駆逐隊が、雪玉を抱きながら横一列に並んでいる。 彼女らの腕が振りあがり雪礫が一直線に向かってくる段になって、ようやく提督は状況と、彼女らのしたい事が理解できたのであった。 投げられた雪は右肩と腹の他、顔面にも見事にヒットした。 覆われた視界にバランスが思った以上に崩れ、彼は思わず背から転倒してしまう。 雪の隙間から、青い空がくるりと回転し、気がつくと背中に衝撃があったのだった。 雪を投げた張本人達から可愛く悲鳴が上がるのを、提督は苦笑しながら聞いていた。 しかしその悲鳴は決してオーバーなものではなかったのだと、数瞬後には身に染みて理解することになる。 背中に衝撃を感じた後、何故か更に浮遊感があった。景色が空どころか、更に反転して海さえ視界に入ってしまう。 自身が真っ逆さまになっているのだと本能的に気が付けはしたが、しかしその理由まで瞬時には分からなかった。 頭上がキンと冷たくなり、そこでようやく自身がアスファルトの淵から海へ転落しようとしていることに彼は気が付いたのだった。 瞬時に全身が鳥肌立ち、痛いほどの冷たさが容赦なく彼を包み込んだ。 息を止め目を瞑り、着水の柔らかさの中遮二無二もがき続ける。最早彼にできる事はそれだけであったのだ。 ・ ・ 救出された直後のことを、提督はよく覚えていなかった。 海に落ちた次の瞬間には自分は熱い風呂に浸かっていて、やたらに震える体を何とか温めているという、そんな場面に繋がるのだ。 きっとずぶ濡れのまま脱衣所まで歩いてきたはずなのだが、そういった記憶は皆無だった。 頭痛は更に酷くなっていた。気持ち悪さも相変わらずだった。そこに止まらぬ震えが加わって、体の具合は最悪である。 しかし思い起こせばここ最近、体の調子がいい日というのを体感した覚えはない。 倦怠感や疲労感との付き合いが始まったのは、もうかなり昔のことだった。 口から零れだす咳はやたらに喉を痛めつけ、虚弱な体質を心の底から恨めしく思う。 震えが少しはましになると、提督は重い腰を何とか上げた。手早く体を拭いた後、脱衣所に戻り用意された服を着る。 そこにはいつもの軍服ではなく寝巻きが置かれてあって、しかも温かな半纏まで鎮座していた。 全て着込むと湯の熱が、体に閉じ込められるようでもある。 ふらつく足で執務室まで戻り何とか扉を開けてみると、そこには予想通りな、しかしそれでも気まずい空気が重く漂っていた。 まず目に飛び込んできたのは、床に正座させられた第六駆逐隊の背中であった。 肩の震えから全員が泣いているのであろうことは容易に想像することができて、とくに暁は最早痙攣の域である。 ごめんなさいと連呼される、その空虚な響きは何とも痛ましく、聞いてられない悲痛さであった。 そして正面、いつになく険しい表情の加賀は鬼の風格を醸し出している。 一睨みされただけで、何も悪いことをしていなくとも即刻謝る気になるほどの、そんな凄みが発せられていた。 「戻ったよ」 提督はなんとかそう声を出す。一斉に振り返る駆逐隊の面々、その表情はメシアを見るそれであった。 彼は近づきひとりひとりの頭を撫でようとして、しかし鋭い底冷えする声音がそれをぴたりと制した。 「待ってください。まだ説教が終わっていません」 一瞬で絶望の表情へと切り替わった彼女らに、思わず笑みも浮かんでしまう。 提督は仲裁の役目を買って出て、加賀を嗜めることにした。 「もういいよ。充分反省しているだろう。これ以上は流石に可哀想だ」 「下手すればあなたを殺していたのかもしれません。反省だとか、そういった甘さで許される話ではないわ」 「許してやってくれ。頼むよ。ほら、一応俺は生きているんだから」 よしよしと四人の頭を撫でてやれば、彼女はばつの悪そうな顔をしてぎゅっと口を噤むのだった。 しばらくの沈黙の後、加賀は失礼しますと小声で言って、執務室をあとにした。 彼女が消え去った途端、体は四人の体温に一斉に纏われた。 口々にごめんなさいという言葉が発せられて、次第にそれは嗚咽の泣き声に変わっていく。 鉛のような頭を何とか持ち上げ、彼はずっとその場に立っていた。 3 風邪をひいたらしかった。 それは予想の範疇の出来事であったのだが、しかし医師の所見によるとそれ自体が問題なのではないらしい。 最初その言葉の意味を提督は理解できていなかったのだが、 時が経つにつれて段々と、その含みの部分が否応なく自覚されるのであった。 一日寝込むと具合は少しは良くなって、熱も微熱といえるぐらいには下がったために、提督は仕事に復帰した。 加賀はまだ寝ているよう進言したのだが、それを聞き入れてやるのは不可能だった。 というのも、たった一日空けただけで、鎮守府全体の仕事のルーティンに歪が生じていたのである。 提督という職が統括という任務を負っている以上、それは仕方のないことであった。 何をするにしても、提督が不在なのではどうしようもなくなってしまうのだ。 万全とは言えない体調で、しかしそれはここ最近の普通であったから辛さを我慢することにも慣れていた。 ふらふらになり倒れてしまうというほど重篤な症状はなかったし、仕事の内容も肉体との戦いと言うよりは精神的な、 自分との戦いであったから何とかこなす事ができたのだ。微熱と倦怠感に纏われ続けながら、提督は毎日粛々と仕事を続けていった。 風邪の発症から一ヶ月が経っても、まったく微塵もそれが治る気配は感じられなかった。 別段それくらいどうでもいいと思っていた提督を他所に、 加賀はかなり心配をしてその感情は乾いた咳の咽る音が聞こえるたびにどんどんと増大していった。 いつか倒れてしまうのではないかという彼女の不安は、彼を側で見続けた者なら誰しも思うことであった。 そしてよりにもよって、その不安は記念すべき西方海域完全攻略の日に的中することになる。 ・ ・ 医務室の天井、蛍光灯の明かりを見ながら、提督は医師から状況の説明を受けていた。 なんでも、そもそも朝から青白い顔が目立っていたと、加賀は言っていたらしかったのだ。 帰投した第一艦隊はその戦果を嬉々として報告しようと執務室の扉を開け、そこで机に突っ伏していた提督を発見した。 鎮守府は全体が騒然となり、艦娘が騒がないようにするのにはだいぶ労をとったという。 医務室に担ぎ込まれたのは二時間前。所見は過労。結核や白血病の疑いは低い。 治す方法はここを辞めることだと、医師は淡々と話していた。 とりあえず動けるようになるまでは、ずっと横になっていた。 これからのことを考えようとしても、頭には靄がかかっていて中々思考は捗らない。 思い浮かんだ考えは、全て頭頂部からだばだばと漏れ出しているかのようでもある。 結局立ち上がることができるようになるまでに、靄が晴れることは無かった。 重い体を引きずり、執務室へ向かう。目の前に立ちはだかったどうしようもない現実は、だが自身で予見していたものでもあったのだ。 今の生活が長く続くわけはなく、後に残されたのは弱った身体と、断ち切らなければならない絆の数々であった。 階段を昇り、上がった息を整えながらよたよた廊下を進んでゆく。 ぼやけた視界には赤い絨毯と白の壁しか映っておらず、 もしかしたらこのまま永遠に執務室にはたどり着けないのではないかと思えるほど、その光景は長大なものであった。 ようやくある程度まで歩き終えると、執務室の前、セーラー服の艦娘が壁に背を付け立っているのが目に入った。 手元には大きな茶封筒が、とても大事そうに抱えられている。 提督はすぐ近くにまで寄ってからその艦娘、雷に声を掛けた。 「俺を待ってたのか?」 雷はその言葉を聞くと、顔をゆったりと彼の方へ向けた。その表情は悲壮に歪み、目には涙が湛えられている。 彼女は手元の茶封筒を差し出した。 「さっきここに届いた書類よ。加賀さんの目に付く前に渡さなきゃと思ったの」 受け取り、意外な重みを腕に感じる。既に封は切られてあって、恐らくは雷が先に目を通したのであろう。 それは彼女がこの書類から嫌な予感を感じたということであって、そしてそれは提督とて同じである。 中の書類に一通り目を通す。予感が的中していることは、雷の表情から確定的だった。 それでも俄かには信じられない、信じたくないという気持ちが先行していたために、 書いてある内容は非常にショッキングなものであったのだ。 「随分と、まぁ……」 提督は、ようやくそう一言声を発する事ができた。書面に書いてあったその人事は、客観視するならば非常に都合が良い。 感情のこと、この鎮守府内の関係を除けばすばらしい案でもある。 重病の為空いてしまった海軍兵学校の校長職に、この鎮守府の提督が補される。つまりはそういうことであった。 それは西方海域攻略の労をねぎらうものであり、そして過労という病気を治すためのものでもある。 逆らうには健康が余りに足りていないということを、彼は自覚していた。 ここに残り、今後もいつも通りに仕事がこなせるという確たるものを見せなければ、この人事は取り下げられないであろう。 提督職の終端が、今ついに訪れたのであった。 「……すまない」 不甲斐なさに唇を噛み、拳を握りしめながら、提督はそう口から漏らした。 雷は彼の肩に手を置くと、そのままゆったり体重を掛ける。 そうして膝が折れ、背の低くなった提督の頭は彼女の胸へと導かれたのであった。 髪が細い指に梳かれ、何も言わずにただいつも通りに抱きしめてくれる。 提督は腹の内から漏れ出そうとする嗚咽を、我慢する事ができなかった。 シンとした廊下にそれは小さく響き、そしていつしか泣き声は二つに増えていたのである。 互いの体温を感じながら感情は声と涙になり、そううしてそれは途切れることなくいつまでも漏れ出していた。 4 人事のことについては、天龍と不知火には心持軽く話す事ができた。 それはこの二人と体を重ねたのは、恋愛的感情の発露からではなかったからだ。 あらゆる欲求の不満を解消するために、その捌け口として夜伽という手段を選んだだけであったので、ショックも少なかったのである。 それでも告白したときには、二人は悲しんでくれたのであった。 それを嬉しく思う反面罪悪感も生じる訳だが、それさえ彼女達は慰めてくれた。 いつか訪れるはずの事が今来てしまっただけだと、そう言って納得を得るしかない。 割り切るという痛みは、しかし受け入れ耐え忍ぶしかないものだった。 問題は、加賀であった。依存性、そして恋愛感情のことから、もっとも気を遣わなければならないということは理解していた。 この話をどう切り出すべきか、迷いに迷い頭を捻り、しかし何時まで経っても解答は得られない。 提督は自身のしてきた罪の重さを、再認識する羽目になっていた。 結局機会を待ちに待ち、ようやく切り出したのは鎮守府を去る一週間前であった。 その日の夕方、時間がないために後は正直にただ言うしかないと、そういう諦観を持って彼は加賀を執務室に呼び出したのであった。 窓から差し込む夕日の光を受け、彼女はただ目の前に突っ立ている。 彼女が出頭してからというもの沈黙は長く続き、二人とも何も言葉を発せていない。 痛いほどの静寂が、掌に感じる汗の滑りが、物憂げな表情が、全てが提督には辛く思えた。 「少し、大事な話がある」 深呼吸の後、彼はぽつり何とかそう言う事ができた。加賀は細められた目を逸らし、掌をぎゅっと握りこむ。 彼女とて、およそ話の内容に察しはついていた。だが自身の矜持が、それを容認することを拒むのだ。 もしかしたらという期待を捨てることはできず、勝手な妄想は確固たる意思を持って、彼女の脳内にへばりついている。 「実は、ここを辞することになった」 とうとうそれを口に出すと、不気味な静寂が再び部屋を支配する。 一体どれほどそのままであったのか、提督にはもう分からなかった。もう彼にできる事は待つ事だけであったのだ。 そしてたとえ何と言われようとも、結末はたった一つである。これほど悲しいこともないと、自嘲気味に思い続けていた。 一方、ただじっと同じ体勢で立ち続ける加賀は、様々な思考の果てについに口を開く決心をした。 それが受け入れられる可能性がゼロであったとしても、それでも自身の感情に背くことはできなかった。 そういった覚悟の上、静かにその言葉を言う。 「許しません」 聞くや、提督の目は見開かれた。彼女はそれを眺め、畳み込むように続けた。 「仕事は全部私がします。だからあなたはずっとここにいて。ここを去るなんて、絶対許しません」 何か言うたび、加賀の瞳は激情の色を濃くしていった。心中の思いが轟々と煮えているのが、外見からでも分かってしまう。 それは怒りというには余りに悲痛な代物であった。 「悪いが、これは既に決定してしまったことだ。今更どうしようもない」 提督はあえて非情に言い放つ。言いたくない台詞ではあったが、これは無理にでも納得してもらうしかないのだ。 だがそれは、燻り燃えていた感情に油を注ぐこととなってしまった。 加賀は一瞬、大仰に息を吸ったかと思うと怒りのままにそれを叫んだ。 「ふざけないで!」 突然の怒号は窓ガラスをびりびりと震わせた。 加賀は顔を赤くし、口をわなわなと震わせながら提督を睨んでいる。 提督は心拍が上がったことを悟られないように、まったく動じず座っていた。 「今更あなたと別れるなんて、私無理だわ!お願い、ここにいて。なんでもするからここにいてください」 「お前だって、いつかはこういう日が来ることくらい知っていただろう。俺のしてきた勝手は謝る。だが、命令だ。納得しろ」 「嫌です!」 加賀の瞳から、涙が零れ落ちた。一滴が頬を伝うと、堰を切ったかのようにそれは次々あふれ出す。 彼女は嗚咽を堪えながら、何回も嫌ですと繰り返していた。 「提督は、私のことを忘れてしまいます」 喘ぎ喘ぎ、手で目元を隠しながら彼女はそう口にした。 提督はその意味が、加賀が一体何を恐れているのか、その本心が掴めないでいたのだ。 あるいはそれを知られていたからこそ、より一層彼女を傷つけていたのかもしれない。 「そんなことはない」 「いいえ! 絶対忘れるわ。そしていつかは別の人と結ばれて、私を記憶の隅に追いやって、勝手に幸せに暮らします」 「俺は結婚する気はないし、もう二度と女は抱かない。君達が最後だ」 「嘘よ!」 これが依存性の発露だと気が付いたのは、頭に上った熱が引いてからであった。 喚く彼女を窘めたくて、しかし本心を吐露してもまったく信じてはくれない。それは酷く口惜しく物悲しいことであった。 「……証明して」 泣き声が収まってから、彼女は静かに言った。 「他の人とは結ばれないというなら、証明して。でないと私、許すことなんてできないわ」 沈黙。提督は必死に頭を絞ったが、それに答える事はできなかった。 しばらく経つと加賀は踵を返し、嗚咽を漏らしながら歩き出してしまう。 それを引き止める事はできず、ただその背中を見続けていることしか彼にはできなかった。 ・ ・ 愛の証明について。彼は机の前に座ったまま、ずっそれを考えていた。 彼女が納得を得られないまま逃げるようにここを去るのだけは、矜持が許しはしなかった。 そのために払える犠牲があるなら何だって甘んじて受け入れる覚悟を、彼は確かに持っている。 しかしその具体的方法は、一向に頭に浮かんでくれない。 日が沈み部屋は暗くなり、そういった環境が少しはいい方向に働きかけたのか、提督の頭にはある一つの小説が思い起こされた。 ずっと昔に読んだことのあるその掌編には、今の彼らと同じく破滅の途上にある二人の関係の、その終端が描かれていた。 そしてそこに至る前に行われた、証明をする方法の克明な描写が、提督の頭には思い出されていたのだ。 いや、それはその小説に描かれる前より、ずっと昔から人々がやってきた事なのだ。 一種の残虐性の上に立つその方法は、しかし確かに確実だった。 迷っている時間は無かった。他に方法を発見できる気もしなかった。提督は意を決すと暗闇の部屋の中、物置に向かって歩き出す。 擾々とした物置の隅、目的のものは小さく、しかし存在感を持って鎮座していた。黒光りする鞘に侘しい装飾のついた柄。 一振りの軍刀はここに着任した際に、その記念に受領したものである。 提督はそれを引っ張り出し、しかしそれだけでは余りに準備不足であったから、更に必要なものを捜していく。 誰にも理解されないことなのかもしれなかった。しかしそれでもいいと、彼は本心から思っていた。 それは彼にとってどうしてもやらなくてはならない事であるし、最早自身の満足を得るには、罪を罰する痛みしかなかったのだ。 馴染みの机の上には、物騒な代物が並んでいた。 軍刀、小刀。アルコールランプとマッチ。清潔な布巾がざっと十枚。医務室に忍び込んで、こっそりと盗み出した止血剤。 ぼんやりと熱を持った頭でゆっくりと深呼吸すると、ただ目的を達成するという意思だけが前面に現れたようだった。 提督は布巾の束から一枚を口に咥えると、軍刀の柄をゆっくりと握りこむ。 鞘から刀身を抜き放ち、火の着いたアルコールランプにそれをかざす。熱消毒の終わった刃は、月光を青白く反射していた。 二、三枚の布巾を机の上に置き、提督は人差し指から小指までを更にその上に置いた。 親指は机を挟み込むように下にあって、ぎゅっと力を加えている。 歯を食いしばり意外なほど冷静な思考を持って、刀を大きく振り上げる。 狙いは第一関節と第二間接の間であった。そこを斜め一直線に、四本全てを切り落とす意図である。 四人を抱いたのだから、一本では足りないはずであった。 短く息を吐き、まるで鉈を扱うかのように振り下ろした軍刀は、指の三分の一ほどを切り込むとそこで停止してしまった。 意外なほど痛みはなかった。刃と指との隙間からは真っ赤な血が漏れ出し始めている。 そのグロテスクな光景とは裏腹に、本当に何も感じられなかったのだ。 そしてそれはほんの少しあった後悔の気持ちを、完全に消失させたのであった。 包丁で堅い大根でも断ち切るかのように、彼はぎゅっと軍刀を押し込む。 刃は肉と骨とを断ち割り進み、そしてついに指先は四個のただの肉塊となった。 断面からは、想像以上に血が噴き出していた。提督は残る全ての布巾で、傷を強く押さえ続ける。 何時間かずっとこのままでいれば、いつかはどうにかなるはずだ。 これは個人で解決しなくてはならない問題であるから、医務室に行く気など欠片もなかった。 やり遂げたという充足感。だが血が抜けたためか、心の隅で急に自嘲の念も沸き始める。 自分ができる精一杯が、たかだかこの程度の女々しい芸者の心中立ての真似事だという現実は、歯がゆい思いを伴っていた。 じくじくと今更になって痛み出す指は、ひどく恨めしかったのだ。 どれほど時が過ぎたか、突如扉がゆっくり開いた。反射的に見た時計の時刻は、既に夜中といえるものであった。 訪問者が誰であるのかそこから予想はすぐに着き、そしてそれは今一番出会いたくない人でも会ったのだった。 加賀は薄暗い部屋の中、血生臭い匂いにただならない異常を感じ取っていた。 机の上の物騒な品の数々は、一歩部屋に入れば全て見て取れて、 この部屋に訪れた目的である謝罪だとかそんなことは一切まったく頭から消失した。 「何を……しているの」 呆然と言ったそれに、答える声はない。 早足で机に近づいた彼女は、真っ赤な布巾の数々と、血が抜けて真っ白になった指先をついに見つけたのであった。 愕然とした表情の加賀を見て、提督は何と言葉をかければいいのかまったく分からないでいた。 とりあえず気にしないでくれと言おうとして、しかしそれは加賀の叫びが遮った。 「何をしているの!?」 顔を上げると、彼女の瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちていた。 それを拭おうとして、だが自分の手は血まみれであった事が思い出され、どうしようもなくなってしまう。 そんなことをして欲しかったわけじゃないと、そう呟かれる言葉に提督は、それは違うと思ってしまう。 これは自分がやりたくてやったことであるから、加賀が泣くことはないはずなのだ。 やるせなさが心を締め付け、指の痛みなんかよりも、よっぽどそれが辛かった。 「早く、医務室に行きましょう! 早く!」 加賀ははっと何かに気がついたかのように、そう提督を急かし始めた。だが、それは拒否しなくてはならないことである。 自分が最後までやらなくてはならないことだと、そう何度も説明しても、彼女は首を縦には振らなかった。 いつしか提督の意識は薄れ始めていた。失血か、それとも過労の風邪がぶり返したのか。 最早判別はつかず、それでも彼女を思う気持ちだけは確かであった。 「加賀、愛している」 何とか口にできたこの言葉は、彼女の胸を静かに打った。 5 バッグを抱え外套を着込み、提督はこざっぱりとしてしまった執務室を出た。 馴染みの装飾品は最早無く、それはとても悲しい光景だった。 戸を開けてすぐの所には、雷が立っていた。彼女は提督が現れた瞬間、その体に突撃するように抱きついた。 提督は彼女の頭を撫でた。最後になる髪の感触に愛おしさを覚えながら、体温と匂いを記憶に刻む。 お互いに涙が出ないのは、既に涙腺を枯らしたからだ。 しばらく経って、雷はおずおずと提督から離れた。言葉は無く、真摯な視線だけで充分だった。 踵を返し歩き始めた彼の背中を、いつまでも見つめる。彼女もそれで満足だったのだ。 鎮守府の出入り口には不知火と天龍がいた。 廊下の端からこの二人が話している様子は見てとれて、そして提督にとってそれは初めて目にする光景でもあった。 今更ではあったが、それは暖かい気持ちにさせるものである。手を振ると、二人仲良くそれに応えてくれた。 抱擁を済ませ、キスもする。柔らかな感触は名残惜しく、それでもお互いに一回きりだ。 彼女らも言葉なく、黙って見送ってくれたのであった。 あの夜以来、加賀とは口を聞けていなかった。 彼女は自身の部屋に篭ってしまい、視線を合わせさるような機会さえ無かったのである。 そしてそれは仕方の無いことだと、提督は思っていた。愛おしい彼女の面影を思い浮かべながら、いつかは立ち直って欲しいと願う。 そしてその役目は自分には無く、後継の提督の任務なのだと、彼自身一番に理解していた。 迎えの車に乗り込んで、鎮守府には一瞥もくれずただただそこを去っていった。胸に空いた空虚な穴は、その暗がりを広めるだけだ。 「体の具合が良くなったら、またここに戻ってくるのですかな?」 気さくな運転手がそう声を掛ける。提督は静かに首を横に振った。 「ここの潮風に当たると、無くした指が痛むのです」 車は加速し、いつしか鎮守府は見えなくなる。アスファルトの隙間からは、気の早い蒲公英が顔を覗かせていた。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/618.html
688 :舟屋の提督と吹雪 ◆OkhT76nerU:2015/01/08(木) 22 41 25 ID QBUoNXaw 人と寸分違わぬ形を持ち、人の言葉を理解し、人のように感情を持ちながら 人ではない兵器という存在。 人を遥かに凌駕する戦闘能力を持ちながら、その肌は滑らかで柔らかく 温かい血の通った肉体は人の女と何ら変わるところがない。 それなのに“彼女”たちが人として扱われないのは、謎に包まれたままの出自が 人類の敵である“深海棲艦”と同じであると未だ信じられているからかもしれない。 ◆ 艦娘で構成される艦隊の根拠地が鎮守府と呼ばれ、艦隊司令官が提督と呼ばれるのは 海軍の伝統にならったもので、この国には軍港並みの規模を誇る鎮守府が何か所かある。 だが我が国の長大な海岸線をくまなく守るためには到底足りず、主要な鎮守府の間隙を 埋めるべく中規模の拠点が各地に配置され、さらに敵襲の可能性が少ない僻地には 小規模で練度の低い艦隊が見張り番程度に配備されているのが現状である。 そして俺の指揮する艦隊、配備されたばかりの駆逐艦1隻でもそう呼ぶならだが、 放棄された漁港の古びた舟屋を本拠地としていた。 住めば都とはよくいったもので、海に直結した一階は艦娘の出入りに便利だし 司令部兼住居の二階窓はのどかな湾を一望にしながら釣りを楽しむことができ、 今日も窓から釣糸を垂らしながら訓練に勤しむ艦娘を眺めていた。 「しーれーいーかーん! 今日の晩ごはん、釣れましたかー」 「大声出すと魚が逃げるだろ。晩飯抜きになってもいいのか?」 「ごはん抜きで困るのは提督もですよ」 「俺が抜きなら吹雪も補給抜きな」 「もう、横暴だなぁ……倉庫に糧食あるじゃないですか」 「あれ旨くないんだよ。それよりお前さ、沖に出てマグロでも狩ってこい。 今日の訓練はそれで上がりにしていいから」 「マグロですね! 吹雪、了解です!」 「暗くなる前に帰ってこいよ……」 吹雪は舟屋の軒下ぎりぎりでターンを決めると、綺麗な弧を描いた航跡を伸ばしながら 外洋に向けて海面を駆けていく。 その後ろ姿を見送ってから何の気なしにヘッドセットをつけ釣竿に意識を戻す。 本来は艦娘とリンクする通信装置だが、鄙びた海ではこういう時しか使い道がない。 ≪司令官、マグロってこの前カイテンズシでごちそうになったあれですよね≫ そうだ。でもあんなのが泳いでいるわけじゃないからな ≪それくらい知っています。マグロって黒くて大きいおさかなですよね?≫ そうだ。食えれば別にマグロでなくてもいいけどな。あと武装は使うなよ 吹雪の武装で魚が捕れるかどうか以前に、マグロなんぞがここらの海にいるわけない。 索敵兼航走訓練といえば聞こえがいいが、陸で遊ばせるよりましという程度のことだ。 週末でもあるし、提督手作りのカレーライスで日頃の苦労をねぎらってやろうかと 思いかけたとき、吹雪から交信が入る。 689 :舟屋の提督と吹雪 ◆OkhT76nerU:2015/01/08(木) 22 43 14 ID QBUoNXaw 《目標発見、方位1-8-5》 何だって? 繰り返せ吹雪、目標って何だ? 《……前方……メートル……黒く…………大きい!》 どうした吹雪、途切れて聞こえない! 一体何を見つけた、繰り返せ! 突然混じりだしたノイズが邪魔するが、緊迫した口調から事態の急だけは伝わってくる。 もしかしたらという予感は一番嫌な方向に的中した。 《……棲艦、…く………イ級!》 いかん吹雪、交戦せず回頭しろ、繰り返す、戦わず逃げろ! 《……ぅかい、……いっけ…………!》 馬鹿、違う、戦うんじゃない、戻れ吹雪! 演習すら参加したことがない吹雪にいきなりの実戦は荷が重すぎる。 それが撤退命令を下した理由だが、ノイズの向こうで砲撃が始まってしまえば あとはもう祈るしかなかった。ここにはまだ艦娘の視界をモニターできる装置は 配備されておらず、交信が遮られれば戦況を把握する手段は一切ない。 永遠にも思えた時間(実際には5分にも満たない時間だったが)のあと 突然ノイズが消えヘッドセットからクリアになった吹雪の声が飛び込んできた。 《……ハァ、ハァ……敵、イ級駆逐艦一隻撃沈……》 吹雪、無事なんだな? 《は、はい……司令官。わ、わたしやりました!》 双眼鏡に浮かんだ艦影にも損傷を示す黒煙は写っていない。 それを見届けると俺は一階に降りて吹雪の帰投を待った。 戻ってきた吹雪に手を広げてみせると、まっすぐ懐に飛び込んできた彼女を しっかり抱き留めた。 「し、司令官………濡れちゃいますよ」 「構わん、それより報告は」 「第一艦隊、吹雪、無事帰投しました……」 「ご苦労。いきなりの実戦で敵艦撃沈、見事だったな」 「えへへ……少し怖かったけど頑張りました」 強がってみせた吹雪の小さな体にはまだ震えが残っており、緊張が緩んだのか 腕の中でぐったり力が抜けると気を失っていた。 修復ドックに横たえ損害具合を調べてみるが、幸い肉体に及ぶダメージはなさそうで スカートの端が焦げて綻んでいるのは至近弾の爆風のせいだろう。 これなら修復にもそう時間はかからないはずだ。 俺は吹雪を起こさないよう静かに修復ドックのふたを閉じると台所に向った。 690 :舟屋の提督と吹雪 ◆OkhT76nerU:2015/01/08(木) 22 43 58 ID QBUoNXaw 「司令官、この匂いはカレーですね!」 「起きたか吹雪。具合はどうだ、どこか異常はないか?」 「はい、なんともありません」 「まあなんだ、初戦果の祝いにはしょぼいけど勘弁してくれ」 「そ、そんなこと……戦果は司令官のおかげです」 「いや、吹雪はよく頑張ったよ。とりあえず座って食え」 元気を取り戻した吹雪は甘口にしたカレーをふーふーさまして食べながら、 テーブルに箸置きを並べて戦況の説明をしてくれた。 艦隊からはぐれたのか、こちらの勢力圏とは知らず呑気に遊弋していた敵艦と それをマグロと誤認して手捕りにしようと追いかけ始めた吹雪。 先制こそ敵に許したものの、正確さを欠く砲撃をぎりぎりで回避して肉薄して反撃、 初弾を命中させ中破に追い込むと、逃げ始めた敵にとどめの雷撃を放って見事撃沈、 ということらしい。 笑顔で報告をしめくくった吹雪だが、かすかな表情の変化と手の震えを見てしまえば 彼女たち艦娘を人ではない兵器と割り切ることは俺にはできそうになかった。 就寝時間になっても居間でぐずぐずしている吹雪を見て本日最後の命令を出した。 「あ、あの……本当にお邪魔していいのですか?」 「遠慮するなって。それとも吹雪は嫌か?」 「そそ、そんなことありません!」 彼女はぶんぶん首を振ると、自室から持ってきた枕を抱きしめ毛布に入ってくる。 遠慮してかベッドの端に横たわった吹雪を引き寄せ、小さな背中にそっと手を当てる。 その柔らかく温かい感触、そしてほんのり甘酸っぱい体臭は女の子そのもので、 乾いた髪から漂う潮の香りにはどこか懐かしい感じすら覚える。 「……司令官の手、あたたかいのですね」 「今日は怖かったろ、吹雪」 「え、えへへ……そ、そうでもないですよ」 「無理しなくていいんだからな」 「じゃあ、怖いときは……また一緒に寝てくれますか?」 真剣な目で俺を見つめるその頬を出来心でつついてやると、ぷくっと膨れながら もぞもぞと胸元に潜り込んでくる吹雪。 その背中をあやすように撫でているうち、眠くなったのか瞼がとろりと落ちていく。 吹雪が完全に眠ったのを確認したのち、その頬にキスをしてしまったのは あくまで親愛と賞賛のためであって、決して疾しい気持ちからではない。 だから回数が少々多かったのは……大目に見てもらいたい。 691 :舟屋の提督と吹雪 ◆OkhT76nerU:2015/01/08(木) 22 44 40 ID QBUoNXaw しばらくは外洋に出さず湾内で訓練に明け暮れていた吹雪。 その彼女と同じ寝台で眠るのが習慣となって続いているのは、寒い折お互いを 温めあうという目的もあったが、そういう状況に慣れてしまえば吹雪が艦娘という 兵器であることを忘れ、一人の少女として見てしまいそうになっている。 明るく屈託のない吹雪の笑顔のおかげで邪な感情は抑えられてはいるが ほとんどの時間、吹雪と二人きりだという状況が徐々に理性を蝕みつつある。 あの夜以来、吹雪に触れるのは背中か頭をなでるだけに止めていて 頬や唇には一切手を出さないよう自分を戒めていたが 中途半端な禁則がかえって自分を追い込んでいったのかもしれない。 ふと目覚めてしまった夜中。 無防備な寝顔の吹雪、その半開きの唇からこぼれた涎の筋を眺めているうち 気が付けば俺は吹雪に唇を重ね合わせていた。 穏やかな寝息がぴたりと止まって数秒後、吹雪のまぶたが開いて俺を見て。 多分それは笑ってみせたのだと思う。 そのまま何も言わずに瞼を閉じた吹雪の目尻が下がっていたのをいいことに 俺は吹雪の背中をぎゅっと抱きしめ、重ねたままの唇をそっと舌でなぞってみる。 吹雪がもらした微かな吐息。 一時だけ乱れた吹雪の呼吸が元通りになる頃、ようやく俺達は唇を離した。 目を閉じたままの吹雪が眠ったわけでないのはバレバレだったが、あえて言葉はかけず 背中をさすってからおやすみの代わりに頬にキスをしてから瞼を閉じた。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/288.html
559 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/14(金) 00 23 24.10 ID 6WvIPlp3 ────愛している それは一方的な告白だった。 告白というよりは命令と言った方が良かったか。 いや、むしろ脅迫であると言われても否定などできはしなかった。 提督「すまない。お前が断れない立場だと知っていながら・・・・」 提督「だが、私はお前が欲しい・・・!もはやこの思いは抑えきれんのだ」 ??「ッ・・・・」 少女は逃げ出すこともできず、ただ俯いて微かに震えていた。 提督「翔鶴・・・。────上官命令だ。私のものとなれ。」 翔鶴「・・・・!」 今まで伏せていた顔を上げると、少女の涙を湛えた長い睫から しずくがキラキラと落ちる。 ズキリ、と。 胸の奥に鈍く重い痛みを感じる。 しかし、後に引くつもりなはい。 私はこれほどの、・・・発狂して死ぬのではないかというほどの情愛を かつて感じたことはなかった。 それほどに私はこの・・・孫に近い若い娘を愛してしまったのだ。 提督「・・・お前が、欲しいのだ、翔鶴。」 言葉を一つ一つゆっくりと思いを込めてまっすぐに伝える。 翔鶴「・・・・」 少女は胸元で震える手を握りしめる。 視線は低く、思いつめた表情のまま、ただ静かに話を聞く。 提督「一度だけでいい。私を許せないのなら憲兵に突き出すといい。」 提督「お前が私に死ねというのなら喜んで死のう。」 翔鶴「ッ・・・!?」 少女は初めて視線を目の前の男と合わせ、必至に頭を振る。 翔鶴「────わかり・・・ました。」 たっぷりと時間をかけ、少女は覚悟をきめる。 先ほどまで差し込んでいた夕暮れの陽も今はすでになく、 部屋は暗闇が支配している。 まるで少女の今後を暗示したかのように────。 彼女には断ることなどできないとわかっていた。 私を恨むことなどないともわかっていた。 彼女の信頼を利用し、立場を笠に着て、 卑怯で、卑劣な手法で、私は少女を手に入れた。 提督「・・・おいで、翔鶴。」 翔鶴「は・・・ぃ・・・」 消え入りそうな声で返事をすると、少女は男に歩み寄り、 スルスルと服を解いてゆく。 頬に手を添えると、すべすべとした肌とサラサラの髪の触り心地に ぞわりと背筋に刺激が走る。 翔鶴「んッ・・ふぁっ・・・ちゅっ・・・んふっ・・んん・・ふっ・・・ん・・」 優しく口を奪い、彼女のぷっくりとした唇を堪能し、 舌で彼女の口内に侵入しじっくりたっぷりと犯してゆく。 時折ピクピクと閉じた目のまつ毛を震わせ、快楽に抗っているようだ。 翔鶴「んんっ!?んふっ・・・・ちゅっ・・じゅるっ・・・ンーーッ!~~~ッ!」 私は徐々に激しく舌を絡ませ、舐(ねぶ)り、少女の唾液を飲み込み 自分の唾液を押し込んだ。 私にしがみついてビクビクと激しく痙攣して彼女は果てた。 少女の口から舌を引き抜くと、ツツーッと糸を引き、 散々舐(ねぶ)られた舌は快楽のあまりマヒしてしまったのか 口から舌を少し出したままヨダレを垂らす彼女の唾液は 窓から差し込む光で輝いていて官能的だった。 翔鶴「はぁ・・・はぁ・・」 私は彼女が落ち着くまで頭を撫でてやることにした。 翔鶴「んっ・・・」 激しいキスの余韻のせいか、撫でられることすらも快感のようで 彼女は太ももを摺り寄せて上気した顔でこちらを見上げてくる。 翔鶴「ちゅっ」 短いキスの後、彼女は私から少し距離を置き、 静かに覚悟を決めるかのごとく両手を前で組んで、 意を決して、 しかし何かに祈るかのように、私に囁いてきた。 翔鶴「私・・・も・・」 翔鶴「私も、お慕い申し上げています・・・提督」 驚きはしなかった。 私はそれすらも知っていたから。 私を見上げるあの熱いまなざしは、かつての妻と同じ目だった。 私を呼ぶ時の幸せそうな声色は、はにかんだ娘によく似ていた。 私が先に彼女を愛したのか。 はたまた彼女が私を愛したからその視線に、声に私が魅了されたのか。 未だ穢れを知らぬ少女の白く透き通った肌が 微かな月明かりに照らされ、幻想的に映し出されていた。 人の業か、はたまた願いか。 かつての軍艦を人として現世に顕現し受肉せしめる神の御業ともいえる奇跡。 艦娘たちには身寄りはない。 憐れみだったのか、はたまた自分の慰み者にしたかったのか、 私は翔鶴姉妹を自分の屋敷に住まわせ、家族ごっこのようなことをしている。 ごっこというのは、彼女たちはメイドとして住まわせているためだ。 メイド服を着て私の世話をする彼女たちは正確には家族ではないのかもしれない。 しかし、私にとってはかけがえのない娘となっていった。 そう、娘のはずだった・・・。 翔鶴が鎮守府に着任した当初、私は亡くした娘と同じくらいのこの少女を 戦場に送ることに激しく動揺した。 私は軍人で彼女もまた軍属。 詮無きこととはいえ、身を案じずにはいられなかった。 あまりにも眺めすぎたため、「提督…?あの、なんでしょう?」などと 逆に不振に思われたのか聞かれる始末だ。 鎮守府宿舎で寝泊まりするのが普通ではあるが 私は初めて大本営に特例措置を願い出ることとなる。 そう、翔鶴姉妹の身柄を引き受けたい・・・と。 当然そのまま嘆願するわけにもいかず、 苦肉の策として秘書官兼雑務として傍置きにすることとなった。 私は持てる力をフル動員して作戦を立案実行し、 また、彼女たちも私の期待に応えるように戦果をあげていく。 共に暮らすうちに私たちは本当の親子のようになっていくのは 自然な流れだろう。 いつからだろうか、そんな彼女の綺麗な銀髪を見るたびに 私は切なさを覚えるようになっていった。 チリチリと胸を焦がす想いに、私は次第に心が麻痺していったのだろう。 私の本当の娘も銀髪だった。 私の妻はドイツ人で、ドイツでも珍しい銀髪の娘だった。 私はまだ15・6の青年で、彼女は私より年上だった。 「だった」ばかりだが、もう彼女たちはいない。 当時の世界情勢は悪化の一途をたどり、ついに開戦を迎える。 富豪の家の御曹司だった私は父の裏工作により 戦争に行かずにすんでいたのだが戦況は悪化、 私の娘が翔鶴ほどの年齢になる頃にはついに赤紙がやってきてしまった。 私は来る日のために心身ともに訓練に明け暮れ、 こうして準備ができたのは他の者よりも恵まれていたと思う。 私は妻と子を残し一人戦地へと赴くこととなる。 「父さま、お国のために頑張ってきてください。」 普段気弱な娘だが、この時だけは毅然とした態度で送り出してくれる。 そして、これが最後に見た娘の姿となった。 私は終戦後も極寒の地で過酷な労働を強いられていた。 やっと帰国したときには、すでに妻と娘の姿はなく、 消息もつかめずにいた。 私の元に残ったのはこの土地と焼け落ちた屋敷くらいのものだった。 ほとんどの土地を売り、ようやく安定して暮らせるようになった頃、 雇っていた探偵が妻子の情報を持ってきた。 掻い摘むとこんな内容だった。 空襲にて屋敷は全焼、妻は娘をかばって死亡。 生き残った娘は私の家に古くから仕えていたメイドと共に疎開。 戦後まで生き残るも敵国の兵たちにメイドともども強姦され死亡。 強姦した兵は敵国の方により裁かれ、謹慎程度だった。 その兵の言い分は銀髪のいい女がいたので我慢できなかった。 敵国極秘資料より。 とあった。 その時私の心は死んだ。 この世界は狂っている。いや、私が狂っているのか。 そこからの記憶はあいまいだ。 死地を求め常に世界のどこかの戦場にいたことは確かだ。 そして私は祖国の鎮守府の噂を耳にすることとなる。 かつての英霊を鎮めし鎮守府より、魔の海域を開放する 解放戦線の噂だ。 そうして彼女と私は出会う。 まるで娘が生きて帰ってきたと錯覚するほどに生き写しだった。 そして今、私はかつての敵兵が私の娘にした極悪非道な屑の所業を 彼女に行おうとしているのだ。 私は確実に地獄に堕ちるだろう。 そこには妻も娘もいるはずもない。 だがひとつだけわかったことがある。 彼女を娘の代わりでも慰み者にしたいのでもない。 私は彼女を心の底から愛しているのだと。 563 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/14(金) 00 40 49.63 ID 6WvIPlp3 以上です。 翔鶴さんはおねショタ多くてすごく好きで楽しいんだけど、 たまには違うのも見たくて書いてみました。 この後翔鶴さんと初めての夜戦♪とかメイド姿でお口でご奉仕とか 瑞鶴に見られて「こんな歳の離れたお爺さんに翔鶴姉が・・・そんなっ!許せない!」って詰め寄られるとか、 翔鶴に告白した若いかっこいい青年を振って提督とイチャイチャするシーンとか もやもやしていた瑞鶴が、親と思っていた提督と姉が自分を置いてどこか遠くに行くような気がして それが戦争でかつて姉を亡くした時のように怖くて自分も一緒に連れてってと3P突入したり、 嫌々提督にご奉仕したり抱かれるうちにそれほど嫌悪感がなく、実は自分も提督が好きなことに気付いて 身も心も3人で堕ちるとこまで堕ちちゃうお話の予定でした。 綺麗な翔鶴さんと瑞鶴さんがすごい年の離れた老人に寝取られちゃう!もったいねぇ!くやしい!って言うのを書きたかった。 あれ・・・?純愛・・?ハッピーエンド・・? う・・・頭が・・・
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/274.html
『長門と朝寝』 暁の女神が紫の帳を開けた。 基地内の居住区にも、金の陽は差し込んでくる。 目を閉じていても入って来て、まどろんでいる者も現実に引き戻してしまうほどだ。 提督は、目醒めたままベッドに横たわり、今日の業務内容に思いを巡らせていた。 深海棲艦との戦いのため、資源は本部から全艦隊へ供給されている。 だが、一日や一週間ごとに本部から示される任務をこなした艦隊には、優先的に戦略資源が配給されるのだ。 目を閉じたまま、提督は眉間に皺を寄せた。 ……腹時計が間違っていないとすると、これは…… すると、親愛に満ちた囁きがすぐ横から響いた。 「おはよう、提督」 「……おはよう、長門」 提督は、渋面のまま目を開けた。そして自分の顔を楽しそうに見ているルビー色の瞳に目を向けた。 微笑を浮かべた秘書艦は、彼の枕の横に頬杖をついて彼を見下ろしている。 彼女はただの女の姿になって、提督と同じようにベッドの中に寝転んでいた。 外された艤装はベッドの横に置かれ、用済みという言葉を体現するようだ。 横目にそれを捉えつつ、提督は体を起こした。 頭を掻きながら壁の時計に目をやると、機巧は彼の予想と違わない時刻を示している。 「長門」 「何だろう、提督?」 「予定していた起床時刻を過ぎている。どういうことだ?」 「あなたの寝顔を見ていた」 長門はまったく悪びれずに答えた。 司令官の顔から視線を離さないまま、彼女は朝顔のように顔をほころばせた。 「いつもの顔も悪くないが、こちらも子供のようで可愛らしいものだな」 提督は秘書艦に懐疑的な目を向けた。 長門は相変わらず彼を見つめ返して微笑している。 「ふむ」 提督は頷くと、彼女の桜色の頬に手をやった。長門は満面の笑みのまま目を閉じた。 期待に満ちた彼女の顔に体を傾けた提督は、自然な動作で唇を重ねる。 しばらく感触を味わった後、彼が顔を離しても、長門は睫毛を伏せて余韻に浸っていた。 頬を撫でられ、長門は猫のような声で鳴いた。 普段の武人然とした姿とはまた違った様子に、提督も唇の端を曲げた。 「たしかに、朝に見るお前もかわいい」 「ふふ」 長門は目を開けると、紅玉色の瞳に咎める色をこめて提督を見上げた。 「それにしても提督、あなたはひどい人だ」 「いったい何のことだ?」 頬を撫でる手を捕らえ、長門は優しく叱るような口調で言った。 「最近は演習ばかりで、私に前線をなかなか任せてくれない。まるで陸奥ではないか。 それに、ケッコンカッコカリが実装されるというのに、私より先に北上が最高レベルへ到達しそうだ」 「ああ。あれか。でも実際どんなもんかはわからんぞ」 長門の頬を撫でまわしながら、提督は眉を吊り上げた。 「北上さんがお前より先にレベル99になりそうなのは、演習にも前線にも連れ出してるからだ。 戦艦が魚雷と甲標的を詰めれば違ってたかもな」 「むう」 「つうか、そうだ。朝の演習。朝くらいしか午前の分の演習の時間はねえんだぞ」 提督は時計へ視線を戻した。 司令部から提示される任務の中には、一日に複数回の演習を行うというものも含まれている。 この任務を完全に消化するには、午後三時、演習相手の組換えが行われるまで、演習を五回行う必要があった。 長門は唇を三日月の形に曲げた。 まだ気づかない彼に身をすり寄せる。 「それは失礼した……」 布団の中で彼に密着すると、長門は提督の二の腕を胸元に抱きしめた。 見返す彼の前で、双丘が柔らかく二の腕を包み込む。 提督が静かに目を向けると、長門は凛然たる美貌に妖花の笑みを浮かべた。 手先を布団の中に差し入れると、提督の下腹部に手を這わせる。 朝の生理現象と、長門に触れられたおかげで、提督の男の部分には血が集まり始めている。 硬度を増す提督を手中に弄びながら、長門は熱のこもった声で囁いた。 「あなたの罰を受けよう」 言いながら、長門の唇の中で、ピンク色の舌が毒虫のように蠢いた。 すでに熱をもって欲望の捌け口を探していた男根は、それを見てますます充血した。 鼻腔に、かすかに欲情した牡の臭いが入り込んでくる。 長門に握られた部分を布団の上から指さし、提督は言った。 「じゃ、こいつを何とかしてくれ。美人の秘書艦は目に毒だ」 「了解した」 布団をずらし、長門は彼の下半身を外気に晒した。 寝衣の隆起した部分の上に体を動かすと、充血して十分に勃起した男根を取り出す。 天を衝いて反り返った男根を見て微笑すると、長門は恋人に愉快そうな目を向けた。 「こちらも、可愛らしいものだ」 「お前ほどじゃない」 言いながら提督は、スカートをめくり上げ、完璧な桃のような長門の尻を撫で始めた。 下着をずらしてしまった後、決して長門の陰には触れないまま、その感触を味わう。 真っ白な肉に指を埋め、柔らかく跳ね返す弾力を楽しむ。 長門は笑声を零した。 「ふふ……ん」 目を閉じ、長門はすべすべした亀頭へ愛情を込めて口づけた。 舌を這わせ、鎌首をもたげた先端にすっかり唾液をまぶすと、脈打つ竿を口の中へ迎え入れる。 髪をかき上げて、長門は奉仕を始めた。 自分の口を犯している肉塊に舌を絡めながら、歯を当てないよう頭を上下させる。 髪にやっていない方の手は、自然に自分の胸を弄んでいた。 服の合間から差し入れて、素肌の乳房を弄ぶ。 柔らかい胸の中で、頂は熱をもって服を押し上げている。 「はは、前見てみろ、長門」 「う……?」 愉快そうな声に目を開けると、目を疑うほどの淫らな光景が長門の視界に飛び込んできた。 寝台の上に横になった提督。 髪の長い女が彼の上に四つん這いになり、彼の眼前に尻を突き上げている。 勃起した陰茎を口に咥えたまま、女は乳房をみずから揉みしだいていた。 彼女は頬を発情に上気させ、欲情に潤んだ真紅の目でこちらを見ている。 鏡台に映った自分の姿に、長門はもう赤くなっていた顔をさらに赤くした。 「あ、これは……」 「お前たちの化粧直し用だったのが、こんな役に立つのは予想外だった」 唇で淫していた男根から、長門が思わず口を離してしまうと、ざらつく舌が彼女の裂け目をなぞった。 「ひあああっ」 鏡に映った女は男の性器にすがりつくようにして崩れ落ちた。 長門の悲鳴を楽しみながら、提督は長門の陰唇を何重にも嘗めた。 逃げ出さないよう長門の尻をしっかり捕まえて、熱く潤い始めた陰に舌を差し入れる。 長門の尻に、提督と長門の涎が垂れ流れて汚した。 長門が目を上げた先では、突き上げた尻を男に舐めまわされながら、彼の股間に顔を埋めるような恰好をしている女が、涙目で悶えていた。 喘ぎ声を出しながら、彼女はあさましく尻を振り、膨れ上がった醜悪な男根へ愛しげに頬をすり寄せている。 「あ、侮るなよ、提督」 唇を引き結んで、後ろから自分を弄んでいる男に宣言すると、長門は鏡の自分を睨みながら、反り返った男根を再び口に含んだ。 舌を絡めて、先程よりも早く頭を動かす。唾液が溢れて、提督の股間を濡らした。 先走った雫の味がしたと思うと、長門の唇に挟まれた亀頭が膨れ上がり、長門の口へ提督は熱い体液を吐き出していた。 知らず、腰を無意識に期待して動かしながら、噴き出した精液を舌で受け止める。 咽喉に飛沫があたらないよう舌を操りながら、長門は自分が男の体液を口に注がれている様子を見届けていた。 長門の口は粘つく体液で満たされた。 「ん、う……」 尿道に残ったものも吸い取ると、長門は上を向いて、自分の口へ吐き出された液を飲み下していった。 一度、二度と、長門の咽喉を青臭い粘液が嚥下されていく。 鼻を衝く臭気に、長門は陶然と胸を撫でた。 その胸を守っていた服が外され、提督と長門の間に落ちる。 提督の体の上に膝を折って座る形になっていた長門が体をひねると、提督は上半身も裸になっていた。 長門の足の間では、提督が力を取り戻して長門の体を押し上げている。 「……ふふ、まだおさまりそうもないな、提督?」 長門は微笑し、男根を柔らかく包んでしごいた。 長門の方も、提督の上に乗った尻は熱く燃えて、雄を求めている。 提督は取り払った長門の服と自分の寝衣をベッドから放り投げると、長門と体勢を入れ替わるようにした。 彼は裸身の長門をベッドに押し付けた。 「もう一つ罰を与える」 「存分に罰してくれ」 長門は微笑した。 秘書艦へ自分の隆起した股を押し当て、提督は長門へと侵入した。 白く濁った涎を垂れ流し、熱い肉の襞が歓喜に満ちて男の体を受け止めた。 「結局、演習する時間がなくなっちまった……」 乱れたベッドに横たわったまま、提督が嘆息した。 彼に腕を絡みつかせた長門は、猫のように提督の首筋に鼻梁をこすりつけた。 「愛しているぞ」 「……ああ、俺も愛してるよ」 空に日は昇り、ラバウル基地を照らしている。 das Ende/koniec/конец/おわり 446 :スターリン:2014/02/10(月) 20 01 11.42 ID Dgaxzjb+ 午前中に演習できなかったのはいちゃついてたせいだと補完してます あ、この長門は提督を造物主とかお父様とか呼んでない設定で スターリンってのはエロパロ板に落とすときいつも使う名前ですが 保管庫見てみたらシリーズ名扱いされてて笑えました いえ、面白かったので是非そのままでお願いします タイトル名を赤くしていただいた同志 ありがとうございました いかにもヤンデレっぽくて僥倖でした